東洋医学研究所の黒野保三先生には、毎月1回健康しんぶんを発刊して頂いています。
その中で福田裕康先生が担当されている「シリーズ東洋医学」を紹介させて頂きます。
今回は平成24年4月1日に発刊された第11刊健康しんぶんから、「虚実について」です。
東洋で発展してきた鍼灸医学は、東洋哲学ならびに東洋の自然思想の基本的考え方である「陰陽」「虚実」「五行」という考え方が
ベースにあります。
今回はこの中で、「虚実」について考えていきます。
東洋医学研究所黒野保三所長の著書「長生き健康鍼」の中には、『虚実という理論は陰陽と同じように、「二元一元論」あるいは「二極一対論」という考え方から派生したものです。
陰陽が対極的な自然思想を表すのに対して虚実はその人の状態を表しているのです。
これを用いることによって体の状態を立体的に表現することが可能で、例えば「陰虚」「陰実」「陽虚」「陽実」と分類し、またその4つをさらに組み合わせ「陰虚陽実」「陰実陽虚」などと分類し、表現してきました。』と著されています。
この概念は現代においても否定されることなく使用され、現代の医療において有効に用いることが可能であると考えています。
検査データはその一例ですが、検査を行った結果が異常であると言われた時に、同じ異常値であっても高すぎる場合や低すぎる場合もあるのです。
このような対極にあるものに、同じ薬や同じ量の薬では異常値を是正できないため、いろいろな薬が処方されます。しかしながら、どうしても個々に完全に合わせることができない点が指摘されると共に副作用も問題の一つとなっています。
それに対して、鍼治療をしますと非常におもしろい効果がでることが知られています。例えば血圧の高い人に鍼治療をすると血圧がさがります。そして、血圧が低すぎる人に鍼治療をすると血圧があがります。
このような対極にある二つのものが、相対するだけではなく、協調して働き、体内を正常に導いていくことが、五十年に亘る東洋医学研究所の研究や症例で示されています。
これこそが鍼治療の実体験から得られた「虚実」であり、医療の中で生かされた形なのです。
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