井島鍼灸院ブログ

2012.04.25更新

生体制御療法とは、(社)生体制御学会黒野保三名誉会長が提唱されている治療方法です。

生体に鍼による物理刺激を与え、生体内に有する各種調整機構を正常にリセットをすることを目的とした健康維持・疾病予防・疾病改善・疾病から社会復帰まで幅広く応用できる治療法です。

 黒野保三名誉会長が1956年より今日に至るまで55年間たゆまぬ基礎的研究・臨床試験を続け、その研究結果をもとに応用された治療法です。

詳しくは、東洋医学研究所®ホームページの 「生体制御療法とは」 をご覧下さい。

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.24更新

東洋医学研究所®HPの中で海沼英祐先生の書かれたコラムを紹介させて頂きます。

東洋医学研究所®グループ

海沼鍼灸院 院長  海沼 英祐
先生

〇はじめに

 ストレスが多いと、病気になりやすいとはよく聞く話しです。

「寝不足が続いたから風邪をひいた。」とか「心配事があって悩んでばかりいたら、肩こりや頭痛がするようになった。」など、ストレスは体調に大きく関係します。

しかし、なぜストレスが体調に関係してくるのでしょうか?今回は、このストレスが我々の免疫システムにどのような影響を与えているのかを少しお話しさせていただきます。

〇免疫システムについて

 最初に少し免疫システムについてお話します。免疫システムの主役になるのは免疫細胞である白血球です。

白血球は、体を異物から守るために全身の血液を巡ります。この白血球にも役割分担のために、主にリンパ球・顆粒球・マクロファージの三種の免疫細胞が存在します。

割合はリンパ球が35%、顆粒球が60%、マクロファージが5%ですが、この割合は一定ではなく変動します。

 リンパ球は、抗原抗体反応(一般的に抵抗力というもの)によって抗体をつくり、病原体の抗原をやっつける働きをします。リンパ球は、副交感神経が活発になると割合が増えます。

 顆粒球は、体内に細菌などの異物が入り込むといきなり食べる貪食能をもっています。

異物を食べた顆粒球は、すぐに死んでしまいます。その死骸が傷口にでる膿です。また顆粒球が死ぬと活性酸素という毒をまきちらします。顆粒球は、交感神経が活発になると、その割合が増えます。

 マクロファージは、リンパ球と顆粒球の司令塔のような役目をはたしている細胞です。

〇ストレスってなに?

 ストレスは日常で頻繁に使われる言葉です。医学辞典などでみてみると、今日では「生体に有害な影響を及ぼす要因」は、すべてストレスと総称されています。

つまり心と体にとってプラスでないこと、喜ばしくないことです。

例えば無理をしすぎたり、疲れがたまったままだったり、寝不足が続いていたり、悩みや心配事を長く抱えていたり、ときには強いプレッシャーのなかで我慢を強いられていたり。

このようなことがしばらく続くか、あまりにもその程度が強く自分の許容範囲を超えたときに、それがその人のストレスになります。

〇ストレスを受けるとどうなるのか?

 ストレスを受けると、真っ先に反応するのが自律神経です。

自律神経は、神経系の末梢神経の一種で、体にある60兆もの細胞の働きを調整するために全身に分布する、自分の意思では決してコントロールできないタイプの神経です。

今このときも自分の心臓が鼓動し続けるのも、数時間前に食べた食事の消化や吸収を続けるのも、運動をすると自然に汗ばんでくるのも、すべてこの自律神経の働きによるものです。

この自律神経は、活動するときに働いて興奮の体調をつくる交感神経と、休むときに働いてリラックスの体調をつくる副交感神経の二種類の神経からなっています。

この自律神経は、消化、吸収、体温調節、排泄、生殖といった日常的な行為を行うために必要な諸々の機能を、交感神経・副交感神経のバランスを保ちながら、しかも就寝中でさえも片時も休まずコントロールし続けています。

 疲労が蓄積したりして生体がストレスを受けると、消化や呼吸・体温調節といった自律神経が関わるさまざまな全身障害、つまり体調不良が次々と誘発されます。

不眠が続いたり、睡眠をとっても疲れが抜けない、肩こりがひどかったり頭痛がする、体が重く感じるなどの体調不良は自律神経のバランスが崩れたために起こる症状なのです。

〇ストレスが免疫システムに与える影響は?

 先に話したように、ストレスを受けると最初に自律神経が反応します。

自律神経のバランスが、交感神経が優位な状態に大きく傾きます。この状態が交感神経の緊張であり、交感神経の緊張が続くと精神的にはイライラしやすくなり、肉体的には動悸がして、血圧の上昇や食欲の低下などが現れます。

交感神経の緊張がさらに長期にわたると、免疫システムにも影響がおきます。

免疫細胞である白血球の中で顆粒球の割合が増加し、リンパ球の割合が減少します。その結果、顆粒球の貪食能によって粘膜や組織に炎症性の障害を起こしやすくなり、体調不良から病気を発症しやすくなります。

こうしてストレスが多いと病気になりやすい状態になるわけです。

〇おわりに

 今回は、ストレスと免疫システムについて、お話しさせていただきました。

ストレスが一切なく、つらいことや悩みのない毎日を送れば健康を保てそうですが、そうはいきません。

どのように生きても、ストレスを完全に排除することはできません。

しかし、バランスの崩れた自律神経を正常な状態に戻そうとする方法はいくつかあります。

鍼灸治療は、その代表的な治療のひとつです。

 東洋医学研究所®グループでは、黒野保三先生が長年にわたり研究された自律神経に働きかけて身体を健康な状態に戻す鍼治療を行っています。

ぜひ東洋医学研究所®グループの鍼治療を活用していただいて、より健康的な日常を送っていただきたいものです。

参考文献:

・東洋医学研究所® 研究室「未病治に対する鍼治療」より
鍼刺激の人体免疫系に及ぼす影響(その1) 黒野保三 他
針刺激の生体免疫系に及ぼす影響(その2) 黒野保三 他
針刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅲ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅳ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅴ) 黒野保三 他
鍼刺激のヒト免疫反応系に与える影響(Ⅵ)
                   β-endorphinと細胞性免疫系能の検討  黒野保三 他
・未来免疫学 安保徹 (インターメディカル)
・病気にならない人の免疫の新常識 安保徹 (永岡書店)
・免疫学の威力 安保徹 (悠飛社)

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.23更新

今回は泌尿器疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂きました。

 前回は、循環器疾患の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ること(穴名考)により紹介させて頂きました。

 今回は、排尿困難、膀胱炎、尿道炎、尿閉、尿意頻数などの泌尿器疾患によく使用される経穴として、中極穴、横骨穴、腰陽関穴、気海穴、水道穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。

中極穴(特に膀胱疾患に使用されます。)

位 置 曲骨穴の上1寸、臍下4寸、白線中に取る。

穴名考 中は、なか、真中、心。極は、棟、棟木。
したがって中極は、中は一致するの意味、極は最上。最上に一致する。また中極は「北極星」のことで、北の極点にあり、方位で北、五行で水、五腑で膀胱に属し、膀胱を表す。

膀胱のあるところ、膀胱の最上部に一致するところにある穴の意である。

主治症 膀胱疾患を主る。尿閉、血尿、尿意頻度、陰委、陰茎痛、尿道炎、子宮出血、月経不順、不妊症、腎疾患、腹水、腰痛。




横骨穴(経穴の位置からその名前がつきました。)

位 置 曲骨穴の外5分、恥骨の上際、陰毛際にとる。

穴名考 横は、よこ、よこ木、横手。骨は、ほね=動物の支柱をなす堅固な物質、堅い、鋭い。
したがって横骨は、横はよこ、骨はほね。横の骨、いわゆる、横骨=恥骨のことである。恥骨の上縁にある穴の意である。

主治症 膀胱炎、膀胱麻痺、尿閉、陰嚢収縮など泌尿生殖器疾患、腸疝痛、腹直筋痙攣、下腹痛、腎石疝痛、腎炎、尿道炎。 




腰陽関穴(掲載回数の一番多かった経穴です。)

位 置 腰部、第4・第5腰椎棘突起間に取る。

穴名考 陽は天の気、太陽、陽に当たるところ、背部。関は閉ざす、貫く、境界。
したがって、陽関は、陽は背部、関は境界=関節。いわゆる、陽の部=脊柱の一番大きく動く、大関節の部にある穴の意である。

主治症 腰痛を主る。坐骨神経痛、リウマチ、下痢、便秘、下腹冷感、遺尿、尿意頻数、膀胱炎、膀胱麻痺、前立腺炎、月経不順、子宮出血など。 




気海穴(黒野式全身調整基本穴に含まれています。)

位 置 臍の下1寸5分、曲骨穴の上3寸5分、白線中に取る。

穴名考 気は雲気、天地人の間に流動する無形の活力。海は天の池、大きい、広い、地のはて。 したがって気海は、身体の根元となる活動力の多く集るところの穴の意である。

主治症 膀胱炎、遺尿、尿閉、夜尿症、尿道炎、子宮疾患、月経不順、下痢、便秘、消化不良、下腹冷感、内蔵の慢性病よりくる衰弱など。



水道穴(経穴名に意味のある経穴です。)

位 置 下腹部、天枢穴の下3寸、気衝穴の上2寸、関元穴の外2寸、腹直筋上に取る。

穴名考 水はみず、水分、汁。道は、みち、通り道。したがって水道は、腎臓より膀胱までの尿の通り道=輸尿管の部にある穴の意である。

主治症 泌尿器疾患を主る。腎臓炎、膀胱炎、腎石疝痛、尿閉、頻尿、睾丸炎、子宮および膣疾患、月経痛、不妊症、下腹冷感症、虫垂炎、黄疸、便秘、下痢。 



経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、泌尿器疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。

文 献 

 黒野保三.鍼灸医学概論〈改訂増補〉.エフエー出版.1996.
 黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
 竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
 日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.




投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.22更新

今回は循環器疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂きました。

 前回のコラムでは、消化器疾患の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ること(穴名考)により紹介させて頂きました。

 今回は、狭心症、低血圧、高血圧、心悸亢進、貧血などの循環器疾患によく使用される経穴として、ダン中穴、百会穴、足三里穴、天柱穴、内関穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。 


循環器疾患に使用される経穴はたくさん有りますが、その中からどうして、ダン中穴、百会穴、足三里穴、天柱穴、内関穴を選んだのかを説明させて頂きます。

 病気の治療に使用する経穴を選ぶ根拠に、古典文献があります。いつも黒野先生から教えて頂いているように、古典文献の内容ががすべて正しいわけではないので、実証医学的な証明が必要です。

そこで、黒野先生の発案により、各病気に対してよく効くといわれている経穴のうちから古典文献や穴名考などを根拠に数穴優先順位をつける作業をさせて頂きました。

 方法は、中国や日本の代表的な鍼灸に関する古典文献50冊あまりを調査・分析して著された「鍼灸医学ー経絡経穴の近代的研究ー」(竹之内診佐夫・濱添圀弘著)に掲載されているすべての主治症と経穴との関係をコンピューター(エクセル使用)に入力し、主治症別(590疾患・症状)、科目別(21科目)、経穴別(357穴 のべ経穴数4715穴)に抽出・集計できるようにしました。

 その結果から、循環器疾患について抽出すると、主治症が19疾患あり、経穴が166穴掲載されていました。

その中で多く使用されている経穴は、百会穴6回、天柱穴6回、足三里穴5回、身柱穴5回、人迎穴5回、ゲキ門穴4回、厥陰兪穴4回、内関穴4回、膈兪穴4回、肩井穴4回、湧泉穴4回、神門穴4回、天井穴4回でした。

 また、ダン中穴は穴名考から心包にあたる経穴とされ、心疾患に用いられるため重要と考えられました。

 そこでさらに、回数の多い経穴を1穴づつ細かく検証したうえで、古典文献からの循環器疾患の代表穴としてダン中穴、百会穴、足三里穴、天柱穴、身中穴、内関穴、ゲキ門穴、神門穴などがありました。

その中で今回は、ダン中穴、百会穴、足三里穴、天柱穴、内関穴について紹介させて頂きます。


穴名に使われる漢字に意味があるダン中穴を紹介させて頂きます。

位 置  両乳の間の中央、第4肋間の中央胸骨中に取る。
 
穴名考  ダンは月(にくづき)と亶の合字で、亶は亠は屋根、回は周囲のかこい、日は太陽、一は地、太陽が地平線上に現れる=赤い太陽で、心を表す。心の周囲を囲み、上を屋根でおおう、心の周囲をおおう=心包絡、いわゆるダンは心包のことである。中は一致する。したがって心包のある所に一致する穴の意である。心包経の募穴の意である。

主治症  精神神経症をつかさどる。心疾患、肺疾患、食道痙攣、乳腺炎、乳汁不足、胸膜炎、肋間神経痛、気の変動に応用する。





循環器疾患にもよく使われる百会穴を紹介させて頂きます。

位 置  頭頂部、 両耳を前に折り、耳尖の当たるところより直登し、督脈に交わるところに取る。 

穴名考  百は、10の10倍、衆多。会は、合う、集まる。したがって、百会は、衆多の脈が集まるところ。 また、この部は頭の中央であり、脳=髄海のあるところ、脳に気血の出入りするところの穴の意である。

主治症  高血圧、脳溢血、脳充血、脳貧血、頭痛など脳疾患。ノイローゼ、不眠症など精神神経症。心悸亢進、心肥大など心疾患。
その他、五臓六腑の調整など、いわゆる「百病皆治す」というように、応用範囲の広い穴である。




 


掲載回数の多かった足三里穴を紹介させて頂きます。

位 置  脛骨粗面の外下方、脛骨体の上部で、外側顆に移行する部の骨の陥凹部より、外側に前脛骨筋を一筋隔てたところで、前脛骨筋と長指伸筋の間に取る。
 
穴名考  三は、数字の三、交わる、組合せる、参る。里は、村、さと、街、道のり。
したがって、気血の多く集まるところの意で、反応の強い穴・重要な穴を表す。足関節から下巨虚(小腸の合)、上巨虚(大腸の合)、足三里(胃の合)と、三番目の重要な穴の意である。

主治症  諸臓の慢性病および消化器疾患を主る。半身不随、中風、衂血、脳充血、高血圧、貧血、産後の血暈その他万病を治すという。





経穴の位置からその名前がついた天柱穴を紹介させて頂きます。

位 置  後頭髪際中央陥凹部に?門穴を取り、その外一寸三分に取る。

穴名考  天は、大空、上、高い。柱ははしら、支える、幹。したがって天柱は天部=頭部を支える柱の付け根にある穴の意である。

主治症 脳充血、脳貧血、高血圧、不眠症、その他脳疾患。狭心症、心悸亢進症、特に衂血止まらず、鼻閉塞に特効がある。







経穴の位置からその名前がついた内関穴を紹介させて頂きます。

位 置  腕関節前面中央の橈側、橈側手根屈筋腱と、長掌筋腱の間に大陵穴を取り、その上二寸に取る。

穴名考  内はうち、内側、裏。関はかんぬき、閉ざす、貫く。したがって、内関は内は内側、関は閉ざす。橈骨と尺骨の骨間で、両骨相接して、骨間が閉ざされている部の内側(前面)にあるものを内関という。

主治症  心臓病をつかさどる、脳充血、高血圧、貧血、精神神経症、便秘、痔疾など





 

経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、循環器疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。

 次回の私のコラム担当のときは、泌尿器疾患に使用される経穴を紹介させて頂きたいと考えております。是非、楽しみにしてください。

※「高血圧に対する足三里穴刺鍼の有効性について -封筒法による臨床比較試験-」全日本鍼灸会雑誌50巻2号.185-189.2000.


文 献 

黒野保三.鍼灸医学概論〈改訂増補〉.エフエー出版.1996.
黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.21更新

今回は消化器疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

  東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂きました。

前回には、精神科疾患の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ること(穴名考)により紹介させて頂きました。

 今回は、胃炎、胃潰瘍、消化不良、食欲不振、下痢、便秘などの消化器疾患によく使用される経穴として、中カン(ちゅうかん)穴、期門(きもん)穴、足三里(あしさんり)穴、腹哀(ふくあい)穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。

意味から名前のつけられた、中カン穴は最も多く使用されます。

位 置  臍上四寸、岐骨の下四寸、臍と岐骨の中央、白線中に取る。

穴名考  中は、真中、心、中心、臓腑、正しい、等しい、平らか、成る、穿つ、仲立、当る、一致する。カンは、胃、肉、骨脂、カン(胃袋)。 したがって中カンは、中は真中、カンは胃、胃の真中に当る穴の意である。

主治症  胃疾患を主る。嚥下困難、嘔吐、食欲不振、消化不良、黄疸、肝胆疾患、心悸亢進、ノイローゼ、自律神経失調症、腹痛。



  


期門穴は十二経の一番最後にある穴の意味で名前がつけられました。

位 置  巨闕穴の外三寸五分、第六肋間内側端に取る。

穴名考 期は、会う、一昼夜、季、百年、一周り。門は、出入口、家、一族、生まれ出ずる所、万物の経由する要所。 したがって、肺経より十二経を一周りして、最後の肝経の一番最後、十二経の一番最後にある穴で肝経の募穴の意である。

主治症 肝疾患を主る。胃酸過多症、胃弱、便秘、下痢、腸疝痛、喘息、気管支炎、心悸亢進、狭心症、胸膜炎、肋間神経痛、腹直筋痙攣、糖尿病、子宮内膜症,月経不順,解熱、神経衰弱,ノイローゼ。 




足三里は消化器疾患には重要な経穴です。

位 置 脛骨粗面の外下方、脛骨体の上部で、外側顆に移行する部の骨の陥凹部より、外側に前脛骨筋を一筋隔てたところで、前脛骨筋と長指伸筋の間に取る。

穴名考 三は、数字の三、交わる、組合せる、参る。里は、村、さと、街、、道のり。したがって、気血の多く集まるところの意で、反応の強い穴・重要な穴を表す。足関節から下巨虚(小腸の合)、上巨虚(大腸の合)、足三里(胃の合)と、三番目の重要な穴の意である。

主治症 諸臓の慢性病および消化器疾患を主る。とくに脾胃の疾患、遺尿、婦人科疾患、腰痛、坐骨神経痛、脚気、半身不随、中風、脳充血、高血圧、貧血、その他万病を治すという。養生灸として広く応用されている。






最後に穴名に使われる漢字に意味のある腹哀を紹介させて頂きます。

位 置 大横穴の上三寸五分、日月穴の下一寸五分、建里穴と中カン穴の間の外三寸五分、腹直筋の外縁に取る。

穴名考 腹は、はら、臍の上下左右、内臓を包むところ、中、抱く。哀は、あわれむ、痛、傷、悲しむ、喪、愛。したがって腹哀は、腹部の臓腑の機能減退症状の主治穴の意である。また、哀は痛・傷で、腹痛および腹部傷害の主治穴の意である。

主治症 胃下垂、胃弱、慢性胃炎、腹痛、食欲不振、下痢、腸出血、便秘、顔面浮腫。 




経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、消化器疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。

文 献 

 黒野保三.鍼灸医学概論〈改訂増補〉.エフエー出版.1996.
 黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
 竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
 日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.20更新

今回は精神科疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂きました。

 前回のコラムでは、婦人科疾患の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ること(穴名考)により紹介させて頂きました。

 今回は、神経症、心身症、うつ病、自律神経失調症などの精神科疾患によく使用される経穴として、百会(ひゃくえ)穴、風池(ふうち)穴、厥陰兪(けついんゆ)穴、さらに特に気の変動の治療に使用されるダン中(だんちゅう)穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。 

意味から名前のつけられた、百会穴は最も多く使用されます。

位 置 頭頂部、 両耳を前に折り、耳尖の当たるところより直登し、督脈に交わるところに取る。

穴名考 百は、10の10倍、衆多。会は、合う、集まる。したがって、百会は、衆多の脈が集まるところ。 また、この部は頭の中央であり、脳=髄海のあるところ、脳に気血の出入りするところの穴の意である。

主治症 高血圧、脳溢血、頭痛、眩暈、耳鳴り、半身不随などその他脳疾患。癲癇、神経衰弱、ノイローゼ、不眠症など精神神経症。メニエール病、難聴、蓄膿症、視力減退、鞭打症、腰痛、、痔疾、心悸亢進、自律神経失調症など。

 その他、五臓六腑の調整など、いわゆる「百病皆治す」というように、応用範囲の広い穴である。

           



風池穴は経穴の場所から名前がつけられました。

位 置 後頭髪際中央陥凹中にア門穴を取り、その外2寸2分半、後頭髪際で通常頭眼といわれる陥凹中に取る。
 
穴名考 風は風病(風邪、中風、狂疾、おこり)。池は、地を掘って水を溜めたところ。したがって、風池は、風は風病、池は水の溜まる陥凹部、いわゆる、風病の邪気の溜まる陥凹部の穴、風病の主治穴の意である。

主治症 風病をつかさどる。熱病一切、頭痛、高血圧、眩暈、ヒステリー、ノイローゼ、その他脳疾患。メニエール病、耳鳴り、視力欠乏、蓄膿症、歯痛、三叉神経痛、半身不随、寝違い、ムチウチ症、頚肩腕症候群、肩背部疼痛、不眠症、自律神経失調症、心悸亢進など。

           


厥陰兪穴は意味から名前のつけられた経穴です。

位 置 第4、第5胸椎棘突起間の外1寸5分、最長筋の通りに取る。

穴名考 厥陰は、手足の三陰の中の一つ、厥陰心包経の厥陰。兪は、治癒。したがって厥陰兪は、心包の臓および心包経の主治穴の意である。

主治症 心外膜炎、心肥大、心悸亢進、狭心症、心臓神経症、不眠症、ノイローゼ、神経衰弱、その他精神神経症。胸膜炎、肋間神経痛、乳腺炎、乳房炎、乳汁不足、その他乳病一切。嘔吐。



            


最後に穴名に使われる漢字に意味のあるダン中穴を紹介させて頂きます。

位 置 両乳の間の中央、第4肋間の中央胸骨中に取る。

穴名考 ダンは月(にくづき)と亶の合字で、亶は亠は屋根、回は周囲のかこい、日は太陽、一は地、太陽が地平線上に現れる=赤い太陽で、心を表す。心の周囲を囲み、上を屋根でおおう、心の周囲をおおう=心包絡、いわゆるダンは心包のことである。中は一致する。したがって心包のある所に一致する穴の意である。心包経の募穴の意である。

主治症 精神神経症をつかさどる。心疾患、肺疾患、食道痙攣、乳腺炎、乳汁不足、胸膜炎、肋間神経痛、気の変動に応用する。


             


経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、精神科疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

  鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。

 
文 献 
  黒野保三.鍼灸医学概論〈改定増補〉.エフエー出版.1996.
  黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
  竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
  日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.19更新

今回は婦人科疾患に使用される経穴について紹介させて頂きます。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂いています。

 前回のコラムでは、風邪の時に使用される経穴について、その名前がどのような理由でつけられたか、漢字のなりたちから読み取ることにより(穴名考)紹介させて頂きました。

 今回は、月経困難症、不妊症、更年期障害などの婦人科疾患によく使用される経穴として、三陰交(さんいんこう)穴、血海(けっかい)穴、中極(ちゅうきょく)穴、さらに特に逆子の治療に使用される至陰(しいん)穴について、文献を参考に紹介させて頂きたいと思います。 


婦人科疾患に使用される経穴はたくさん有りますが、その中からどうして、三陰交穴、血海穴、中極穴を選んだのかを説明させて頂きます。

 病気の治療に使用する経穴を選ぶ根拠に、古典文献があります。いつも黒野先生から教えて頂いているように、古典文献の内容ががすべて正しいわけではないので、実証医学的な証明が必要です。

 そこで、黒野先生の発案により、約7年前から、各病気に対してよく効くといわれている経穴のうちから古典文献や穴名考などを根拠に数穴優先順位をつける作業をさせてもらうことにしました。

 方法は、中国や日本の代表的な鍼灸に関する古典文献50冊あまりを調査・分析して著された「鍼灸医学ー経絡経穴の近代的研究ー」(濱添圀弘著)に掲載されているすべての主治症と経穴との関係をコンピューター(エクセル使用)入力し、主治症別(590疾患・症状)、科目別(21科目)、経穴別(357穴 のべ経穴数4715穴)に抽出・集計できるようにしました。

 その結果から、婦人科疾患について抽出すると、主治症が49疾患あり、経穴が125穴掲載されていました。その中で多く使用されている経穴は、三陰交9回、血海8回、中極7回、陰包6回、腰陽関5回、水泉5回、水道5回、四満5回、命門5回でした。

 さらに、回数の多い経穴を1穴づつ細かく検証したうえで、古典文献からの婦人科疾患の代表穴として三陰交穴、血海穴、中極穴の3穴を選びました。

意味から名前のつけられた、三陰交穴は最も多く使用されます。

位 置  内果の上三寸、脛骨後縁で、圧迫すると、骨が少し陥んだように感じるところに取る。

穴名考 三は数の三、陰は宇宙の二大元気の一つ、交は交わる。三陰は太陰、少陰、厥陰で、足の三つの陰経=太陰脾経・少陰腎経・厥陰肝経で、三つの陰経が交わるところ、交会穴の意 である。

主治症 婦人科疾患および、生殖器疾患を主る。月経不順、子宮出血、胎動、横産、遺尿、陰萎。食欲不振、消化不良、胃酸過多、腎疾患、下肢内側疼痛。


           


血海穴は血の道=婦人科疾患の主治穴として使用されます。

位 置 膝蓋骨内上角の直上二寸五分の大腿骨内縁で、陥凹部と感じるところに取る。 

穴名考 血は、先天の元気、海は、多くあつまところ、先天の元気の多くあつまるところ、いわゆる、気血の血が多くあつまるところ、陰の気の多くあつまるところの穴の意である。また、血の道=婦人科疾患の主治穴の意である。

主治症 血病および婦人科疾患・生殖器疾患を主る。子宮出血、子宮充血、帯下、月経異常、血尿、淋疾、睾丸炎、膣炎、悪穴、不妊症、その他三陰交穴と合わせて用いる。


           


中極穴は意味から名前のつけられた経穴です。

位 置 臍(へそ)の下四寸、白線中に取る。

穴名考 中極は膀胱を表す意と、中は一致する、極は最上部、最上部に一致するという、二つの意の重なったもので、膀胱の最上部に一致する穴の意である。

主治症 膀胱疾患を主る。尿閉、血尿、尿意頻数、陰萎、陰茎痛、尿道炎、淋疾、子宮出血、子宮痙攣、卵巣炎、膣炎、月経不順、不妊症、産後胞衣下らず、腎疾患、腹水、腰痛。


            

最後に逆子の治療に使用される至陰穴を紹介させて頂きます。

位 置 足の小指の爪の外側1分にとる。

穴名考 至は行く、陰は少陰の陰で腎経を表す、陰に行く、いわゆる、膀胱経の経気が、末端である本穴・至陰穴より、足底の少陰腎経に行く・至るところの部にある穴の意である。

また、陰は地で、地に着くところ=陰の部、いわゆる、足底に至るところの穴の意か。

主治症 風邪、解熱、結膜炎、鼻閉塞、耳鳴、頭痛、脳充血、高血圧、半身不随、腰痛、坐骨神経痛、脚痛、膀胱炎、尿閉、遺精、逆子



経穴名の由来を知って鍼灸診療に役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで鍼灸診療の役に立つことを、婦人科疾患の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

  鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。

 次回の私のコラム担当のときは、精神神経症状に使用される経穴を紹介させて頂きたいと考えております。是非、楽しみにしてください。

 文 献 

  黒野保三.鍼灸医学概論〈改定増補〉.エフエー出版.1996.
  黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
  竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
  日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.18更新

経穴(けいけつ)の名前には重要な意味があります。

 東洋医学的な治療に経穴は切っても切れないものです。私は黒野保三先生のご指導のもと、経穴について文献から調べさせて頂いています。

 そもそも経穴の始まりは、身体の調子の悪いときに、身体のある部分を刺激すると楽になるという経験が広まってできたと考えられます。

現代のように医療が進んでいませんでしたので、病気を治したいというこのような試みはより真剣なものだったことが想像できます。

身体のいろいろな場所にそういう部分があることがわかると、それらを区別するために、位置や効果などさまざまな理由から名前がつけられたと思われます。

その名前が後々も一般に認められ伝えられるにはそれなりの説得力が必要だったと考えられます。

 そこで今回は、経穴の名前がどのような理由でつけられたかを漢字のなりたちから読み取ることにより(穴名考)、鍼灸治療の現場でも、それぞれの健康管理にもたいへん役に立ちますので、文献を参考にできるだけ実践的で興味のもてる経穴を紹介させて頂きたいと思います。
 
意味から名前のつけられた「迎香(げいこう)」は鼻づまりの治療に使われます。

位 置  小鼻のきわにあり、鼻唇溝中です。

穴名考 迎はむかえる、香はにおい。においを迎え入 れる。鼻を天門といい天の気を取り入れる門 戸、鼻孔の外方にある穴の意   味です。

主治症 鼻疾患をつかさどる。上歯痛、三叉神経痛、 顔面神経麻痺、脳貧血、 鼻づまりで呼吸が苦しいときに刺激しますと、 鼻のとおりがよくなり楽になります。


ここで、経穴名のまめ知識です。

経穴名が最初に登場する書物は中国の「黄帝内経(こうていだいきょう)」です。

 日本経穴委員会は経穴の名前や部位などについて、1984年にWHOで決定した361穴を「標準経穴学」として発表しています。

経穴の数については諸説ありますので、ここではこの361穴について話を進めさせて頂きます。

 それらが最初に登場する古典文献は中国の殷の時代に表されたと推察されます「黄帝内経」の「素問(そもん)」と「霊枢(れいすう)」で、その数は138穴です。

 さらに、3世紀後半に中国晋代の皇甫謐(こうほひつ)が著した「鍼灸甲乙経」にはじめて記載された経穴は209穴であり、この時点でほとんどの経穴が登場しています。

この文献には経穴の部位も明らかにされていますので、経穴学の基礎を集大成したものとして高く評価されています。

 そして、北宋の初期に王懐隠(おうかいいん)などが編集した「太平聖恵方(たいへいせいけいほう)」に新しく5穴が登場し、現行の361穴がすべて出そろいました。


位置から名前のつけられた「尺沢(しゃくたく)」は咳止めに使われます。

位 置 肘窩横紋上にあり、上腕ニ頭筋腱の小指側のくぼみです。

穴名考 尺は尸(人)と乙(曲げた肘の象形)の合字で、人の前腕部をさします。 沢は水をたたえたところでくぼみをさします。 したがって、尺沢は前腕部の長さの基準となる肘窩のくぼみにある穴の意味です。

主治症 呼吸器疾患をつかさどる。特に咳。扁桃炎、ヒステリー、ノイローゼ、五十肩、正中神経痛や痙攣、書痙、などです。




もうひとつ咳止めに使われる「天突(てんとつ)」を紹介します。

位 置 胸骨の上のくぼみです。

穴名考 天は上で鎖骨より上を天の部という。突は急に出 る。胸部より気管が、頚部に急にでてきているとこ ろ。胸骨柄の上部の気管の前にある穴の意味です。

主治症 咳止め・痰の症状一切に応用します。気管支炎、喘息、呼吸器疾患、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、バセドウ病、嘔吐、食道痙攣、心疾患などです。
     


効果から名前のつけられた「風門(ふうもん)」は風邪の治療に使われます。

位 置 第2 ・第3胸椎棘突起間の高さの外方で最長筋の通りです。

穴名考 風は風病=風邪、門は出入り口。風邪の出入り口。風邪の主治穴の意味です。

主治症 風邪をつかさどる。熱病、気管支および 肺疾患、胸膜炎、肋間神経痛、頚肩腕 症候群、五十肩

 
経穴名の由来を知って、じょうずに役立てましょう。

 今回は、経穴名の由来を知ることで健康管理や治療の役に立つことを、風邪症状の場合を例にあげて紹介させて頂きました。

 鍼灸治療をさせて頂く場合でも、経穴名のもつ意味を正しく理解し、さらに、位置・形・深さを知り、豊富な知識に基づいて、適度な刺激を加えることは効果をあげるために非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所グループの先生方は、黒野保三先生のご指導のもと学・術・道の練磨につとめております。安心して鍼治療を受けてください。


 文 献 

  黒野保三.鍼灸医学概論〈改定増補〉.エフエー出版.1996.
  黒野保三.臨床鍼灸医学.エフエー出版.2001.
  竹之内診佐夫.濱添圀弘.鍼灸医学.南山堂.1977.
  日本経穴委員会.標準経穴学.医歯薬出版株式会社.1989.

 


 

投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.17更新

 東洋医学的な治療に、経穴は切っても切れないものです。現在、私は黒野保三先生の指導のもと、その経穴について文献から調べさせて頂いています。

 今回は、合谷穴について、黒野保三先生の著書(臨床鍼灸医学)より、その位置や形状、深さについて、濱添圀弘先生の著書(鍼灸医学)を参考に主治症、経穴名の由来などについての紹介をさせて頂きたいと思います。

位置

 合谷穴は、親指と人差し指を開き、両指の骨の付け根に反対の手の人差し指を置き、約20gの圧力で約1cm上下左右に移動させると、その中に陥凹部が認められる。その陥凹部の中央に取る。

 
合谷の位置の模式図


 
 経穴の位置を正確にとらえるためには、正しい方法を学び、常に意識をもって練習することを何年も続けなければならないと考えます。私は、現在も東洋医学研究財団臨床鍼灸医学研究会の臨床鍼灸実技の時間に、教えて頂いています。

形状

 経穴の形状は、それぞれの経穴が、皆それぞれの形を作っていて一定ではない。

また人の体格や病態によっても変化がある。しかし、経穴はその経穴なりの形状を持っているもので、術者は治療時に、患者の経穴の形状を感覚的ではあるが、的確に把握しているものと考えている。

 合谷穴の形状は、下の図に示すように、一辺が1~1.3cmの三角形状と捉えている。

 

合谷の形状の模式図



深さ

 経穴の深さは、人の体格や年齢および病態によっても変化がある。

したがって、経穴の深さを一定に定義付けることには異論が生じるものと考えるが、いちおう合谷穴の深さについてのべる。合谷穴の深さは、30mm18号のステンレス鍼で約20gの圧力で刺入した際、筋膜の抵抗により止まるところで、約5~7mmと推定している。

 約5~7mmの深さに鍼を刺入した際、鍼尖にわずかに弾力性に富んだ抵抗を感じる。

その深さを過ぎると、その弾力的抵抗はなくなる。したがって、経穴の深さは、刺入時に弾力的抵抗を感じるところと定めている。

 黒野らが、1975年、「人体皮膚知覚に及ぼす鍼麻酔の影響」と題して、日本生理学会に報告した研究の予備実験で、合谷穴の位置・深さを定め、いつでも鍼刺激が同じように与えられる下の図のようなセットを作成した。

 また、合谷穴に同じ角度で刺入できるように鍼のガイドを作成した。鍼はステンレス鍼を用いて、自動車の塗料でコーティングをし、鍼の尖端の塗料を電気スパークさせ、取り除いた。

このセットで、合谷穴に刺入し、5Hz2V5分間の通電刺激における1mmの刺入時から12mmの刺入時までを調べた。

その結果は、下のグラフに示す如く、ここでの条件下では、腹部での痛覚閾値の上昇度は5~7mmの深さでもっとも高いことが示された。

 
   合谷穴に同じ角度で刺入できる
ように作成した実験セット


       
ヒト合谷穴通電刺激時における
腹部での痛覚閾値の上昇度


 
黒野先生から、鍼の先の感覚で経穴の深さを正確にとらえ、適当な刺激をあたえる技術の重要性を教えて頂きました。黒野先生の鍼治療を、是非、動画でご覧下さい。

主治症

 (合谷穴は次のような疾患・症状の治療に使われます。)
咽喉炎 悪寒 風邪 眼充血 顔面浮腫 月経不順 下痢 肩背部疼痛 高血圧 三叉神経痛 鼻血 歯痛 耳鳴 視力欠乏 頭痛 橈骨神経痛 発熱 腹痛 扁桃炎 面疔 

 東洋医学研究所®グループでは、このような経穴の効果を科学的に証明する努力がなされています。詳しくは研究業績をご覧下さい。

経穴名の由来

 は、三人の意見が集まり合意すること、あう、あわせる、同じ、交わる、あつまる、とじるなどの意。

 は、泉より湧きでて山と山との間を通って川に入るまで、山あいの水の通過するところ、山あいのくぼみなどの意。

 したがって合谷は山あいのくぼみのとじるところ、第1・第2中手骨の間のとじる部すなわち上際にある穴の意。また、合は交わる、谷は山あいのくぼみ、第1・第2中手骨の交わるところ=接合部の間の陥凹部にある穴の意。

 今回は、合谷穴の説明の一部をさせて頂きました。経穴の位置・形状・深さを正しく把握し、豊富な知識に基づいて、適度な鍼刺激を与えることは治療効果をあげる上で非常に大切なことだと考えます。

 そこで東洋医学研究所®グループの先生方は、黒野保三先生の指導のもと学・術・道の練磨につとめております。


投稿者: 井島鍼灸院

2012.04.16更新

前回、前々回とストレスとうまく付き合っていく方法や、鍼治療のはたす役割について説明させて頂きました。

日頃、いろいろな患者さんを診させて頂いて感じることは、どんな疾患であってもかなりの割合でストレスが影響しているということです。

一見関係なさそうな疾患でも、よくよく話を聞かせて頂くと、会社の人間関係や、家庭のトラブル、急な環境の変化(結婚・就職・退職など)が影響していると考えられるケースが多くあります。

 今回は、ストレスが原因で自律神経などに変調をきたし起こっていると考えられる疾患を紹介させて頂きたいと思います。

全身症状 だるい、疲れやすい、微熱、めまい、ふわふわ感、ほてり、食欲不振、不眠、
       朝起きるのがつらいなど。
精神症状 不安感、イライラ、気がめいる、さびしい、悲しい、怒りっぽい、細かいことが  気になる、記憶力の低下など。

各臓器・器官に現れる症状
 

 頭   頭痛、頭重

    目の疲れ、目の痛み、涙目、目が開かない

 耳   耳鳴り、耳がつまった感じ

    口の渇き、味覚異常、口の中の痛み・違和感

 のど   異物感、圧迫感、つまった感じ、イガイガ・ムズムズ感

 呼吸器   息が苦しい・つまる・吸いにくい、息切れ

 循環器   動悸、胸部の圧迫感、胸痛、立ちくらみ、めまい、気が遠くなる、血圧の変動、
       のぼせ、冷え

 消化器   吐気、嘔吐、食道のつまった感じ、胃の不快感、腹痛、腹鳴、便秘、下痢

 膀胱   頻尿、尿が出にくい、残尿感

 筋肉・関節   首筋・肩のこりや痛み、背中・腰の緊張感、関節のだるさ

 手・腕   しびれ、痛み、感覚異常、冷え、ほてり

  足     しびれ、痛み、冷え、ほてり

 皮膚   多汗、汗が出にくい、冷や汗、皮膚の乾燥、かゆみ

 自律神経の症状は、生まれつきその人の弱い部分に現れやすいのが特徴になっています。

症状が固定する場合もありますが、長い経過のうちに症状が移り変わることがよくあります。

またいくつかの症状をあわせもっていることも多く、症状が強くなったり弱くなったり、ときによって波があるのも特徴です。ただ、慢性化してくれば全身症状や精神症状も現れてくるのが普通です。

 ところが、病院で検査を受けても特に原因となるような体の異常は見つからず、積極的な治療も受けられないまま、周囲からは理解されず「なまけ病だ」などと見られて悩んでおられます。

そのような状況を理解し、効果的な治療をさせて頂けると思います。

是非、副作用のない鍼治療を試してみてください。
 

投稿者: 井島鍼灸院

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