生体制御療法を使用し慢性肝機能障害に対する鍼治療について、師匠である黒野保三先生は東洋医学研究所®ホームページで次のように紹介されています。
1)基礎研究
①実験的肝傷害に対する鍼の効果についての超微形態学的研究
四塩化炭素を投与した肝傷害モデルマウスと鍼治療を施したマウスにおける肝臓の超微形態を比較観察しました。
肝傷害マウスでは、肝細胞核内に偽核封入体の出現、核小体の変形、ゴルジ装置の萎縮、糸球体の変形およびクリステの消失など、一連の細胞機能低下とともに、しばしば巨大な自家食胞が出現しました。
鍼治療によって四塩化炭素投与による肝細胞の傷害はほとんど消失しました。
②薬物性肝傷害に対する鍼の予防効果についての実験的超微形態学的研究
あらかじめ鍼治療をおこない四塩化炭素を投与したマウスと何も処置をせず四塩化炭素を投与したマウスにおける肝臓の超微形態を比較観察するとともに死亡率を検討しました。
何も処置をせず四塩化炭素を処置したマウスでは、①の実験と同様な肝傷害が観察されました。ところが、あらかじめ鍼治療を処置しておくとこの肝傷害変化は観察されませんでした。
また、四塩化炭素を投与すると72時間以内にマウスが全滅しましたが、鍼治療はこの死亡率を約80%に減少させました。
このことは、鍼治療が肝臓毒である四塩化炭素の毒性に対して予防的に働くことを証明しました。
2)臨床研究
①慢性肝機能障害カルテ作成の基礎的検討
慢性肝機能障害の重症度あるいは効果判定基準を作成するために、肝機能検査値、自覚症状、他覚的所見の項目を選択するにあたり、医師によって肝硬変と診断された2名と慢性肝炎と診断された3名に対し、7~91日間にわたり鍼治療を施し、治療前と治療期間中に月1~2回肝機能検査を受けさせました。鍼治療は生体制御療法+証と主訴によって選穴しました。
66歳男性 肝硬変
自覚症状:夜間の発作性心悸亢進、不眠、全身倦怠感
1958年輸血による血清肝炎(黄疸を併発)、1973年大学病院にて肝硬変と診断、治療を受けていたが、夜間の発作性心悸亢進、不眠、全身倦怠感が出現したため、鍼治療を開始した。
初診時GOT:235,GPT:210であった。20回の鍼治療で主訴である夜間の発作性心悸亢進、不眠、全身倦怠感は消失し、GOT:165,GPT:170と改善されたためいったん治療を中止した。
しかし、1ヵ月後不眠、全身倦怠感が出現、GOT:200,GPT:210と上昇したため鍼治療を再開し10回で訴えは消失し、GOT:130,GPT:135と改善され安定した。
52歳男性 肝硬変
自覚症状:全身倦怠感、発作性心悸亢進
1972年肝硬変と診断されてから、入退院を繰り返し、症状は一進一退であったので鍼治療を開始した。初診時GOT:150,GPT:110であった。30回の鍼治療で主訴は消失し、GOT:10,GPT20と改善された。
38歳男性 慢性肝炎
自覚症状:全身倦怠感、右季肋部と心窩部に鈍痛、全身躁痒感、易疲労感
1976年慢性肝炎と診断され入院、退院後の症状は一進一退を続けていたので鍼治療を開始した。15回の鍼治療で主訴は消失したが、初診時のGOT:60,GPT:105は改善されなかった。
29歳男性 慢性肝炎
自覚症状:腰背部に鈍痛、眠りが浅い、倦怠感、易疲労感、気力がない
小学3年輸血、その後血清肝炎。
1976年慢性肝炎と診断、治療。症状の経過が一進一退であったため鍼治療を開始した。初診時GOT:105,GPT180であった。
7回の鍼治療で主訴は消失し、GOT:55,GPT:80と改善された。
29歳男性 慢性肝炎
自覚症状:起床時倦怠感、食欲不振、悪心、頭痛、不眠、
右季肋部に圧痛、体重減少
1977年急性肝炎と診断、入退院後、体調が悪いので鍼治療を開始した。初診時GOT: 81,GPT:47であった。8回の鍼治療で自覚症状は消失し、GOT:37,GPT:25と改善された。
これらの結果から、肝硬変、慢性肝炎に鍼治療は有効であることが示唆されました。
以上の5症例の自覚症状を中心に比較的よく現れると思われる自覚症状、他覚的所見を加えるともに、肝障害の程度をよく把握できると思われる6項目の生化学的検査を選びました。
自覚症状、他覚的所見、肝機能検査値の点数を定め、重症度、効果判定ができるカルテを作成しました。
このカルテにより126症例を集積し分析を行った結果、自覚症状点数の平均では、6ヶ月治療群(n=12)初診時13.8±2.2→6ヵ月後5.8±0.95。
9ヶ月治療群(n=12)初診時14.3±2.1→9ヵ月後5.6±1.4となり、有意(p<0.005)な減少が認められました。GOTの平均では、6ヶ月治療群(n=19)初診時142.6±34.2KU→6ヵ月後56.9±5.8KU。
9ヶ月治療群(n=15)初診時106.9±12.2→9ヵ月後49.9±1.47.9KUとなり、有意(p<0.05)な減少が認められました。
GPTの平均では、6ヶ月治療群(N=19)初診時197.2±47.5KU→6ヵ月後79.8±10.4KU。9ヶ月治療群(n=14)初診時152.3±29.5→9ヵ月後58.3±6.7KUとなり、有意(p<0.05)な減少が認められました。
このことは、慢性肝機能障害に対する鍼治療の有効性が示唆されました。また、鍼治療期間は6ヶ月よりも9ヶ月と長く続けたほうがより鍼治療の効果が高まることが認められました。
以下に代表的な症例を紹介します。
②症例 29歳女性 :慢性肝炎
:全身倦怠感、起立性貧血
1983年慢性肝炎と診断。1984年左卵巣脳腫摘出(GOT:110,GPT:110)。その後GOT156→169、GPT115→343と上昇全身倦怠感、起立性貧血、下肢がだるい、食事が進まない、食欲がない、食事後気持ちが悪い、頭痛、頭重感、イライラ、不安感、腹痛などを訴え、主治医に紹介され来院し、鍼治療を開始した。
42回の鍼治療により、自覚症状はイライラ、不安感を除き消失し、自覚症状点数は30点→8点となった。肝機能検査値では総蛋白8.3→8.6、総ビリルビン0.6→0.9、A/G1.12→1.13、 GOT169→26、GPT343→59、γ-GTP20→5、ZTT19.8→15.8、TTT7.6→4.7となる。
結果、GOT、GPT、γ-GTPは有意に変動しました。総蛋白、総ビリルビン、A/Gは正常か正常値に近いため、大きな変動は認められませんでした。自覚症状は有意に変動しました。GOT、GPT、γ-GTPと自覚症状は同一パターンで有意に変動した症例であります。
東洋医学研究所®グループでは、東洋医学研究所®における長年にわたる研究結果に基づいて、慢性肝機能障害に対する鍼治療をさせて頂いております。
是非、安心して副作用のない鍼治療を受けて下さい。
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