
東洋医学研究所の黒野保三先生には、毎月1回健康しんぶんを発刊して頂いています。
その中で福田裕康先生が担当されている「シリーズ東洋医学」を紹介させて頂きます。
今回は平成24年10月1日に発刊された第17刊健康しんぶんから、「脈状診について」です。
鍼灸医学の診察法は望、聞、問、切の四種類に大別され、これらをまとめて「四診法」と呼んでいます。
今回は切(切診)に分類される脈診の中の「脈状診」について考えていきます。
人の脈を触れたときに、これはいい状態である、あるいは悪い状態であるということを知るためにはどうしたらいいのでしょうか?
それには基準が必要です。
そこで「浮、沈、滑、ショク(渋る)、数、遅」で表す六祖脈が大きな役割を果たしてくれます。
この六つの言葉の組み合わせで表わされる脈は、脈が打っている位置、脈の流れ方、脈のテンポを捉えています。そして、この情報が体の状態を教えてくれるのです。
しかしながら、この六つの脈の状態でさえ明確に捉えるためには、相当修練が必要です。
もっと特徴を明らかに視ることができれば診療に役立つことは明らかです。
この「脈状診」の重要性については、東洋医学研究所所長黒野保三先生がいち早く気付かれ、昭和56・57 年の社団法人全日本
鍼灸学会学術大会において「脈波の分析と東洋医学との対応」と題して報告されました。
そして、当時では最高級の計測機器を使い、周波数という概念を用いて、六つの脈を客観的に表すことに成功しました。
この周波数やその波形という考え方は、人の声に例えると理解しやすいと思います。
例えば高い声の人は周波数が早く、低い声の人は周波数が遅いのです。
さらにその周波の波形の変化によって、声の高い低いだけではなく声の質まで分かるのです。
そして、声が高い人、声が低い人というそれぞれ個人の特徴をもつ人たちが風邪などをひいたら声が変わります。
それは、波形によってもあらわれるわけです。
まさに、脈状診では、本来もっている状態と、そして今起こっている状態をも把握できることから、治療の予後をも推定できる診察法となるのです。
この研究結果は、現在でも多くの臨床家の診断・治療に対する礎になっており、患者さんに還元されているのです。
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