東洋医学研究所の黒野保三先生には、毎月1回健康しんぶんを発刊して頂いています。
その中で福田裕康先生が担当されている「シリーズ東洋医学」を紹介させて頂きます。
今回は平成25年3月1日に発刊された第22刊健康しんぶんから、「経穴について(4)」です。
2011年に続き、2012年12月の自律神経雑誌に「心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価-腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価-」というタイトルで、東洋医学研究所の黒野保三所長の研究結果が掲載されました。
この論文には経穴に対する刺激方法によって変わる身体反応を評価できるという価値ある報告がなされています。
前号で経穴には有効な深さがあることが明らかにされました。
それでは、その刺激はどのようなものなのでしょうか?経穴の皮膚から五から七ミリの深さに刺入した鍼先は、筋肉の膜を貫くことなくその膜を圧する程度であることがわかりました。
黒野所長はこれを「筋膜上圧刺激」と命名され、論文に報告してきました。では、この刺激法はどのような特徴があるのでしょうか?
まず、筋膜を圧する程度なので、鍼を刺されても響くような感じやズーンとした重い感じが全くありません。そして、それ以上に治療に対する作用機序に違いがあったのです。筋膜を貫くような強い刺激は、痛いと思うのと似ているので早く鋭い反応がでます。
この反応の大部分は脊髄反射といって、その刺激が中枢である脳まで到達せず脊髄で返されてしまうのです。
もちろん、この刺激方法が必要な場合もありますが、それは、極わずかです。鍼治療のもっとも得意とするところは全身の調整です。
それには、有効な刺激が脳まで到達して、指令をだしてくれないと困るわけです。その中でも、自律神経の副交感神経を特異的に刺激できる方法が証明されたことは、現在医療の中でも画期的なことであることは間違いありません。
そして、もう一点、経穴の特異性という問題があります。その問題の解決への糸口を示してくださいました。わずか1センチの違いで反応が出なかったり、腹部の刺激だけに反応したりと、生体にとって有利な反応性の評価から今後の経穴の研究に必要な基礎を提供してくださいました。
まだ、経穴自身を100%説明はできませんが、これらの結果を参照すると、機能面からの推定はできやすくなったといっても過言ではありません。
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