
東洋医学研究所の黒野保三先生には、毎月1回健康しんぶんを発刊して頂いています。
その中で福田裕康先生が担当されている「シリーズ東洋医学」を紹介させて頂きます。
今回は平成25年4月1日に発刊される第23刊健康しんぶんから、「経穴について(5)」です。
経穴(ツボ)への刺激はどのように行う事がいいのでしょうか?以前に紹介させて頂いた経穴に存在するポリモーダル受容器の反応から考えていきましょう。
受容器というのはその刺激を感じ取る場所です。このポリモーダル受容器は重要な経穴がたくさんある腱や筋への移行部にはたくさんありますが、内臓にまで広く分布していることが知られています。今回は実験が実験結果から考察します。
この精巣部では熱刺激、機械的刺激、化学的刺激すべてに対して同じ神経が反応したので、その刺激を受け取る受容器はポリモーダル受容器と判断されました。
この受容器から単一の神経を一本取り出し、神経の反応をオシロスコープで観察すると共にレコーディング用紙で記録できるようにセットを組み、実験を行いました。
鍼の刺激は物理的刺激になるため、今回は圧刺激を行い検討されました。精巣部は漿膜を露出させた状態で極弱い刺激から刺激を行い、その反応を確認しました。
用いた刺激量は弱刺激として鍼による10~20グラム程度の圧迫となる刺激と、強刺激として鍼による40~60グラム程度の圧迫となる刺激を用いました。その結果として非常におもしろい結果がでました。
一般的に強い刺激の方が神経反応を大きく長く続くようなイメージがあります。しかしながら、鍼を連続して行う実験をした結果、弱刺激では何度鍼を刺しても、神経が同じレベルで反応していたのに対し、強刺激では最初の数秒間は神経が強く反応しましたが、その後時間経過とともに反応が消失しました。
また、同じ箇所に再度、圧刺激を加えても反応しませんでした。
この実験から、20グラムの圧力で漿膜を圧迫する程度の強さがポリモーダル受容器に持続的な刺激を与えるということ、そして、それが鍼の適切な刺激量であることが分かります。
このように鍼の効果的な刺激方法が実証的研究で証明されました。
経験的になんとなく分かっているだけでは、医療にはなりません。
サイエンスとして証明された医学にもとづく経験が、確かな医療効果を発揮することは当然であることは理解できるでしょう。