
東洋医学研究所®グループの福田裕康先生の書かれたコラムを紹介させて頂きます。
胃の本当の役目は?
食べ物を消化する場所はどこですか?と聞かれた時、まず思い出すのは胃ではないでしょうか。
でも、胃を手術でとってしまっても、元気に生活してみえる方もいます。本当の胃の働きとは何でしょうか?
食べ物を食べますと口から食道を通って胃に到達します。胃に食べ物が入ると、平滑筋と呼ばれる胃の壁がゆるみ、胃が広がり、次から次へと送られてくる食べ物を貯留します。
そして、満腹になったという信号が脳に伝わるまで貯蔵されつづけるわけです。この食べ物を貯蔵するということが胃の本来の役割ということになります。
でも、消化のためにも大事な働きをしています。直接、体内で消化吸収をする場所は胃に続く小腸ですが、小腸は一度にたくさんの食べ物を送りこまれてしまうと、下痢をおこし、すぐさま排除しようとする機能が働いてしまうのです。
胃の運動はいつも同じ?
食事をすると胃が運動を始めます。そして、胃の場所によって違う運動をします。食べ物が入ってくるとたくさんの食べ物をためやすいように、胃の上の方はゆるんで開きます。
それと同時に胃の下の方では胃の中で食物を細かくするために一定のリズムで胃が収縮します。
また、胃には様々な素晴らしい機能が知られていますが、胃から排出される内容物の大きさを選別する機能があります。
胃の出口から小腸に出ていくことができる固形物の大きさは二ミリ程度です。それ以上大きなものはまた胃の上の方に押し戻され小さくなるまで排出されません。
では、胃の中で残ってしまったものは、その後どうなってしまうのでしょうか。実はそこに胃の運動のおもしろさがあったのです。
先ほど食事をすると胃が動き始めて消化を助けるように書きましたが、それでは空腹の時、胃は何をしているのでしょうか?
日本では、1960年代にそのきっかけとなる論文が群馬大学の先生らによって執筆されておりました。そこには、空腹時の方が規則正しい収縮で食後よりも大きな収縮がおこっていることが著されているのです。
それも1時間30分周期で食後の収縮の力の3から4倍の大きさでした。そして、もっと驚いたことに、空腹時の収縮は食後に広がった胃の上の方も含めた胃全体で収縮が起こっていたのです。
この力強い収縮には意味があり、胃で残ったカスを一気に掃除してしまうことができたのです。
この空腹の時間が胃の健康にとって重要だったのです。しかしながら、1日3食食べると完全な空腹になることが少なく、夜寝ている時にしか空腹がない人が増えてきました。
胃にとっていい生活をすることが快適な生活となる一助になるはずですが、それでもうまくいかない人もいます。胃の運動は胃に固有に持っている神経とそれをもっと中枢から制御する自律神経とで調整されています。
特に自律神経の中の副交感神経は胃の運動にとって大事な神経ですが、これは命令するだけではなく神経の数からすると逆
向きに働き、胃の情報を中枢に伝える能力を備えています。
胃の運動に対する鍼治療の効果も種々報告されるようになりましたが、胃を中心とした平滑筋と鍼灸については、まだまだ解らないことばかりです。
しかし、生活の質をあげるのに避けては通れないものばかりです。
平滑筋に興味をもっていただけるように、これからも紹介させて頂きます。
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