東洋医学研究所の黒野保三先生には、毎月1回けんこう新聞を発刊して頂いています。
その中で福田裕康先生が担当されている「シリーズ東洋医学」を紹介させて頂きます。
今回は平成25年5月1日に発刊された第24刊けんこう新聞から、「生体反応のスイッチ」です。
経穴に鍼をしたときに生体ではどのような反応がおこると考えられるでしょうか。
鍼刺激がポリモーダル受容器を刺激している可能性が高いことからポリモーダル受容器が興奮するとどうなるかを考えます。
ポリモーダル受容器のおもしろいところは刺激をうけて伝えるだけでなく、受容器自身が効果器として働き、そこからいろいろな物質を放出することです。
この物質は神経ペプチドと言われ、代表的な物質としてサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連因子があげられます。
そして、放出される物質によって血管の拡張や血管からの血液成分の漏出の促進などをおこします。
ただ、後に紹介しますが、その刺激は局所のみの反応で終わることはなく、最終的には中枢系まで伝達され脳に達し、そこから下行して神経に伝達されてきます。
また、それと平行して意図していない皮膚組織の損傷がおこります。
現実に皮膚組織の損傷後の生体反応は、ヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジン、セロトニン、ATPといった発痛・炎症物質といわれるものを放出して、痛み・熱感・発赤・腫れをおこします。
このように意図したり、意図していないにかかわらず、鍼刺激によって放出された物質の多くは血液循環に非常に関係しており、血流をよくしたり、また血流をよくするために血管自体を広げたりすることが報告されております。
特に血管を開かせることによって、血液成分などの漏出と放出された物質の相互関係によって免疫系に影響を与えることがわかってきました。
また、鍼灸の刺激は全身の調節を目的に用いることが多いと考えられ、身体への鍼刺激がその場だけではなく、生体内にとどまって効果が持続するということは経験的に知られております。
以上のことから、まず鍼刺激は生体反応を起こすスイッチということが言えるのではないでしょうか。
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