東洋医学研究所グループの石神龍代先生の書かれたコラムを紹介させて頂きます。
「老い」を知り「長寿」を楽しむ
東洋医学研究所グループ栄鍼灸院
院長石神龍代
はじめに
現在の日本は、4人に1人が65歳以上という超高齢社会です。
この世に生を受けて、天寿を全うするということは誰しも願うところです。
時の流れは止めることはできなく、老いは必ずやってきます。避けて通れない「老い」を知り「長寿」を楽しんで過ごすことができたならどんなに幸せでしょう。
今回は、NHKスペシャル「人体:ミクロの大冒険」から学んだ内容を紹介させていただき、「長寿」を楽しむ方法を考えてみたいと思います。
私たちの一生
私たちの始まりはたった1個の細胞、体内で最も大きな細胞である「卵子」と体内で最も小さい細胞である「精子」との合体により誕生する「受精卵」、その「受精卵」が分裂を繰り返し60兆個の細胞となり、変化をし続けてゆくのが私たちの一生です。
学び成長する時、私たちの内側では細胞たちが変化して学習や経験を記憶していきます。
人間は動物と違って細胞を自ら変えることもでき、努力次第でなりたい自分になれるのです。
老いの正体は何か
これまで老いとは歳月と共に全身が漫然と衰えていくことだと考えられてきました。
ところが、最新の研究によって、身体の衰えの根底には免疫細胞があるという衝撃の事実が明らかになってきました。
※免疫細胞とは病原体と戦って体を守ってくれる力強い細胞です
免疫細胞は背骨の骨髄の中のニッチといわれる特別な場所で作られます。その数は1日一千億以上。一口に免疫細胞といっても種類は様々です。
骨髄の血管にはミクロの通り穴があり、血管に入った免疫細胞たちは見事なチームワークで外敵と戦います。
この働きなくして私たちの健康を保つことはできないのです。
免疫細胞の働き振りには年齢によって大きな違いがあります。免疫細胞(好中球)は病原体を見つけますが、20代ではすぐに見つけてかけよっていきますが、60代ではほとんど動きません(病原体の居場所がわからなくなっています)。
免疫細胞と長寿との密接な関係
老化研究者のルカ・ディアーナ博士(サッサリ大学)が、イタリア・サルデーニャ島(長寿の人の割合が世界一高い)の高齢者三千人の血液を調べた結果、免疫細胞が非常に効果的に働き続けていて、20代の動きを保っていることがわかりました。
イギリス・バーミンガム大学の報告によりますと、運動を行う前の免疫細胞は一ヶ所からあまり動きませんが、5分間の運動後(全力で自転車をこいだ後)は、活発に動き出しました。運動によって筋肉から分泌された物質が免疫細胞を活発にさせたと考えられています。
これまでも健康維持には欠かせないといわれてきた運動。実は免疫細胞に対して働きかけ、健康を促進していたことが確認されたのです。
免疫の暴走が引き起こす老いと病
脳出血、動脈硬化、心筋梗塞、慢性肝炎、骨粗鬆症。こうした年齢とともに増える病気のほとんどに免疫細胞が深く関わっているのです。
体を守るはずの細胞が逆に体を壊してゆく。その決定的な映像を捉えたのは、バイオイメージングという特殊な顕微鏡の最新の技術です。
本来は病原体の侵入に備えてゆっくりとパトロールしていますが、こちらの肝臓では大量のマクロファージが本来守るべき細胞に群がり攻撃を加えているのです。いわば、免疫細胞の暴走です。この状態が続くと慢性肝炎になってしまいます。
また、病原体がいないのに血管の壁に居座っているマクロファージによって血小板が呼び集められてきて、血管がどんどん狭くなっていって、ついに血流が止まってしまいました。必要もないのに血流を止めてしまうこの状態がやがて動脈硬化につながります(動脈硬化とは昔は脂肪が血管につまるのだと思われていました)。
免疫細胞の暴走によってサイトカイン(攻撃の命令を伝える物質)がところかまわずまき散らされると、体中が免疫細胞の攻撃対象となってしまいます。この状態こそ全身が老いてゆく最大の要因です。
※免疫細胞の暴走そのものを止めることはできるのでしょうか
免疫細胞はネットワークで、その司令塔がT細胞です。
ですからT細胞がちょっと間違った指揮をしてしまうと、本当は病原体をやっつければよかったのに、それが自分に向いてしまったりします。
免疫細胞たちのリーダーT細胞が暴走してしまう理由は、T細胞を一人前に育て上げる胸腺が思春期を過ぎると殆どなくなってしまうからです。
血液中のT細胞は、20代と70代では、数はあまり変わりませんが、正常な判断力を持ったT細胞だけに絞ってみると、70代は一割程度に激減。つまり、胸腺がなくなって、新しいT細胞の補充が不可能になると、古くなったT細胞が次第に判断力を失ってゆくのです。
これこそ細胞が私たちに強いている宿命なのです。
おわりに
今回学んだことから、私たちの健康を守ってくれる免疫細胞を、いかに活性化させるか、いかに誤作動を起こさせないようにするかが、長寿を楽しむ鍵であり、その方法として、人間性(生かされていることへの感謝の心、他の人への思いやりの心)を高め、運動)を励行することが大切だと思います。
それに加えて、東洋医学研究所?黒野保三所長の長年の基礎・臨床研究によって、免疫細胞の活性化が明らかになっている鍼治療を定期的に受療されることをお勧めいたします。
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