腰痛について
鍼灸院を来院される患者さんの中で、腰痛を主訴とする方は非常に多く、また、治療を受けていない方の中にも、腰痛を感じながら治療をあきらめてしまっている方も多いようです。
腰痛に対する鍼治療は、その原因の鑑別を正確に行った上で、適確な刺激が加えられれば、かなりの効果が期待できることが報告されています。
そこで、東洋医学研究所グループの一員であり、(公社)生体制御学会研究部疼痛疾患班の班長である河瀬美之先生が、東洋医学研究所のホームページに掲載されているコラム(6月5日号)で、どんなタイプの腰痛なのかを見分ける方法をわかりやすく説明されています。
私も疼痛疾患班に参加させて頂き、徒手検査法や解剖学的な知識、ポイントを絞った問診の仕方などを勉強させて頂いたおかげで、筋性、ヘルニア、椎間関節、椎間板性、その他(内臓性や心因性)、それらの複合型などのタイプ分けができるようになりました。
その上で、腰痛の既往歴や、そのときの身体の調子、生活習慣や仕事の状況、よく動かれる方かどうかなどの情報を考慮し、適切な鍼治療を行うとともに、その患者さんにあった生活指導を行うことが重要であると考えます。
是非一度、鍼治療を試してみてください。
腰痛とは?
腰は、体重を支えるのに最も大きな役割を受け持ち、体を曲げ伸ばしするとき、物を持つときに、いちばん負担の加わるところです。
このために、人は腰部に弱点を持つようになり、約80%の人が一生に一度は腰痛を経験するといわれています。
一般に、腰の骨や周囲の筋肉あたりに痛みがあることを、広い意味で腰痛症といいます。
腰痛症の原因は、①背骨やその周囲の筋肉などの病気に由来するもの、②内臓の病気に由来するもの、③神経の病気に由来するもの、④血管の病気に由来するもの、⑤心因性由来のものなど多様に分類されます。
(注意:寝ていても痛い、横になって眠れない、発熱がある、神経麻痺があるなどの腰痛は、重篤な疾患が疑われますので、すぐに、専門の医療機関を受診して下さい。)
最もよくみられる腰痛症は、やはり整形外科的な原因によるもので、①に分類されるものです。これは鍼治療の適応症でありますので以下に紹介します。
整形外科的な原因による腰痛症の種類
①筋性腰痛 いわゆる「ぎっくり腰」
症状 腰部に痛みがあり、内臓疾患でもなく、レントゲン写真を撮っても異常が見られないものの総称です。
前にかがんだり、急に立ち上がろうとした時に激痛が走るなどが一般的な症状です。
原因 長時間同じ姿勢や無理な姿勢を続けた後などに、また、不用意に体をひねった時、重いものを中腰で持ち上げた時、前傾姿勢をとった時などに起こりやすくなります。
②椎間板性腰痛
症状 鈍いような重いような違和感が、腰の周辺に出てきます。レントゲン像で「骨と骨の間がせまくなっている」と専門医より説明を受けた人はこれにあたります。
原因 椎間板が年齢と共に硬くなり、それがすりへって薄くなったり、変形を起こして痛みが出る腰痛です。椎間板の変形により、腰の部分が不安定になってくるため、これを支えるための筋肉に慢性疲労が起こって痛みが出てきます。
③腰椎椎間板ヘルニア
症状 腰から足先にかけてしびれや痛み、筋力の低下など。腰を曲げないと痛みで立っていられないほどの腰痛と下肢の痛みがあります。
原因 椎間板の亀裂から、髄核(椎間板の中心部にある)が押し出され、神経を圧迫した結果起こるものです。
④腰部脊柱管狭窄症
症状 腰痛の他、立っていたり歩いていると、脚がしだいにしびれてくる、脚全体が痛むなどの症状が起こり歩けなくなります。しかし、腰を丸くして休憩すると症状が消え、歩くことができるようになります(間欠跛行)。また、排尿障害を招くこともあります。
原因 腰椎の荷重・運動負荷による加齢変化として、椎間板の変形膨隆、椎体の骨棘形成、椎間関節の関節症性肥大、黄色靭帯の肥厚により脊柱管が狭くなり、中の神経が締め付けられます。
立っていたり歩いていると、神経はさらに締め付けられ、神経自体に循環障害が起こり、脚のしびれや脱力感が起こるといわれています。
その他に、腰椎分離症・すべり症、変形性腰椎症、坐骨神経痛などがあります。
妊婦の方の腰痛に対するアドバイス
最近、妊婦の方から腰痛に鍼治療はどうかという質問を受けました。
副作用のない鍼治療は、妊婦の方には特に有効な治療法であると思います。
過去に多くの方が鍼治療を受けられ、妊娠週数にあった治療をさせていただけますので安心して治療を受けて下さい。
妊娠半ばになると、からだのバランスをとるためにおなかを突き出したり、そり身の姿勢をとるので、腰や背中の筋肉に負担がかかって痛みがちになりますので、早めの治療をお勧め致します。
同じ姿勢が原因となる慢性的な腰痛にアドバイス
腰痛に関する生活習慣の注意事項はいろいろあると思いますが、過去の患者さんの中で印象にのこっている症例があります。
その方は、長くピアノの先生をされていたのですが、生徒さんに教える時にいつも同じ側に座って頂いていたそうです。
いつも同じ側に身体をひねるため、慢性的な腰痛になり大変辛い思いをされました。
そこで、お弟子さんには必ず生徒さんを両側に交互に座らせるよう指導しておられました。
このことはいろいろな場面での教訓になると思います。
仕事の時や家でテレビを見るときなどいつも同じ方向に身体をひねっていないか一度確認してみて下さい。
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