井島鍼灸院ブログ

2026.07.17更新

みなさんは、
「鼻がつまるだけで、こんなにつらいのか」
と感じたことはありませんか。
呼吸がしにくい。
頭がぼーっとする。
匂いが分からない。
実は東洋医学には、
こうした鼻の不調に深く関わる代表的なツボがあります。
それが
迎香です。
迎香は、
手の陽明大腸経に属する経穴で、
この大腸経の流れの終点にあたる重要な場所です。
大腸経は、腕から顔へと上がり、
最後に鼻の横にたどり着きます。
そしてここから、
足の陽明胃経へと経気が受け渡される。
つまり迎香は、
腕から来た気が、顔面へと集まる交差点
のような場所なのです。

では、なぜ大腸経が鼻と関係するのでしょうか。
東洋医学では、
肺と大腸は表裏関係にあるとされます。
そして肺は、
呼吸と皮膚、そして嗅覚を司る臓。
鼻は「肺の竅」と呼ばれ、
外界とつながる重要な門です。
迎香はまさに、
その門のそばに位置するツボ。
名前の由来も興味深く、
「迎」は迎え入れる、
「香」は香りを意味します。
つまり迎香とは、
「香りを迎え入れる穴」。
嗅覚と呼吸の入り口を整えるツボ、
という意味が込められているのです。

位置は、
小鼻の外側、ほうれい線のくぼみ。
解剖学的に見ると、
顔面の重要な神経や血管が集まる場所でもあります。
三叉神経第2枝、
顔面神経の枝、
顔面動脈。
これらが走るため、
刺激によって鼻周囲の血流や神経反応に影響を与えやすい部位と考えられています。

古典では、
迎香は「鼻疾患一切に用いる」とまで言われます。
鼻炎、鼻づまり、副鼻腔炎、嗅覚低下。
さらに
上歯痛、顔面神経麻痺、三叉神経痛など、
顔面トラブル全般にも応用されてきました。
ここで面白いのが、
迎香は禁灸穴とされることが多い点です。
顔面のデリケートな部位であり、
熱刺激には注意が必要と古くから考えられてきました。
古典の臨床家たちが、
安全性まで観察していたことが分かります。

さらに興味深いのが、
「鼻輪経」という考え方。
大腸経の気は、
鼻の周囲をぐるりと巡り、
人中や目頭付近で他経絡と交わるとされます。
まるで鼻を囲むように
気が循環するイメージです。
このため迎香は、
単なる鼻づまりのツボではなく、
顔面全体の気の巡りを左右するポイントとして扱われてきました。

現代でも、
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎への鍼治療研究で、
迎香は頻繁に使われる代表穴です。
古典の知恵と現代研究が、
同じ場所に注目している。
ここに、東洋医学の面白さがあります。

もし、
「鼻は単なる通り道ではない」
と考えたらどうでしょう。
呼吸、嗅覚、免疫、
そして脳への酸素供給。
鼻の状態は、
全身状態のバロメーターでもあります。
迎香は、
その入り口に立つ門番のようなツボ。
顔にありながら、
全身に影響を及ぼす可能性を秘めています。

小さな一点に、
古代からの観察と理論が詰まっている。
それが、迎香というツボです。
次に患者さんの鼻症状を見るとき、
このツボの背景を思い出すと、
また違った視点が見えてくるかもしれません。

 

 

投稿者: 井島鍼灸院

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