井島鍼灸院ブログ

2026.04.30更新

今日は 太谿というツボをご紹介します。

内くるぶしと アキレス腱の間にある 小さな谷のようなくぼみ。
しかしここは 東洋医学では 生命のエネルギーが湧き出る源泉 とも呼ばれる とても重要な場所です。

疲れやすい、足腰が弱い、 冷えやすい、 年齢とともに体力が落ちてきた。
そんな方に ぜひ知っていただきたいツボです。

太谿はどんなツボか

太谿は 足の少陰腎経 に属します。
腎は 東洋医学で 成長、老化、生命力、 ホルモン、 水分代謝を司る臓です。
いわば 体のバッテリー です。

そして太谿は 腎経の原穴 であり 五兪穴の兪土穴 でもあります。
原穴とは 臓腑のエネルギーが最も集まるポイント。
つまり太谿を刺激することは 腎精、腎陰、腎陽すべてに直接働きかけることを意味します。

だから太谿は 腎虚 の代表穴として 幅広い症状に用いられます。

太谿の場所

場所は 内くるぶしの一番高いところの高さで、 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみです。
指で軽く探ると スッと指が入る谷が見つかります。
その奥で トクン と拍動を感じる場所。
そこが 太谿 です。

押すと 心地よい圧痛 が出やすいのも特徴です。

太谿という名前の意味

太という字は 大きい、 重要、 という意味。
谿は 谷、 水が集まる場所 を表します。
つまり太谿とは 大きな谷に水が集まる泉 という意味です。

腎経のエネルギーがここに集まり 全身へと流れ出していく。
まさに 命の水を蓄える泉 です。

太谿の働き

東洋医学では、若さのカギは、
「腎」のエネルギーです。
その腎を、直接元気にするツボが、
足首にある、太谿。

太谿の働きは とても幅広くあります。
まず 腎精を補い、年齢とともに感じる不調に深く関わります。

腎は、骨を強くする働きを持ちます。
だから太谿は、
骨粗鬆症や、フレイル予防にも使われます。
さらに、腎が弱ると、
肌は乾燥し、
くすみや、シワが増えます。
太谿は、水分代謝を整え、
肌の潤いと、透明感を守るツボです。
そして、
「老化は足から」と言われるように、
太谿を刺激すると、
足腰の血流が上がり、
動ける体を保ちます。

次に 冷え、 むくみ 、水分代謝。
足先の冷え、 夜間頻尿、 むくみ。
太谿は 体の水の巡りを整える役割を持ちます。

泌尿器や生殖 ホルモン系にも用いられます。
頻尿、 更年期、 不妊、 性機能の低下。
腎の力を底上げする代表穴です。

耳や脳とも関係が深く
耳鳴り、 難聴、 物忘れ にも使われます。

さらに 両側の太谿を軽く刺激すると
自律神経が整い 不安、 緊張、 不眠のケアにも役立ちます。

まとめ

太谿は 枯れかけた泉に水を満たすツボ です。

疲れが抜けない。
冷えやすい。
ストレスで消耗している。

そんな時 太谿を温め 優しく刺激することで
体の奥からエネルギーが満ちていく感覚が得られます。

太谿は 腎の原点に触れるツボ。
小さな谷に見えて そこには 生命力の泉 が湧いています。

疲れた時 冷えを感じた時
ぜひ この泉を思い出してください。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.27更新

痛み」は、心まで傷つける?

みなさんは、こんな経験はありませんか。
痛みが長く続くと、
気持ちまで落ち込んでしまう。
不安になりやすくなる。
やる気が出なくなる。

実はこれ、
気のせいではありません。
慢性的な痛みは、
“心の問題”ではなく、
脳の変化と深く関係していることが、
近年の研究でわかってきました。

今日は、
「電気鍼が脳にどう働きかけるのか」
という最新研究を、
わかりやすくお話しします。

■ 痛みと心は、脳でつながっている

長く続く神経痛を持つ人の多くが、
不安やうつを同時に抱えます。
これは偶然ではありません。
痛みを感じる脳の回路と、
感情を調整する脳の回路は、
同じネットワークの中にあるからです。

特に重要なのが
「前頭前野」と呼ばれる場所。
ここは、
感情のブレーキ役。
冷静さや安心感を保つ司令塔です。

慢性痛が続くと、
この司令塔が弱ってしまう。
その結果、
痛みだけでなく、
不安や落ち込みも強くなるのです。

■ 電気鍼は脳に何をしている?

今回の研究では、
神経痛を起こしたマウスに
電気鍼を行いました。
するとどうなったか。
不安行動や、
うつのような行動が、
はっきり減ったのです。

しかも、
ただ元気に動き回っているだけではなく、
感情面が改善していました。
ここが重要です。

さらに脳を調べると、
前頭前野の中の
「グルタミン酸ニューロン」という
神経細胞が活性化していました。

少し難しい名前ですが、
例えるなら――
感情のバランスを取る
“脳内の調律師”のような存在です。
電気鍼は、
この調律師を目覚めさせ、
乱れた心のリズムを整えていたのです。

■ これは何を意味するのか

これまで鍼治療は、
「なんとなく効く」
「経験的に良い」
と言われることもありました。

しかし今回の研究は、
脳回路レベルで説明できる可能性を
示しました。

つまり、
鍼は気分の問題ではなく、
脳の働きに直接影響している可能性がある。
ということです。

■ 未来の痛み治療は変わるかもしれない

慢性痛の治療では、
薬が中心になることが多いです。
でも、
薬だけに頼らない選択肢が増えたら
どうでしょうか。

副作用が少なく、
心と体の両方に働きかける方法。
電気鍼は、
その一つになり得るかもしれません。

■ 最後に

痛みは、
ただの感覚ではありません。
心、感情、人生の質にまで
影響を与えます。

だからこそ、
体だけでなく、
脳と心の両面から整えることが大切です。
鍼治療は、
その橋渡しができる可能性を
秘めています。

これからの研究で、
さらに明らかになるでしょう。
痛みと心に悩む方の、
新しい希望として。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.22更新

鍼はなぜ効くのか?
ファシアから見る痛みと自律神経のしくみ

こんにちは。岐阜市の井島鍼灸院です。

以前の動画で私は、「鍼って、本当に効くの?」というテーマでお話ししました。

その中では、鍼の刺激が、ただその場だけで終わるのではなく、皮膚や筋肉の近くで起きる反応から、脊髄、そして脳へとつながっていく、そんな流れをできるだけわかりやすくお伝えしました。

すると、その動画をご覧くださった方から、「もっと詳しく知りたいです」という声を多くいただきました。

そこで今回は、その続きです。

前回の最後に少しだけお話ししたファシアという視点を中心に、鍼がなぜ痛みをやわらげるのか、なぜ自律神経まで整っていくのか、そこをもう少し深く見ていきたいと思います。

このファシアという考え方は、私自身にとってもとても大切なものです。

私がご指導いただいた黒野保三先生は、筋膜の表面にごく繊細な刺激を加える筋膜上圧刺激という手法を長年研究されました。

これは、深く強く刺すというよりも、浅いところを、やさしく、でも的確にとらえる方法です。

そして、そうした浅い刺激が、筋膜にある感覚の受け取り装置にはたらきかけて、自律神経、特に副交感神経に影響することが、研究でも示されてきました。

東洋医学の経験を、現代の生理学で裏づけていく。この姿勢は、私が治療に向き合ううえでの大事な土台になっています。

今回はこの動画で、そもそもファシアとは何か、鍼をするとそのファシアで何が起きるのか、なぜ痛みがやわらぐのか、なぜリラックスしたり眠りやすくなったりするのか、そして東洋医学の経絡とどうつながって見えてくるのか、この順番でできるだけわかりやすくお話ししていきます。

少し専門的な話も出てきますが、なるべく身近な言葉でお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

1、ファシアって何?

まず、ファシアって何でしょうか。

ひとことで言うと、全身の組織を包んで、つないで、支えているネットワークです。

筋肉だけではありません。骨も、内臓も、血管も、神経も、みんな何らかの形で包まれていて、つながっています。

昔はこういう組織は、ただの包み紙みたいなものだと考えられていた時代もありました。

でも今は、そうではないことがだんだんわかってきました。

ファシアは、体をまとめるだけの脇役ではなくて、感覚にも、動きにも、自律神経にも関わる、とても大事な組織なんですね。

イメージしやすく言うと、全身を立体的に包んでいるボディスーツみたいなものです。

ただし、表面を覆っているだけではありません。そのスーツは体の中にも入り込んでいて、筋肉と筋肉の間にも、内臓のまわりにも、神経や血管のまわりにも広がっています。

だから、どこか一か所でこのネットワークが固くなったり、よれたり、滑りが悪くなったりすると、離れた場所にも影響が出ることがあります。

たとえば、腰がつらいのに足を治療したら楽になった、首がつらいのに手を使ったら変わった、こういうことは鍼灸では珍しくありません。

その背景のひとつとして、ファシアの全身的なつながりが考えられます。

では、ファシアにはどんな役割があるのか。まずひとつは、力を伝えることです。

体は一か所だけで動いているわけではありません。どこかの動きが、ファシアのネットワークを通して、全身に連動していきます。

もうひとつは、感覚を受け取ることです。ファシアには、圧とか、伸びとか、張力の変化を感じ取る受容器が多くあります。つまりファシアは、かなり“感じる組織”なんですね。

さらに、体液の流れや、免疫の働きにも関わっています。そして今回特に大事なのが、自律神経との関係です。

ファシアの中には、自律神経の末梢の線維も走っています。つまりファシアは、自律神経が体に命令を届ける、その現場のひとつでもあるんです。

ここが、鍼を考えるうえでとても大切なポイントです。

2、鍼をすると、ファシアで何が起きるのか

では、そのファシアに鍼が入ると、何が起きるのでしょうか。

ひとつは、鍼のまわりで結合組織が機械的な影響を受けることです。

とくに鍼を軽く回したとき、コラーゲン線維などが鍼のまわりに巻き付くような現象が起きることがあり、これは研究でも示されてきました。

糸巻きに糸が巻き取られるような感じを思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。

こうした現象は、学術的にはニードルグラスプなどと説明されることがあります。つまり鍼は、刺した瞬間だけ何かが起きているのではなく、そのあとも組織とのあいだで微細な力のやり取りが続いている可能性があるのです。

術者の手には、これが独特の感触として伝わることがあります。

鍼がスッと吸い込まれる感じ、あるいは、魚が食いつくような感じ。

昔から魚咬感と呼ばれることがありますが、この感覚の少なくとも一部は、組織との機械的な相互作用として説明できる可能性があります。

ですから、昔の表現を現代の言葉で見直すと、術者が組織とのやり取りを手で感じている、そう理解することもできます。

それから、もうひとつ大事なのが、滑りの回復です。

ファシアの層と層の間には、ヒアルロン酸を含む液体があって、これが潤滑油のようにはたらいています。このおかげで、皮膚や筋肉や組織どうしが、なめらかに動けるわけです。

でも、長時間同じ姿勢が続いたり、慢性的なストレスが続いたり、炎症や緊張が長引いたりすると、この滑りが悪くなることがあります。

すると、体が重い、張る、こわばる、動きづらい、痛い、そんな感覚につながりやすくなります。

鍼の刺激は、この固くなった環境に微細な変化を与えて、滑りを取り戻す方向にはたらく可能性があります。

施術後に「体が軽くなった」「動きがなめらかになった」と感じる方がいますが、その背景には、こうしたファシアの変化もあるのかもしれません。

3、なぜ鍼で痛みがやわらぐのか

ここからは、多くの方が一番知りたいところだと思います。なぜ鍼で痛みがやわらぐのか。

これはひとつの仕組みだけではありません。いくつかのルートが同時に働くと考えたほうが自然です。ここでは、4つに分けてお話しします。

1つ目
脊髄で痛みを通しにくくする

まずひとつ目は、ゲートコントロールという考え方です。

少し難しい言葉ですが、簡単に言うと、痛みの信号が脳へ行く前に、脊髄のところで調整される、ということです。

体にはいろいろな神経線維があります。その中で、比較的太い線維が刺激されると、痛みを伝える細い線維の情報が通りにくくなることがあります。

鍼によって、皮膚やファシアの受容器が刺激されると、この痛みの門が閉じる方向にはたらく。そう考えられています。

たとえば、どこかをぶつけたとき、思わずさすりますよね。あれも似たような反応です。

鍼は、それをもっと精密に起こしている、そんなイメージです。

2つ目
体の中の鎮痛物質が出る

2つ目は、内因性オピオイドです。

これは、体の中で作られる天然の鎮痛物質です。βエンドルフィンとか、エンケファリンとか、そういう物質が知られています。

鍼の刺激が入ると、こうした物質が出て、痛みの伝わり方を抑える方向にはたらきます。

つまり体は、自分の中にもともと“痛みをやわらげる仕組み”を持っているんですね。

鍼は、そのスイッチを入れるきっかけのひとつになると考えられています。

3つ目
脳が「痛みを弱めなさい」と命令を出す

3つ目は、下行性疼痛抑制系です。

これも少し難しい名前ですが、意味としては、脳が脊髄に向かって「その痛み、少し弱めなさい」と命令を出す仕組みです。

鍼の刺激が脳幹のある部分を活性化すると、そこから下に向かって、痛みを抑える信号が降りてきます。

そのとき、セロトニンやノルアドレナリンといった物質が関わります。

つまり鍼は、痛い場所だけに局所的に何かをしているだけではなく、脳からの調整にも関わっている可能性があるわけです。

4つ目
全身の「痛みやすさ」そのものを変える

4つ目は、DNICと呼ばれてきた現象です。これは、ある痛み刺激が別の場所の痛みの感じ方に影響する、という内因性の抑制機構です。

人の研究では、これに近い概念としてCPMと呼ばれることも多くあります。

慢性的な痛みがある方では、実際の傷み以上に、脳や脊髄が「痛みを感じやすい状態」に傾いていることがあります。

鍼は、そうした状態に対して、全身の痛みの感じやすさそのものを変える方向にはたらく可能性があります。

ですから、鍼の痛みどめの働きというのは、ひとつではなくて、脊髄で調整し、体内の鎮痛物質を出し、脳から抑制の命令を出し、さらに全身の痛みの感じ方まで変えていく、そんなふうに、いくつもの層で起きていると考えられるんです。

4、なぜ自律神経まで整うのか

次に、患者さんからよく聞く変化があります。

「よく眠れました」「気持ちが落ち着きました」「呼吸がしやすくなりました」「胃腸の調子まで変わりました」。こうした変化です。

これは、気のせいではなくて、自律神経への作用として考えることができます。

自律神経には、交感神経と副交感神経があります。ざっくり言えば、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ、あるいは休息モードです。

ところが今の生活では、アクセルが踏まれっぱなしの方がとても多いです。

仕事の緊張、情報の多さ、不安、睡眠不足、慢性的な痛み。こういうものが続くと、体はずっと身構えたままになります。

肩に力が入る。呼吸が浅くなる。胃腸が動きにくい。眠りが浅い。疲れているのに休まらない。

こういうとき、鍼が副交感神経のほうへ体を戻す助けになることがあります。

その理由のひとつが、やはりファシアです。

さきほどお話ししたように、ファシアの中には自律神経の末梢線維が走っています。つまりファシアは、自律神経が体に命令を伝える現場でもあります。そこに適切な刺激が入ることで、自律神経のバランスに影響が及ぶ。これは十分考えられることです。

5、自律神経へつながる2つのルート

鍼の刺激が自律神経に影響するルートは、大きく2つ考えられています。

まずひとつ目は、脊髄を介する反射のルートです。皮膚や筋肉、ファシアから入った刺激が脊髄に届き、そこから同じ高さに関係する内臓の働きに影響する。これを体性―自律神経反射と考えることができます。

たとえば、背中の刺激が内臓の調整に関わる、という見方ですね。

もうひとつは、迷走神経を介するルートです。

迷走神経は、副交感神経の中心的な神経です。心臓や胃腸など、いろいろな臓器の働きに深く関わっています。

ある種の鍼刺激は、この迷走神経系を通じて脳幹に影響し、副交感神経を活性化する可能性があると考えられています。

だから鍼を受けたあとに、眠くなるとか、ほっとするとか、胃腸が動き出す感じがするとか、そういう変化が起こることがあるんですね。

6、心拍変動、HRVから見えること

こうした自律神経の変化を、客観的に見ようとするときに使われるのが、HRV、心拍変動です。

これは心臓の拍動の細かなゆらぎを見るものです。

一般に、副交感神経がしっかり働いているときには、心拍のゆらぎが豊かになります。

逆に、ストレスで張りつめていると、ゆらぎが少なくなることがあります。

鍼の研究では、施術後に副交感神経の働きを反映する成分が上がる、つまり休める体のほうへ変化することが報告されています。

ここで大事なのは、刺激は強ければいいわけではない、ということです。

深ければ効く。強ければ効く。たくさん刺せば効く。そう単純ではありません。

むしろ、体が受け取りやすい刺激かどうか、どの層に、どれくらいの強さで、どれだけ正確に届いたか、そこが大事です。

黒野先生が研究された筋膜上圧刺激も、まさにそういう考え方です。浅く、やさしく、でも的確に。その刺激が、副交感神経系に影響することが示されてきた。これは、臨床の感覚と、現代のデータがつながる、とても大切な部分だと思います。

7、ストレスとの関係

もうひとつ大事なのが、ストレスとの関係です。

慢性的なストレスが続くと、脳と副腎が関わるストレス反応の仕組みが、ずっと働きっぱなしになります。

すると、コルチゾールというストレスホルモンが高い状態が続いて、眠りが浅い、疲れが取れない、イライラしやすい、胃腸の調子が悪い、痛みに敏感になる、といったことが起こりやすくなります。

慢性的な痛みのある方が、不眠や不安感、疲労感も一緒に抱えていることが多いのは、こうした背景とも関係があります。

鍼は、痛い場所だけを見るのではなく、こうした全身の過緊張そのものに働きかける可能性があります。

だから患者さんが、「痛みだけじゃなくて、なんだか全体が楽になった」とおっしゃることがあるんですね。

8、経絡とファシアは関係するのか

ここで、東洋医学に関心のある方が気になる話に進みます。経絡とファシアは関係するのか。これはとても面白いテーマです。

もちろん、経絡をそのままファシアとイコールで結ぶ、というほど単純ではありません。経絡というのは、解剖学的な一本の線だけではなくて、機能や反応やつながりも含んだ概念です。

ただ近年、経絡の走り方と、筋膜の連続したラインとがよく似ているのではないか、という指摘が出てきています。

よく知られているのが、アナトミートレインという考え方です。

筋膜のつながりをたどっていくと、足から体幹へ、腕から胸へ、そうした連続したラインが見えてきます。

それが、東洋医学の経絡の走行と重なるように見えることがあるんですね。

だから、昔の人が経験的に捉えていた全身のつながりを、現代の解剖学が別の言葉で見直している。そんなふうに考えると、とても興味深いと思います。

足のツボを使ったら腰が楽になる。手のツボを使ったら首が動きやすくなる。こうした現象を、東洋医学では経絡で説明してきました。

そして現代では、神経の反射、脳の調整、さらにファシアのネットワークという視点を重ねることで、その意味がより立体的に見えてくるわけです。

9、強い刺激ほど効くわけではない

ここで、ひとつ大事なことをお伝えしたいと思います。

それは、強い刺激ほど効くわけではないということです。

鍼というと、深く刺すほど効きそう、強く響かせるほど効きそう、そう思われることがあります。

でも実際には、体が受け取るのは刺激の強さだけではありません。

どの層に届いたのか。どんな方向で入ったのか。どれだけ正確だったのか。体にとって受け取りやすい刺激だったのか。そういうことのほうが、むしろ大事なことも多いです。

ファシアには感覚受容器が多くあります。そして自律神経との関わりも深い。

だとすれば、浅くてやさしい刺激でも、十分に意味のある変化が起きることは不思議ではありません。

私はここに、鍼のとても大事な一面があると思っています。

10、まとめ

最後に、今日のお話をまとめます。

ファシアは、全身の組織を包み、つなぎ、支えているネットワークです。そこには、力を伝える役割だけでなく、感覚を受け取り、体液の流れを支え、自律神経とも深く関わる働きがあります。

鍼がファシアに働きかけると、コラーゲン線維の巻き付きや、組織の滑りの変化などを通して、受容器に入力が入ります。

その刺激は、脊髄での調整、体内の鎮痛物質、脳からの痛みの抑制、全身の痛みの感じやすさの調整など、いくつものルートを通じて痛みをやわらげる方向にはたらきます。

さらに、ファシアや神経反射、迷走神経系を通して、自律神経のバランスにも影響し、眠りやすさ、呼吸のしやすさ、胃腸の働き、リラックスなどにもつながっていく可能性があります。

そして、東洋医学の経絡という考え方も、こうした全身のつながりの中で、現代の言葉で見直されつつあります。

結び

鍼は、ただ痛いところに針を刺すだけのものではありません。

皮膚、ファシア、神経、脊髄、脳、そして自律神経。一本の鍼は、そうしたいくつもの層にまたがりながら、体の調整のスイッチに触れていく。私はそんなふうに考えています。

もちろん、まだわかっていないこともたくさんあります。

でも、昔から積み重ねられてきた臨床の知恵が、現代の解剖学や生理学の視点で、少しずつ輪郭を持ちはじめている。そこに大きな意味があると思います。

もし今、慢性的な痛み、自律神経の乱れ、眠りの浅さ、なかなか取れない疲れでお悩みでしたら、体を部分ではなく、つながりとして見ていくことが、ひとつの助けになるかもしれません。

今回のお話が、鍼に対する理解を深めるきっかけになれば嬉しいです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.20更新

目がピクピクするのは何? ミオキミア・チック・顔面けいれんの違い

「目がピクピクする」
「まばたきが止まらない」
「顔が勝手に動く」

こうした症状は似ているため、同じものだと思われがちですが、実は原因の違う三つのタイプがあります。

それが、ミオキミア、チック、顔面けいれんです。

今日はこの三つの違いを、分かりやすくお話しします。

いちばん多い ミオキミア

まず一番多いのが、ミオキミアです。

これは、体の一部がピクピク動く症状です。

数秒から数分でおさまることが多いですが、長いと数週間続く場合もあります。

原因として多いのは、疲れ、睡眠不足、ストレス、パソコンなどによる目の使いすぎです。

神経の働きが一時的に不安定になり、筋肉が反応しやすくなることで起こると考えられています。

人前でピクピクすると、「周りの人に気づかれているのではないか」と不安になる方も多いと思います。

ですが安心してください。

本人にははっきり動いている感じがしても、筋肉のほんの一部が動いているだけなので、外見ではわかりにくいことが多いです。

多くの場合は、休養を取ると自然におさまります。

目のピクピクのほとんどはこのタイプです。

自分でも止めにくい チック

二つ目は、チックです。

これは、まばたきを繰り返す、顔をピクッと動かすといった動きが何度も起こる症状です。

子どもに多いですが、大人にも見られます。

特徴は、緊張したときに出やすい、リラックスすると減る、完全に止めることが難しい、という点です。

本人の意思とは関係なく起こるため、無理に止めようとするとかえって強くなることがあります。

またチックは、左右どちらにも出ることがあります。

注意が必要な 顔面けいれん

三つ目は、顔面けいれんです。

これは、目の周りだけでなく、頬や口元まで顔の片側が動く症状です。

チックとは違い、片側に起こるのが大きな特徴です。

ピクピクというより、ギュッと縮むような動きが繰り返し起こります。

原因として多いのは、顔面神経が血管に圧迫されて刺激を受けることだと考えられています。

このタイプは自然に治ることが少ないため、医療機関での診察が必要になることがあります。

見分け方の目安

簡単にまとめると、まぶたの一部だけがピクピクするならミオキミアの可能性が高いです。

まばたきや顔の動きが繰り返し出るなら、チックによるものかもしれません。

顔の片側がギュッと動くようなら、顔面けいれんの可能性があります。

心配しすぎなくて大丈夫

目のピクピクの多くは、疲れによるミオキミアです。

しっかり休むことが大切です。

鍼治療で緊張がゆるむことで、気にならなくなる方もいらっしゃいます。

ただし、症状が長く続く場合や、顔の広い範囲が動く場合は、念のため専門医を受診してください。

顔のピクピクは、体からの「少し休んでね」というサインかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.15更新

もし、たった一つの原則であらゆる虚実を整えられるとしたら
あなたは知りたくありませんか。

東洋医学の古典、難経。
その中でも、臨床家の心を最も震わせる章があります。
それが、第六十九難です。

今日はこの六十九難を、臨床で使える形にまとめてお話しします。

まず条文の出だしは、こうです。

虚するものは、これを補う。
実するものは、これを瀉す。
虚でも実でもないときは、経をもってこれを取る。

これはどういう意味か。

六十九難は、鍼灸の世界で有名な虚実補瀉を
治療手順まで含めて、体系的に述べた章なんですね

ここからがポイントです

六十九難の骨子は、大きく四つです

一つ目。虚は補う、実は瀉す。
まず大原則。

二つ目。その補い方、瀉し方にはルールがある。
虚するものは、その母を補う。
実するものは、その子を瀉す。
これが母子補瀉です。

つまり、五行の相生関係を使って、どこを補うか、どこを瀉すかを決めるということです。

イメージしやすく言うと、
子が弱っていたら、母の力を足して立て直す。
母が強すぎて張っているなら、子のほうへ流して抜く。
そんな考え方です。

三つ目。補瀉の順番です。
当に先づ之を補って、
然して後に之を瀉すべし。
つまり、先に補ってから、後で瀉す。
先補後瀉です。

なぜ順番が大事かというと、
虚があるのに瀉しから入ると、正気まで削ってしまう危険があるからです。

まず土台を守り、整えてから、余分な実を抜く。
この姿勢が、六十九難の治療観です。

四つ目。虚でも実でもないとき。
不実不虚のときは、経をもって取る。
これは、正経自病。
つまり他の邪が入ってきたというより、
その経そのものが自分で乱れて病を起こしている状態だ、という捉え方です。

だから、その場合は、他経をあれこれ動かすより、
自経から取穴して調える。
これが「けいをもってこれをとる」です。

ここまでが、六十九難の基本構造です。

では臨床では、どう使うのか。

六十九難は、五行と経絡、そして選穴を結びつけます。
特に、五兪穴を使って、母子関係で補瀉を組むという運用が、後世で整理されてきました。

たとえば、肝の虚を考えたとき。
肝は木。母は水。つまり腎です。
そこで母を補う、という発想になります。

実のほうなら逆です。
たとえば木が実なら、その子である火へ流して抜く、というように、
「実すれば子を瀉す」という操作で、余りをさばく方向を作ります。

この流れが身につくと、
治療はぐっと静かに、そして確実になります。

原則は、難しくありません。
しかし、深い。
だからこそ、今もなお
多くの臨床家の心を震わせ続けているのです。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.11更新

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投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.11更新

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2026.04.11更新

 

もし、たった一つの原則で
体のバランスを整えることができるとしたら、
知りたくありませんか。

実は、東洋医学には
それに近い考え方が、二千年近く前から残されています。

その古典が
東洋医学の重要な書物
「難経」です。

そして、その中でも
鍼灸師が特に大切にしてきた章があります。

それが
第六十九難です。

今日は、この六十九難を
専門的な知識がなくても分かるように
できるだけシンプルにお話しします。

まず、六十九難の基本になる言葉があります。

虚するものは、これを補う。
実するものは、これを瀉す。
虚でも実でもないときは、経をもってこれを取る。

少し難しい言葉ですが、
意味はとてもシンプルです。

足りないものは補う。
多すぎるものは減らす。

まずは、この大原則です。

体の不調の多くは、
エネルギーが不足しているか、
逆に滞って余っているか、
このどちらかで説明できると
東洋医学では考えます。

では、
どうやって補ったり減らしたりするのでしょうか。

ここで出てくるのが
五行という考え方です。

五行とは、
木火土金水という
自然のバランスの関係を表したものです。

この五つは、
親子のような関係でつながっています。

例えば
木は火を生みます。

つまり
木が母、火が子です。

ここから生まれたのが
母子補瀉という考え方です。

もし、子が弱っていたら
母を助ければ、子も元気になります。

反対に
あるものが強すぎるときは
その子の方向へエネルギーを流して
余りを抜くようにします。

これが
「虚するものは母を補い
実するものは子を瀉す」
という原則です。

もう一つ
六十九難には、とても大事な考え方があります。

それが
治療の順番です。

先に補って、
あとから瀉す。

これを
先補後瀉といいます。

なぜ順番が大切かというと、
もし体が弱っているのに
いきなり減らす治療をしてしまうと、
本来必要な力まで
削ってしまう可能性があるからです。

まず体を支え、
それから余分なものを整える。

この順番が大切だと
六十九難は教えています。

では最後に、
もう一つのケースです。

虚でもなく、
実でもないとき。

つまり
不足でも過剰でもないのに
その経絡だけが乱れている場合です。

このときは
その経絡そのものを整えます。

これを
「経をもってこれを取る」
といいます。

つまり
原因のある経絡から
直接ツボを取るという考え方です。

このように六十九難は

足りなければ補う
多ければ減らす

そして
母子関係を使って調整する。

さらに
治療には順番がある。

こうした原則を
とてもシンプルに
しかし深くまとめた章なのです。

この考え方が身についてくると、
治療はとても静かで
無理のないものになっていきます。

古典の言葉は短いですが、
そこには
臨床の知恵がぎっしり詰まっています。

だからこそ
二千年近くたった今でも
多くの臨床家の心を
震わせ続けているのです。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.09更新

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何卒、よろしくお願い申し上げます。

かお2

 

 

投稿者: 井島鍼灸院

2026.04.08更新

「目の前に黒い点が見える」
「糸くずみたいな線が、ふわっと動く」
「まばたきしても消えない」

それ、もしかすると
あなたは自分の目の中を見ているのかもしれません。

これが、飛蚊症です。

■飛蚊症ってなに?

目の奥には硝子体という透明なゼリーがあります。

生まれてからほとんど入れ替わらないゼリーです。

年齢とともに、このゼリーは少しずつ変化します。
ゆるんだり、繊維が束になったりする。

その小さな濁りが
目の奥のスクリーン「網膜」に影を落とします。

ゴミでも虫でもない。
自分の目の中の影。

ちょっと不思議ですよね。

■なぜ見えたり見えなかったりするの?

飛蚊症は「影」です。

白い壁や青空ではくっきり見える。
暗い場所では目立ちにくい。

目を動かすと一緒に動き、
止めるとゆっくり漂う。

まるで水の中に浮かぶ小さなクラゲのように。

そしてもう一つ。

脳がこの影は重要ではないと判断すると
だんだん意識に上げなくなります。

消えたのではなく気にならなくなった。

■「鍼をしたら治った」と感じるのはなぜ?

臨床をしていると、

「鍼をしてから気にならなくなりました」
という声があります。

では濁りが消えたのでしょうか?

実はそう単純ではありません。

飛蚊症の多くは硝子体の構造の変化による影です。

ゼリーの中にできた繊維の束や濁りは、
透明な状態に戻ることは多くありません。

つまり、影そのものが消えることは少ないのです。

それでも治ったと感じる理由には
いくつかの可能性があります。

いち、緊張がゆるむ
不安が強いとき、
体は警戒モードになります。

すると視覚も敏感になり、
小さな影を強く意識しやすくなります。

鍼で全身がゆるむと、
この過敏さが落ち着きます。

に、脳の慣れが進む
もう一つは、時間の力。

脳は変わらない情報を
少しずつ背景へ追いやります。

最初は気になっていた影も、
繰り返し見ているうちに
無視できるものへと分類されます。

つまり
消えたというより気にならなくなった。

でも、
気にならないというのは
生活の中ではとても大きな変化です。

■ ほっといていいの?

多くの方が一番気になるのは、ここだと思います。

結論から言うと

多くの飛蚊症は、それ自体が視力を失わせる病気ではありません。
加齢による変化で起こることがほとんどで、
時間とともに気にならなくなる方も多い症状です。

■見逃してはいけないサイン

ただし飛蚊症に別の病気が隠れている場合があります。

キーワードは「急な変化」

  • 急に数が増えた
  • 雷のような光が走る
  • 視界がカーテンのように欠ける
  • 急に視力が落ちた

この場合は、まず眼科へ

■まとめ

飛蚊症は
目の中のゼリーの影を見ている状態。

多くは自然な変化です。

安心すること。
変化を見逃さないこと。

それが飛蚊症との上手な付き合い方です。

投稿者: 井島鍼灸院

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