もし、たった一つの原則であらゆる虚実を整えられるとしたら
あなたは知りたくありませんか。
東洋医学の古典、難経。
その中でも、臨床家の心を最も震わせる章があります。
それが、第六十九難です。
今日はこの六十九難を、臨床で使える形にまとめてお話しします。
まず条文の出だしは、こうです。
虚するものは、これを補う。
実するものは、これを瀉す。
虚でも実でもないときは、経をもってこれを取る。
これはどういう意味か。
六十九難は、鍼灸の世界で有名な虚実補瀉を
治療手順まで含めて、体系的に述べた章なんですね
ここからがポイントです
六十九難の骨子は、大きく四つです
一つ目。虚は補う、実は瀉す。
まず大原則。
二つ目。その補い方、瀉し方にはルールがある。
虚するものは、その母を補う。
実するものは、その子を瀉す。
これが母子補瀉です。
つまり、五行の相生関係を使って、どこを補うか、どこを瀉すかを決めるということです。
イメージしやすく言うと、
子が弱っていたら、母の力を足して立て直す。
母が強すぎて張っているなら、子のほうへ流して抜く。
そんな考え方です。
三つ目。補瀉の順番です。
当に先づ之を補って、
然して後に之を瀉すべし。
つまり、先に補ってから、後で瀉す。
先補後瀉です。
なぜ順番が大事かというと、
虚があるのに瀉しから入ると、正気まで削ってしまう危険があるからです。
まず土台を守り、整えてから、余分な実を抜く。
この姿勢が、六十九難の治療観です。
四つ目。虚でも実でもないとき。
不実不虚のときは、経をもって取る。
これは、正経自病。
つまり他の邪が入ってきたというより、
その経そのものが自分で乱れて病を起こしている状態だ、という捉え方です。
だから、その場合は、他経をあれこれ動かすより、
自経から取穴して調える。
これが「けいをもってこれをとる」です。
ここまでが、六十九難の基本構造です。
では臨床では、どう使うのか。
六十九難は、五行と経絡、そして選穴を結びつけます。
特に、五兪穴を使って、母子関係で補瀉を組むという運用が、後世で整理されてきました。
たとえば、肝の虚を考えたとき。
肝は木。母は水。つまり腎です。
そこで母を補う、という発想になります。
実のほうなら逆です。
たとえば木が実なら、その子である火へ流して抜く、というように、
「実すれば子を瀉す」という操作で、余りをさばく方向を作ります。
この流れが身につくと、
治療はぐっと静かに、そして確実になります。
原則は、難しくありません。
しかし、深い。
だからこそ、今もなお
多くの臨床家の心を震わせ続けているのです。











