今日は、耳の後ろにあるとても大切なツボ、翳風をご紹介します。
翳風は「手の少陽三焦経」という経絡に属していて、耳や顔のトラブルと深く関わるツボです。
三焦経は、手の薬指からスタートします。
そこから手の甲を通り、前腕、肘、上腕、肩を上がり、首や耳の後ろまで巡ります。
耳の後ろの翳風穴付近では、枝分かれしてさらに耳や顔に広がります。
一部の枝は耳の中や耳の前、頬、目尻まで流れていくので、耳や顔の症状と密接につながっているんです。
場所は耳たぶの後ろ、耳の後ろにある骨「乳様突起」の下のくぼみです。
簡単に言うと、耳の付け根の裏側で、耳たぶのすぐ後ろの小さなくぼみ。
下顎の骨と耳の骨の間にあるんです。
この辺りには、耳や顔の神経や血管がいっぱい通っていて、
浅いところには耳下腺や神経、深いところには顔面神経の大事な本幹が通っています。
だから、耳や顔の症状とめちゃくちゃ関係が深いんです。
じゃあ、翳風穴ってどうやって見つけるの!
コツは簡単。軽く口を開けてもらうと下顎の角がはっきりします。
耳たぶの裏に指をあてて、自然に指が落ちる小さなくぼみを探してみてください。
押したときに「響く!」って感じるところが翳風穴です。
名前の由来も面白いんです。
まず「えい」という字。
これはおおう、隠す、しまいこむという意味があります。
翳風の場所は、耳たぶの裏の小さなくぼみ。
まさに耳たぶに隠れるようにあるツボなんです。
さらに翳には、目の星・ くもりという意味もあります。
そして「ふう」。
これは、いわゆる吹く風や、外から体に入りこむ(ふうじゃ)や、風にまつわる病を指します。
有名な「風池」などと同じく、風のトラブルを治す力を持つツボという意味が込められているんです。
つまり翳風とは――
耳たぶの陰に隠れて、風も当らぬ凹みにあるツボ。外からの風邪や風の病から体を守るツボ。
さらに眼病に効果のある経穴の意味も込められているのかもしれません。
名前のひとつひとつに、東洋医学の知恵がぎゅっと詰まっていると思うと、ちょっとワクワクしませんか?
効果はとても幅広く、
実はこのツボ、耳や目のトラブルにとても縁が深いポイントなんです。
例えば――
耳の腫れや痛み、耳鳴り、聞こえにくさ。
さらに、角膜のにごりや結膜炎、眼の痛みといった眼の病気にも使われてきました。
それだけではありません。
顔の神経が麻痺してうまく動かない顔面神経麻痺や、三叉神経痛のような顔の激しい痛み。
さらには、顎関節のトラブル、中風(いわゆる脳卒中後の症状)で言葉が出にくい時や、
あごの筋肉がけいれんするような状態にも用いられてきたんです。
さらには頭痛やめまい、肩こり、自律神経の乱れにも働きかけます。
そしてうれしいことに、顔のむくみやくすみ改善、リフトアップなど美容効果まで期待できるんです。
耳の後ろの小さなツボが、耳・目・顔・そして言葉や筋肉まで広く関わっているなんて、驚きですよね。
ツボには、身体をつなぐ不思議な力が秘められています。
翳風は、ぜひ覚えておきたいツボです。