私の師匠である黒野保三先生は、その著書 長生き健康「鍼」の中で、次のように述べられています。
真に良き鍼灸師となるには技術だけでは十分ではありません。鍼治療を行うには、東洋の自然思想と東洋哲学の考え方に基づく人間性の豊かさが要求されるのです。
そのような人間性を養うには3つの要素が必要だと私は考えます。
1.自然を尊び、人と自然を1つのものとしてとらえ、命の崇高さを理解できる精神、ある種の宗教的感性を養うこと。
2.人間学(情意学)を学び、人生経験に基づく人生哲学を持つと同時に、実証医学としての鍼灸医学の研究や、心と身体を総合的に捉えていく全人的診療を行うことのできる自然科学哲学者であること。
3.患者の気持ちを受け入れ、病気・生活・家族・社会活動・家庭の経済に至るまで、患者に適切な指導ができる心理学者であること。
このことを肝に銘じて、精進していきたいと思います。