顔の不調のカギは「交差点」にあった ― 下関という重要ポイント
こんにちは。井島鍼灸院です。
普段、治療の現場に立っていると、
顔面神経麻痺・三叉神経痛・顎関節症などに悩まされている方に数多く出会います。
そんな時、必ずチェックする「重要なポイント」が存在します。
そこは顔面神経や三叉神経が交差し、
咀嚼に関わる強力な筋肉が密集する、いわば「顔の交差点」です。
今回は、私たち鍼灸師が治療において重要視しているツボ、下関(げかん)について、
解剖学的な視点からその秘密をお話しします。
なぜここに「鍼」による治療が必要なのか。
その理由がきっとお分かりいただけるはずです。
◆下関の場所と、実はとても特殊な構造
まずは、場所の確認です。
「下関」は、耳の穴の前方、頬骨のアーチの下縁に位置します。
一見、簡単に見つかりそうな場所ですが、
実は体の中でも非常にダイナミックな動きをする特殊なエリアです。
口を閉じている時は深いくぼみがありますが、
口を大きく開けてみてください。
下顎頭という骨がスライドしてきて、
この穴を内側から塞いでしまいます。
つまりここは、骨と骨がすれ違う非常に狭い隙間なのです。
このさらに深部には、
顎を横に動かすための「外側翼突筋」などのインナーマッスルや、
感覚を司る三叉神経の第3枝が通っています。
表面からの指の圧力では、骨に阻まれて届かない場所。
そこに潜む「深部の緊張」や「神経の興奮」に対して、
ミリ単位の精度でアプローチできるのが、
私たちが使う「鍼」という技術なのです。
◆「下関」という名前に込められた意味
次に、「下関」という名前はどういう意味なのでしょうか?
まず「下」という字。
これは低いところや、足・腰より下の部分という意味を持つ言葉です。
そしてもうひとつの「関」。
こちらは、昔の門にかけるかんぬきを表す字です。
「木の棒を横にして門を閉じる」そんな情景が込められています。
これを体に当てはめると、
顔の横にある、あのカーブした骨――頬骨が、
まるで門のかんぬきのように横たわっている。
その頬骨のアーチの下に位置するツボ、
それが「下関」なんですね。
◆胃と顎がつながる? 東洋医学の視点
そして興味深いのは、ここが
「足の陽明胃経」という経絡に属していることです。
名前の通り、「胃」、つまり消化器系につながるラインです。
ストレスで胃がキリキリする時に、
無意識に奥歯を食いしばってしまう経験はありませんか?
胃経のトラブルは、この「下関」に、
硬さや反応として現れます。
逆に言えば、このツボを適切に治療することで、
顎局所だけでなく、
全身の自律神経や消化機能のバランスさえも整えていく。
それが、東洋医学の全体観です。
◆下関に鍼をすると、何が起こるのか
では、ここに鍼を打つと、体の中で何が起きるのでしょうか。
もっとも期待できるのは、
顎関節症や三叉神経痛、
そして顔面神経麻痺へのアプローチです。
顔面部は非常にデリケートで、
神経や血管が複雑に入り組んだ構造をしています。
だからこそ、自己判断での強いマッサージは避け、
解剖学を熟知した私たちプロフェッショナルに、
ぜひお任せください。
「下関」への一本の鍼が、
あなたの表情を、そして生活の質を、
劇的に変えるかもしれません。
顎の違和感やお顔の症状でお悩みの方は、
一度、鍼灸治療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。











