
なぜ鍼治療は、自律神経や免疫に働きかけるのか?
「鍼って、どうして体にいいの?」
患者さんから、よくいただく質問です。
実は鍼治療は、感覚や反射といった 人の体にもともと備わっている仕組みを利用した、 とても理にかなった治療法です。
ここでは、鍼刺激が自律神経や免疫にどのように影響するのかを、 できるだけわかりやすくご紹介します。
鍼刺激を感じ取る「体のセンサー」
皮膚や筋肉には、 ポリモーダル受容器という感覚センサーが無数に存在します。
これは、刺激・圧・温度・痛みなどをまとめて感知する、 いわば体の見張り役です。
鍼が入ると、このセンサーが反応し、 刺激の情報は神経を通って脊髄、そして脳へと伝わります。
自律神経が整う仕組み
① 反射による自然な調整
運動をすると、自然に心拍や呼吸が変化します。 これは自律神経の「反射」によるものです。
鍼刺激も同様に、 自律神経の反射スイッチを入れる刺激として働き、
- 内臓の働き
- 血流
- 体温調節
といった機能が、無理なく調整されていきます。
② 離れた場所にも影響が及ぶ
実験では、 手足のツボに鍼をすると、腹部の皮膚温度が上昇する ことが確認されています。
これは、鍼刺激が刺した場所だけでなく、 自律神経を通じて体の奥や離れた部位にも作用することを示しています。
免疫力が高まる仕組み
① 免疫を調整する物質の放出
鍼刺激により、
- サブスタンスP(免疫を活性化)
- CGRP(過剰反応を抑制)
といった神経由来の物質が放出されます。
これにより鍼治療は、 免疫を強くしすぎず、弱くもしない 絶妙なバランス調整を行います。
② 白血球の活性化
鍼によるごく小さな刺激をきっかけに、 ヒスタミンやセロトニンが放出され、
- 好中球
- マクロファージ
などの白血球が活性化し、 体を守る働きが高まります。
③ 全身の免疫へ波及
局所で起きた反応はリンパ管を通じて全身へ広がります。
研究では、
- リンパ球の割合の増加
- ウイルスやがん細胞を攻撃するNK細胞の活性上昇
といった変化も確認されています。
脳が司る「統合的コントロール」
鍼刺激が脳に届くと、 βエンドルフィンやドーパミンといった 心身を整える物質が分泌されます。
これらが、
- 自律神経
- 免疫
- 炎症反応
を同時に調整する 統合的なコントロール機構を活性化させます。
鍼治療は、体にとって安全な
「小さな負荷(警告信号)」を与える治療です。
その刺激によって、眠っていた自然治癒力や 生体防御機構が呼び覚まされます。
無理やり治すのではなく、
本来の回復力を引き出す。
それが、現代医学の視点から見た鍼治療です。











