
いつもご利用いただき、心より感謝しております。
年末は12月30日(火)まで営業します。
12/31から1/4までお正月休み
新年は1月5日(月)から元気いっぱいでスタートいたします。どうぞよろしくお願いいたします!
2025.11.26更新

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投稿者:
2025.11.26更新
こんにちは、井島鍼灸院です。
古の日本に、いまなお輝きを放つ健康長寿の最強メソッドが記されていたのを知っていますか?
今日は、今からおよそ三百年前。
江戸時代に書かれた、日本最古の健康本とも言われる『養生訓』をご紹介します。
著者は、儒学者であり、本草学者でもあった貝原益軒先生。
なんと八十五歳まで、元気に生きた人物です。
まさに健康長寿の達人でした。
養生訓は、健康と長寿のための生活ガイドブック。
全八巻にわたって、体だけでなく、心のあり方にも深く触れています。
たとえば――
どの章も、今聞いても驚くほど現代的な内容です。
益軒先生はこう言っています。
「自分の身体は父母から授かり、自分の子孫へと受け継ぐもの。だから慎み、感謝して使うべきだ」と。
つまり、健康とは“自分を大切に扱う生き方”そのものなんです。
欲望のままに生きるのではなく、節度を守り、感謝を忘れず。
天命を受け入れながら、穏やかに生きること。
具体的には、
バランスのとれた食事、良質な睡眠、適度な運動、
そして心の安定(ストレスを避け、喜びを持つこと)が重要とされます。
その積み重ねこそが、長寿につながる。
そう説いています。
実はこの教え、今の私たちにもピッタリなんです。
まるで現代の健康法や予防医学そのものですね。
冷えを避けて体を温める。
適度に動き、怠けすぎない。
まさに、鍼灸の考え方とも深く通じています。
当時の平均寿命は四十歳にも満たなかった時代。
そんな中で、貝原益軒先生は八十五歳まで、寝たきりにもならず、元気に生涯を終えました。
その秘密こそ、養生訓に書かれた、心と体を整える生活の知恵だったのです。
養生訓は、ただの古い健康書ではありません。
日々の食事や休息、そして心の持ち方を見直すための、
生き方の教科書なんです。
三百年前から受け継がれる、日本の知恵。
忙しい現代だからこそ、ゆっくりと、
自分の体と心に、耳を傾けてみませんか?
「穏やかに、感謝とともに生きる」――
それが、貝原益軒先生が伝えた真の養生です。
投稿者:
2025.11.23更新
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# 朝、最初の一歩がズキッと痛い…その原因は?
「朝、最初の一歩がズキッと痛い」
「長く立っているとかかとがジンジンする」
そんな足の裏の痛みはありませんか?
その原因の多くは **足底腱膜** という場所にあります。
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## 足底腱膜とは?
足底腱膜は、かかとから足指のつけ根までピンと張っている、強くて分厚い膜。
歩くたびにバネのように伸び縮みしながら衝撃を吸収し、**土踏まずの形を保つ重要な組織** です。
ところが、長時間の立ち仕事や運動で負担がかかりすぎると、
かかとや親指のつけ根のあたりに痛みが出てしまいます。
これが **「足底腱膜炎」** です。
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# 最新研究でわかった!本当の原因とは?
これまで足底腱膜炎といえば
「炎症で腱膜が硬くなる」と考えられてきました。
しかし最新の超音波検査を使った研究では、なんと **逆のこと** が分かってきたのです。
### ▶ 実際には「硬くなる」のではなく、柔らかくなる
つまり、腱膜の **軟化** が起こっているのです。
この研究では「**超音波剪断波エラストグラフィー**」という特殊な装置を使用し、
足底腱膜の硬さを測定しました。
その結果、足底腱膜炎の方では **かかとの骨に付着する部分の弾性が健康な人より低下** していることが確認されました。
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## 朝の第一歩が痛い理由
足裏の組織が柔らかく(プヨプヨに)なって衝撃を吸収できず、
**かかとの骨に直接負荷がかかる**
これが「朝の第一歩で痛い」症状の正体です。
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# なぜ腱膜が軟化するのか?
足底腱膜は歩くたびに衝撃を吸収するため、かかとと足指のつけ根の間でピンと張り、クッションのように働きます。
しかし繰り返しの負荷によって、腱膜の中に **微小損傷** が発生します。
最初は自然に修復されますが、足底腱膜は血流が少ないため回復が追いつきません。
そのまま損傷が積み重なると、
* コラーゲン線維が乱れる
* 強さやしなやかさが失われる
* 組織が変性し、弾力がなくなる(軟化)
という状態に陥ります。
さらに、軟化した腱膜では
**痛みのもとになる物質が過剰に出てしまうこと** も確認されています。
つまり…
### 「炎症で腫れて痛い」のではなく
### 「弱った腱膜が負担に耐えられない」
という状態です。
イメージするなら、
**使いすぎて伸びきってしまったゴムのような状態**。
これが足底腱膜炎の痛みの本質です。
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# では、どうすれば改善できるのか?
大切なのは、
**弱くなった腱膜をどう元気にするか**。
鍼治療では、損傷した腱膜付近の血流を改善し、修復を促します。
組織が再生すれば弾力と強さを取り戻し、
痛みの原因そのものが解消されていきます。
根本から **しなやかで強い足裏** を取り戻すアプローチです。
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## 朝の一歩が軽くなる未来へ
朝の一歩が軽くなる。
歩くことがまた楽しくなる。
そんな未来をあなたの足にも取り戻しましょう。
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# 井島鍼灸院の施術
井島鍼灸院では、
一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、
つらい症状の **根本改善** を目指します。
足底腱膜炎でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
投稿者:
2025.11.19更新
現場で最も選ばれているツボ「合谷」|井島鍼灸院
こんにちは、井島鍼灸院です。
今日は、「現場で最も選ばれているツボ」、合谷をご紹介します。
合谷は、「手の陽明大腸経」という経絡に属しています。
この経絡は、人さし指の先から始まり、腕・肩・首を通って、顔、そして鼻までつながっています。
つまり、頭痛・歯痛・鼻づまり・目の疲れなど、顔や頭のトラブルにとても関係が深いんです。
さらに、大腸経は「肺経」とペアになって働くため、呼吸や消化、排泄といった体の基本的な働きにも影響を与えます。
場所は、手の甲側。
親指と人さし指をグッと広げたときにできるV字のくぼみ。
そのちょうど真ん中あたり――やや人さし指寄りにあります。
軽く押すと、ズーンと響く感じがある場所。
そこが「合谷」です。
まず、「合」という字。
これは、「あう」「交わる」といった意味を持っています。
古い文字では、三方向から人が集まって意見を交わす、つまり「心が通じ合う」「ひとつになる」というイメージを表していました。
また、“和らぐ”とか“応える”という意味も含まれていて、まるで、バラバラだったエネルギーが一つにまとまるような――そんな「調和の象徴」でもあるんです。
次に、「谷」。
この字は、山と山のあいだにある“くぼみ”を意味します。
そこには、水が湧き出て流れ込み、やがて川へとつながっていく――まさに「気や血が流れる道」。
古典では「肉の大いに会するところを谷という」とあり、つまり“体の中で、気血が集まる場所”ということ。
この2つの字を合わせた「合谷」。
「合」は“交わり、まとまる”
「谷」は“くぼみ、流れ、集まる”
つまり――
気と血が交わり、調和するくぼみ。
そして、親指と人さし指の骨が交わるくぼみにあります。
まさに名前の通りの場所なんです。
ちょっとロマンを感じませんか?
合谷は、体のバランスを整え、発汗をうながすツボです。
たとえば、
「風邪のひきはじめでゾクゾクする」
そんなとき、合谷を刺激すると、体が自然に汗をかき、熱や寒気を調整してくれます。
このツボは、頭や顔まわりの血流を整えるのが得意です。
たとえば、頭痛、顔のむくみ、目の充血、目の疲れやかすみ、耳鳴りや難聴、歯の痛み、のどの痛み、こうした症状にも、合谷が活躍します。
そして内臓の不調にも。
たとえば、お腹の痛みや下痢、月経が止まったり不順になったりしたときにも、体の内側の巡りを助けてくれるんです。
さらに、肩こりや腕の痛み、背中のこわばりにも効果的。
だからこそ、このツボは「万能のツボ」と呼ばれ、痛みをやわらげ、心を落ち着け、全身を整える力を持っているんですね。
実際の治療でも、合谷はとてもよく使われるツボです。
手のひらのすぐ近くに、これほど全身に影響するツボがあるなんて――ちょっとワクワクしませんか?
投稿者:
2025.11.14更新
高齢者の慢性腰痛に鍼治療が効果的|NIHの大規模研究より
慢性腰痛は、高齢者の生活を大きく制限するつらい症状です。薬に頼ることに不安を感じる方や、長く続く痛みに悩む方へ、最新の研究結果をやさしくご紹介します。
慢性腰痛は世界中で日常生活の妨げとなる代表的な問題です。特に高齢者では、3人に1人以上が慢性腰痛を抱えていると報告されています。従来の治療(痛み止め、リハビリ、注射など)は効果が限定的で、副作用や依存性の心配もあります。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金支援による大規模研究「Back In Action」により、鍼治療が高齢者の慢性腰痛に与える効果が長期的に検討されました。研究は実際の臨床現場に近い形で行われ、信頼性の高いデータが得られています。
研究には65歳以上の慢性腰痛患者800名が参加。参加者は以下の3グループに分けられ、3か月・6か月・12か月のタイミングで評価されました。
結果は明確でした。鍼治療を受けたグループは、6か月・12か月の時点で次の点が改善しています。
薬のように一時的に効くのではなく、じわりと持続的に効果が現れる傾向が見られました。
研究期間中、重大な副作用はほとんど報告されませんでした。鍼治療は侵襲性が低く、複数の持病を抱える高齢者でも比較的安全に受けられる点が大きな利点です。
これまでの多くの鍼研究は若年層を中心に行われてきました。65歳以上に特化した大規模試験は珍しく、今回の結果は「現実の臨床現場で役立つ」信頼できる証拠として重要です。
研究者らは、鍼灸師が公的保険(メディケア)に直接請求できるようになれば、治療へのアクセスが大幅に改善すると指摘しています。日本でも高齢化が進む中で、薬に頼りすぎない安全な治療法として鍼の役割が注目されるでしょう。
今回の研究のポイントをまとめます。
慢性腰痛でお悩みの方は、薬に頼りすぎず、体にやさしい治療法も検討してみてください。当院でも鍼治療のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
投稿者:
2025.11.12更新
今日は、逆子の治療でよく使われるツボ──至陰をご紹介します。
この動画を見ていただくと、
この3つがわかります。ぜひ最後までご覧ください。
人の体には、「経絡(けいらく)」というエネルギーの通り道があります。
その中でも全身をめぐる膀胱経(ぼうこうけい)という流れがあり、
その終点が、この「至陰」です。
ここで陽のエネルギーが終わり、次の腎経(じんけい)という陰のエネルギーへと切り替わります。
つまり、体の中でも陰と陽が入れ替わる境目。
それが、至陰なのです。
足の小指の爪の外側の角。
爪の生え際から、ほんの2ミリほど外側にあります。
「至」という字には、「届く」「極める」という意味があります。
つまり、流れが目的地に到達するその終点をあらわしています。
一方の「陰」は、地の気──つまり大地のエネルギーを象徴します。
そしてこの世界のバランスを保つ、陰陽二つの力のうちのひとつです。
では「至陰」とは?
「至」は行き着く、「陰」は少陰(腎経)のこと。
膀胱経のエネルギーが体の末端であるこのツボに到達し、
ここから陰のエネルギーである腎経へとつながっていく。
まさに──
エネルギーのバトンが渡される場所。
それが「至陰」なんです。
至陰は、昔から逆子の治療で有名なツボです。
妊娠30週から34週ごろにお灸をして、
赤ちゃんが自然と頭を下に向けるよう促す方法として使われてきました。
今のところ、すべてのメカニズムが完全に解明されたわけではありません。
しかし、至陰への刺激によって
といった変化が起こり、赤ちゃんが自然に回転しやすい状態になることが分かってきています。
また東洋医学では、至陰は「膀胱経」という全身を巡る経絡の終点にあります。
この経絡は、子宮や生殖器のバランスを整えるルートでもあります。
その流れを整えることで「気」と「血」の巡りが良くなり、
赤ちゃんが自然と動きやすい状態になると考えられています。
このツボの働きは、逆子の改善だけではありません。
至陰は体の巡りを整える力がとても強いツボです。
頭の熱を下げ、腰から下の冷えをあたため、
体の内と外、上と下をつなぐ重要なポイント。
風邪、頭痛、腰痛、婦人科の不調まで──まさに全身を結ぶツボです。
冒頭の質問、「当院の逆子の改善率を上げるための工夫は?」にお答えします。
まず、お灸をする前に、赤ちゃんが回りやすい状態に整える癒やしの鍼を行います。
そのうえで、お灸の種類や回数、刺激の強さを何度も試しながら、
もっとも効果的な方法を見つけ出しました。
さらに、一人ひとりの体質やお腹の状態に合わせて、
細かく調整しながら施術を行っています。
その積み重ねの結果、
当院の逆子の改善率は90%以上となっています。
至陰は、体の巡りを正し、
お母さんと赤ちゃんの力を引き出す小さなスイッチ。
本当に頼りになるツボなんです。
投稿者:
2025.11.09更新
多くの人が一度は経験したことがある「寝違え」。
一般的には「変な寝姿勢のせい」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
朝起きたら首が動かない!後ろを振り向こうとしただけで「ズキッ」と痛い…ときには肩甲骨や背中まで痛みが広がったり、腕や指先がしびれることさえあります。じっとしていても違和感が続くことがあり、本当にツラい症状です。
朝起きて首が痛いときは、まず冷やして安静にすることが大切です。10分程度を目安に、つらくなったら中止しましょう。
痛みが出てから48時間を過ぎたあたりからは、逆に温めて血流を良くすることで回復が早まりやすくなります。
寝違えは血流・筋肉・姿勢・ストレス・生活習慣が複雑に絡み合って起こる現象です。そのため、日常生活や環境の工夫でしっかり予防できます。「寝違えなんてよくあること」と軽く見ず、体からのサインとして受け取ってあげましょう。
井島鍼灸院では、一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、つらい症状の根本改善を目指します。お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
投稿者:
2025.11.06更新
こんにちは、井島鍼灸院です。今日は、解剖学的にもわかりやすく、東洋医学的にも重要なツボ「曲池(きょくち)」をご紹介します。
曲池は「手の陽明大腸経」に属する経穴で、指先から腕、肩を通って顔や鼻までつながるラインの途中に位置しています。
肘を直角に曲げたとき、肘の外側にできるシワの端に小さなくぼみがあります。触れると「ここかな」とすぐにわかる場所です。
「曲池」という名前は、とてもわかりやすい意味を持っています。
肘を曲げたときにできるくぼみを指しているため、まさに名前そのままの位置です。
さらに東洋医学では、この「池」は単なるくぼみではなく、気や熱がたまる場所としても考えられてきました。肘という体の曲がり角にできた池が、エネルギーの集まるポイントとされたのです。
曲池は、古くから皮膚のトラブルに用いられてきました。
しかし、曲池の働きは皮膚に留まりません。東洋医学では全身に影響を与える重要なツボとして、次のような症状にも活用されます。
つまり、「体の曲がり角にある池」という名前の通り、全身のさまざまな流れを整える力を持つ、とても重要なツボなのです。
曲池は、解剖学的にわかりやすく、かつ東洋医学的にも重要なツボです。
身近な体の部位に、これだけ豊かな意味と機能が重ねられているのは、東洋医学の面白さの一つです。
井島鍼灸院では、ツボや鍼灸の知識をわかりやすくお伝えしています。
「元気になりたい」「東洋医学に興味がある」という方は、ぜひ鍼灸を生活に取り入れてみてください。
投稿者:
2025.11.02更新
体温のコントロールができない…
― 自律神経の乱れと鍼治療による改善症例 ―
暑い夏の日なのに、なぜか寒くて服を何枚も重ね着してしまう…。
急に汗が噴き出して、体温のコントロールが全然できない…。
病院で検査を受けても「原因がわからない」と言われてしまう…。
もし、あなたがそんなつらい症状でお困りなら、ぜひ今日のお話をお読みください。
師匠の症例から学んだ、体温調節異常の改善
私が修行時代に、師匠である黒野保三先生が治療された症例を学会で発表させていただきました。
今回はその記録をもとに、どのように症状が改善していったのかをご紹介します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/49/2/49_2_293/_pdf/-char/ja
患者さんのプロフィール
60代の男性。
製紙会社で営業をされていた、とても几帳面で真面目な方でした。
初診時のお話では、20年前に結核にかかり、治ってから体温調節に違和感を感じるようになったとのこと。
当時は仕事が忙しく、症状も軽かったためそのままにしていたそうです。
ところが、60歳で定年を迎え、生活が一変。
長年続けた仕事という「軸」を失ったことで、今まで気にならなかった症状が前面に出てきてしまいました。
定年という環境の変化が大きなストレスとなり、体温調節の乱れが悪化していったのです。
初診時の症状
真夏日でも「寒い」と感じる
腹巻き+服を4枚重ねてもまだ寒い
でも着込むと急に暑くなってドッと汗が出る
まるで体温のスイッチが壊れたようだと話されていました。
夜もさらに大変で、
布団をかけても背中がゾクゾクする
寝汗がひどく、背中にあせも
夜中に何度もトイレに起きて眠れない
さらに――
寒くなると肩甲骨の間がズキッと痛み、手足も冷たい。
食欲がなく、特に朝は食べられず、2年間で6キロ減。
そして何よりもつらかったのが、精神的な苦しみでした。
2年間で7~8件も病院を回られたそうですが、結果はすべて「原因不明」。
「自分の体に一体何が起きているんだろう…」という不安と恐怖、
そして、誰にも理解されない孤独感。
お話を通して、その苦しみが痛いほど伝わってきました。
自律神経と体温の関係
私たちの体温は、脳の「視床下部」という場所が自律神経を通じて全身に指令を出すことで保たれています。
自律神経は、血管・汗腺・筋肉・鳥肌・脂肪組織などを自動的にコントロールしており、
まさに“体の温度管理システム”です。
しかし、自律神経はストレスに非常に敏感。
心理的・社会的なストレスが強く影響します。
この患者さんの場合、定年という生活の変化がストレスとなり、
自律神経のバランスが崩れて体温調節ができなくなってしまったのです。
体温が乱れる → 不安が増す → さらに自律神経が乱れる
この悪循環をどこかで断ち切る必要がありました。
治療の方針
治療は急激な変化を狙わず、じっくり整える長期戦。
刺激は軽めにし、少しずつ効果を積み重ねていく方針を取りました。
使用したのは黒野式全身調整基本穴。
使用した主なツボ
中脘・期門・天枢・気海(お腹)
天柱・風池(首)
大杼・肩井(肩)
肺兪・厥陰兪・脾兪・腎兪・大腸兪(背中)
肩甲骨の痛みには**円皮鍼(貼るタイプの鍼)**を使用。
治療は週2回のペースで行いました。
さらに、毎日のセルフケアとして乾布摩擦をおすすめ。
皮膚刺激が自律神経を整える効果があるんです。
改善の経過
治療効果を「数字」で確認するため、体調の自己採点や基礎体温を記録しました。
「なんとなく良い気がする」ではなく、数字で変化を実感できるようにしたのです。
1週間後
体温調節の異常は変わらず。ただし「胃の調子が少し良くなった」。
1ヶ月後
寒さはまだ強いが、手足の冷えに変化が出始める。
1ヶ月半後
「手足が少し楽になってきた」と改善の兆し。
2ヶ月後
「体調が少し良くなった」と実感。
1時間の散歩もできるようになりました。
2ヶ月半後(21回目)
朝食が食べられるようになる
寝つきが良くなる
冷えと背中の痛みが軽減
体温の変動が落ち着き、汗の出方も穏やかに
3ヶ月後
「体全体の調子が良くなってきた」と笑顔で話してくださいました。
胃腸の調子が安定し、肩甲骨の痛みも軽くなり、基礎体温の変動も安定。
**「胃の不調」「急な体温変化」「手足の冷え」**など、自律神経に関係する項目が大きく改善していました。
改善の理由
鍼治療は自律神経のバランスを整え、血流やホルモンの働きを調整します。
つまり、体が本来もっている自然治癒力を引き出す治療法です。
さらに、3ヶ月という時間をかけてじっくり整えたことが、慢性的な不調に対して効果を発揮しました。
強い刺激ではなく、体に優しい刺激で、
負担をかけずに少しずつ体を立て直す。
毎日の乾布摩擦も大きな助けになり、
「数字で良くなっている」と確認できたことが、
安心感とモチベーションにつながりました。
おわりに
すべての症例が劇的に改善するわけではありません。
しかし、長年の臨床経験や国内外の研究からも、
自律神経の乱れに対して鍼治療は有効だと考えています。
今回の症例が、同じような症状でお悩みの方にとって、
少しでも希望の光になれば幸いです。
もし、あなたも
「体温のコントロールがうまくいかない」
「冷えや汗に悩まされている」
そんなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
投稿者:
2025.10.28更新
今日は、足の代表的なツボのひとつ三陰交をご紹介します。
三陰交は、足の内くるぶしの上にある有名なツボで、
婦人科の不調や冷え、むくみ、さらには消化器系のトラブルまで──幅広く効果が期待できる、
とても重要なツボです。
経絡と位置
三陰交は「足の太陰脾経」に属しますが、
その名の通り「脾経」「肝経」「腎経」という三つの陰の経絡が交わる場所にあります。
位置は、内くるぶしの上3寸、スネの骨の内側のきわ。
骨のふちをたどっていくと少し凹んだよ うに感じるところです。
ツボの名前の由来
まず「三」という字。
ただ3つという数を表すだけではありません。
古代中国の考え方では、三は「木」、つまり肝に関わる数字でもあり、
組み合わせる交わるといった意味も含まれているんです。
次に「陰)」。
これは太陽が当たらない側を表します。山の北側や川の南側のように、光が届きにくいところ。
さらに、夜、月、体の内側、五臓や深い部分を象徴する言葉でもあります。
そして「交)」。
これは交わる、会う、入り混じるという意味。
まさに何本もの流れがひとつの場所に集まる交差点をイメージすると分かりやすいですね。
では「三陰交」とはどういうことか?
それは──3つの陰の経絡が交わる場所という意味です。
具体的には、足の太陰脾経、少陰腎経、そして厥陰肝経。
この3つの経絡が集まって交わる場所だからこそ、「三陰交」と名付けられたんです。
つまり、このツボは体の中でも特別なエネルギーの交差点。
だからこそ婦人科の不調、冷えやむくみ、消化器や自律神経まで
──全身の幅広いトラブルに応用されてきたわけです。
ツボの名前には、ただの言葉ではなく、
古代の人たちが自然や宇宙をどう捉えていたのかという深い意味が込められています。
名前の由来を知ると、三陰交というツボがより神秘的で、ちょっとワクワクしてきませんか?
効果・適応症
三陰交は、とくに婦人科や生殖に関する不調に強いツボです。
たとえば、月経不順や生理中の出血トラブル、妊娠中の不安定な胎動や逆子(横産)など。
また、古典には「血暈して人事不省」という表現も見られます。
これは貧血や血の巡りが悪くて意識がもうろうとするような状態を指していて、
そういうときはツボを補って血流を盛んにする。
逆に、生理が止まってしまったり子宮に血が滞っている場合には、
瀉、(余分なものを取り除く刺激)で通じをよくする、と考えられていました。
婦人科だけではありません。
食欲不振、消化不良、胃酸過多、下痢やお腹の痛みなど、消化器系の不調にも効果が期待できます。
さらに、腎臓の病気や尿道炎、足のだるさや冷え、下肢の内側の痛み、湿気でお腹を下しやすい体質など──。
本当に幅広い症状に使われてきたんです。
つまり三陰交は、「女性の体調管理の要」であると同時に、「全身の巡りを調えるツボ」。
昔の人が大切にしてきた理由が、ここからもよくわかりますね。
投稿者: