井島鍼灸院ブログ

2026.07.10更新

 

湿布も痛み止めも効かない。それでも痛みが戻ってくる理由

湿布も痛み止めも効かない。
それでも痛みが戻ってくる理由

〜画像検査で異常がないのに続く痛みの本質をひも解く〜
湿布を貼っても、痛み止めを飲んでも、なぜ痛みが戻ってくるのでしょうか。
画像検査をしても大きな異常は見つからない。それなのに、なぜ痛みだけが続くのでしょうか。
もしかすると、その痛みは単なる「故障のサイン」ではないのかもしれません。

今回は「痛みとは一体何なのか」「なぜ痛みは長引くのか」「痛みを取るための治療とは、本質的に何をしているのか」という3つのテーマについて、わかりやすくお話しします。

痛みは誰にとっても身近なものです。朝起きたときの腰の重だるさ、長時間のデスクワーク後の肩こり、不意にぶつけた膝の鋭い痛み、何年も続く慢性的な痛み。できることなら避けたいものですが、少し考えてみてください。

もし痛みがまったくなかったら、私たちの体はどうなるでしょうか。熱いものに触れても手を引っ込めず大やけどをしてしまうかもしれませんし、骨が折れていても気づかずに歩き続け、体の中で起きている重大な異変を見過ごしてしまうかもしれません。つまり痛みは、私たちを苦しめるだけのものではなく、本来は体を守るために必要な警告信号なのです。

第1章 痛みとは何か

痛みと聞くと、多くの方は「体のどこかが傷ついて、その信号が脳に届くことで感じるもの」とイメージされるのではないでしょうか。もちろんそれは間違いではありませんが、現代の痛みの科学では、痛みはそれほど単純なものではないと考えられています。

国際疼痛学会は痛みを、「実際の、または潜在的な組織損傷に関連する、あるいはそのような損傷に似た、不快な感覚的・情動的体験」と定義しています。ここで大切なのが「情動的体験」という言葉です。痛みには体で感じる感覚の側面と、心で感じる感情の側面があります。

たとえば同じ注射でも、リラックスしているときと強く緊張しているときでは痛みの感じ方が違います。楽しいことに夢中になっているときは痛みをあまり感じないことがある一方、不安や心配が強いときには痛みが何倍にも強く感じられることがあります。つまり痛みは、体の傷の大きさだけで決まるものではありません。脳が、体の状態、心の状態、過去の経験、そのときの不安や安心感を総合して、痛みとして感じているのです。

痛みが伝わる仕組みと2つの神経

皮膚や筋肉、内臓には侵害受容器と呼ばれるセンサーがあり、強い圧力、熱、冷たさ、炎症物質などを感じ取ります。その情報は神経を通って脊髄に入り、さらに脳へと伝わります。痛みを伝える神経には主に2つのルートがあります。

① Aδ(デルタ)線維

速く伝わる神経。ピンポイントで「チクッ」とした鋭い痛みを伝えます。

② C線維

ゆっくり伝わる神経。「ジンジン」「じわじわ」と広がる重だるい痛みを伝えます。

そして脊髄には、痛みの信号を調整する仕組み(ゲートコントロール理論)があります。痛いところをさすると少し楽になることがありますが、これはさする刺激が脊髄で痛みの信号を弱める方向に働くためだと考えられています。

最終的に脳へ届いた信号は、「どこがどう痛むか」という感覚だけでなく、「どれだけつらいか」という感情としても処理されます。だからこそ痛みは単なる電気信号ではなく、体と心と脳が関わる、とても複雑な体験なのです。

第2章 なぜ痛みは長引くのか

痛みには「急性痛」と「慢性痛」の2種類があり、それぞれ役割が大きく異なります。

急性痛は、ケガや炎症などの原因があり、体を守るために起こる痛みです。「ここを休ませてください」という体からのメッセージであり、原因が取り除かれて組織が修復されれば、痛みは自然に落ち着いていきます。

一方で、一般に3か月以上続く痛みを指す慢性痛は少し事情が違います。最初のケガや炎症がすでに治っているにもかかわらず、痛みだけが残り続けることがあるのです。その背景には、2つの悪循環が存在します。

1. 神経系の過敏化(末梢性感作・中枢性感作)

痛みの信号が繰り返し送られることで、神経系そのものが過敏になってしまう現象です。本来なら痛くないような軽い刺激でも痛む、少しの刺激が強い痛みに感じられる、痛みが頭から離れないといった状態に陥ります。こうなると、痛みはもはや警告信号ではなく、「痛みの回路そのものが故障して暴走している状態」と言えます。

2. 身体的・心理的な悪循環

  • 身体的な悪循環: 痛みによって筋肉が緊張する ➔ 血流が悪くなる ➔ 酸素や栄養が届かず老廃物がたまる ➔ さらに痛みが強くなる
  • 心理的な悪循環: 痛みが続く ➔ 不安になる ➔ 動くのが怖くなって活動量が減る ➔ 筋力や体力が落ちる ➔ さらに痛みを感じやすくなる

だからこそ慢性痛の治療では、「痛い場所だけを見る」だけでは不十分なことがあります。最初に痛みを起こした原因と、今も痛みを続けさせている要因が違っている場合があるからです。

第3章 治療の本質とは何か

「痛みを取る」と聞くと、多くの方は痛みの信号を消すことをイメージされるかもしれません。もちろん消炎鎮痛薬や局所麻酔、神経の興奮を抑える薬などで強い痛みを和らげることは非常に大切です。

しかし、ここで考えていただきたいのは、「痛みを感じにくくすること」と「体が本当に回復すること」は必ずしも同じではないということです。痛みを生み出している環境(血流不足、過度な筋緊張、自律神経の乱れ、睡眠・栄養不足、ストレス)が変わらなければ、薬の効果が切れたときに痛みはまた戻ってきてしまいます。

治療の本質は、痛みの信号を力づくで消すことではなく、「体が本来持っている自然治癒力を発揮できるように、その条件を整えること」にあります。

東洋医学がもたらすアプローチと鍼灸の役割

東洋医学には「通ぜざれば則ち痛む」という言葉があります。これは「気血の流れが滞ると痛みが生じる」という意味です。現代的に言えば、血流が悪くなり、酸素や栄養の供給が不足し、筋肉が硬くなって痛みが続きやすくなっている状態を指します。

鍼灸治療は、この滞った流れを整えることを得意としています。

  • 局所の改善: 鍼の刺激によって血流を促し、筋肉の過緊張をゆるめて「痛みと筋緊張の悪循環」を断ち切ります。
  • 脳と神経への働きかけ: 体内で作られる鎮痛物質(エンドルフィンなど)の分泌に関わったり、脳から脊髄へ向かう痛みの抑制システム(下行性疼痛抑制系)を活性化させたりする可能性が知られています。

つまり、痛みを外から無理に抑え込むのではなく、体全体のバランス(自律神経、血流、心身の緊張)を見つめ直し、「体自身が持っている調整力を引き出す」のが全身調整の視点です。

痛みの治療を支える三つの層

私たちがアプローチする痛みの治療は、以下の三つの層に整理することができます。

第一の層:原因の除去

骨折の固定や感染症の治療など、原因が明確な急性痛に対して最も重要となる対応です。

第二の層:治癒環境の整備

血流の促進、筋肉の緊張緩和、睡眠や自律神経のバランス調整など、体が自ら治ろうとする環境を整えます。

第三の層:生体調節能力の回復(究極の目的)

体本来の炎症調整力や痛みを抑える仕組みを引き出し、痛みが生じにくい「調和が取れた状態」へと導きます。

 

おわりに

痛みは単なる敵ではなく、体からの大切なメッセージです。痛みが消えるのは「目的」ではなく、体が整った結果として訪れる「現象」です。

痛みを敵として戦うのではなく、体全体の調和を回復させていく過程の中で、痛みは自然と和らいでいきます。そのお手伝いをすることが、私たち治療者の本質的な役割です。

痛みに悩んでいる方へ。あなたの体には、痛みを乗り越える力が必ず備わっています。その力を信じて、一緒に一歩ずつ歩んでいきましょう。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.07更新

三陽絡とは?
腕にありながら耳・頭・自律神経にも関わるツボ

こんにちは。
岐阜市の 井島鍼灸院 です。

今回は、腕にありながら、




自律神経

にまで関わるとされる重要なツボ、**三陽絡(さんようらく)**についてお話しします。

「腕のツボなのに、なぜ耳や頭に関係するの?」

そう感じた方こそ、ぜひ最後まで読んでみてください。

三陽絡とはどんなツボ?

三陽絡は、東洋医学でいう「手の少陽三焦経(てのしょうようさんしょうけい)」に属する経穴です。

三焦経は、

上焦
中焦
下焦

という、体の上・中・下の働きをつなぎ、気や水分の流れを調整すると考えられている経絡です。

その中でも三陽絡は、腕を走る“3つの陽経”が交わる特別なポイントとして古くから重視されてきました。

名前に込められた意味

まず、「三陽絡」という名前を分解してみましょう。

「三陽」とは

次の3つの経絡を指します。

手の陽明大腸経
手の少陽三焦経
手の太陽小腸経

いずれも、腕から頭部へ向かう“陽の経絡”です。

「絡」とは

「つなぐ」「めぐる」「連絡する」という意味があります。

つまり三陽絡とは、

3つの陽経の気が交わり、連結する場所

という意味になります。

イメージとしては、3本の大きな道路が合流する“ジャンクション”のような場所です。

もしここで流れが滞ると、腕だけでなく、その先につながる頭・耳・口・顔面にも影響が出ると考えられてきました。

三陽絡の場所

三陽絡は、前腕の外側からやや後ろ寄りにあります。

目安としては、

手首の「陽池(ようち)」から肘方向へ約4寸
橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の間
少しやわらかく感じる部分

に位置します。

肘を軽く曲げ、前腕を少し内側へひねると、指が入りやすいポイントが見つけやすくなります。

三陽絡はどんな症状に使われる?

三陽絡は、特に“上半身の不調”との関わりが深いツボです。

① 耳・頭・口の症状
耳鳴り
耳の閉塞感
難聴感
歯の痛み
頭痛
頭の重だるさ
目の疲れ

などに用いられることがあります。

② 腕・肩・神経系の症状
肩から腕にかけての痛み
腕のしびれ
五十肩
頸肩腕症候群
上肢の動かしにくさ

などにも使われます。

③ 自律神経や睡眠の乱れ

さらに、

不眠
のぼせ感
緊張が抜けない
フワフワする感覚
自律神経の乱れ

などに対して用いられることもあります。

腕のツボでありながら、ここまで幅広い症状に関わる点が、三陽絡の大きな特徴です。

なぜ三陽絡が重要なのか

理由は比較的シンプルです。

三陽絡は、腕だけではなく、

頭部

顔面
脳へ向かう陽の流れ

の“中継地点”と考えられてきました。

そのため、この流れを整えることで、

上半身の巡りがスムーズになる
のぼせが落ち着く
神経の興奮が鎮まりやすくなる

といった変化が期待されてきたのです。

結果として、

痛み
しびれ
不眠
耳の不調

などが同時にやわらぐケースもあります。

臨床での組み合わせ

三陽絡は、他のツボと組み合わせて使われることも多い経穴です。

たとえば、

耳鳴り → 外関・翳風
腕のしびれ → 合谷・曲池
不眠 → 内関・神門

などが代表的です。

症状だけでなく、体全体の状態を見ながら組み合わせを考えていくのが東洋医学の特徴でもあります。

三陽絡が教えてくれること

三陽絡は、

“陽のエネルギーが交差するジャンクション”

のようなツボです。

腕の症状だけではなく、

耳鳴り
頭の重さ
不眠
のぼせ感
自律神経の乱れ

など、上半身の不調と深く関わることがあります。

もし、

「原因ははっきりしないけれど、なんとなく調子が悪い」

そんな感覚が続いている方は、“つながり”という視点から体を見てみると、新しいヒントが見えてくるかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.05更新

黄帝内経・霊枢「九鍼十二原」
2000年前の鍼灸師たちが辿り着いた“気の治療”とは

古代中国に、こんな夢を持った王がいたと伝えられています。

「薬を使わず、鍼だけで病を治したい。」

この言葉は、2000年以上前に編まれた東洋医学の古典、
黄帝内経 の『霊枢』第一篇「九鍼十二原」の冒頭に登場する有名な一節です。

この篇は、現在の鍼灸医学の原点とも言える重要な内容を含んでいます。

九鍼とは何か

「九鍼」とは、古代中国で使い分けられていた9種類の鍼のことです。

現代では、鍼といえば細い一本の鍼を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし古代の鍼灸師たちは、目的に応じてまったく異なる形の鍼を使い分けていました。

たとえば、

皮膚の表面を刺激する矢じりのような鍼
筋肉をやさしくほぐす丸い鍼
膿を出すための剣のような鍼
そして、髪の毛ほどの細さを持つ極細の鍼

などがあります。

この極細の鍼は「毫鍼(ごうしん)」と呼ばれ、九鍼の中でも特に重要視されていました。
実は、現代の鍼治療で一般的に使われている鍼は、この毫鍼が原型になっています。

症状や部位によって道具を細かく使い分ける。
その発想からも、古代の鍼灸が非常に繊細で体系化された医療だったことが伝わってきます。

十二原穴とは何か

次に「十二原穴」についてです。

「原穴(げんけつ)」とは、東洋医学において、
臓腑の働きや生命力が体表に現れる重要なツボと考えられてきた場所です。

古代の医家たちは、

「内臓の状態は、体表に現れる」

という考えを持っていました。

たとえば、

肺経の原穴 → 太淵(たいえん)
腎経の原穴 → 太渓(たいけい)
大腸経の原穴 → 合谷(ごうこく)

などが有名です。

これらのツボを観察し、触れ、反応を確かめながら治療を行う。
それが「十二原」の重要な考え方でした。

鍼は“気の流れ”を整える道具

『九鍼十二原』では、人体を流れる「気」の存在が重視されています。

東洋医学では、気の流れが滞ることで痛みや不調が起こると考えます。
そして鍼は、その乱れた流れを整えるための道具として発展してきました。

この篇には、流れをイメージさせる印象的な表現があります。

経脈は流れる水のようであり、鍼はその流れを導くもの

気の流れが弱っているときには「補う」。
逆に、滞っているときには「瀉す」。

この「補法(ほほう)」と「瀉法(しゃほう)」という考え方は、現代の鍼灸でも基本となる重要な技術です。

本当に優れた鍼灸師とは

『九鍼十二原』には、もうひとつ有名な言葉があります。

「粗守形、上守神」

これは、

「未熟な者は形だけを見る。優れた者は“神”を守る」

という意味で解釈されることが多い言葉です。

単にツボの位置を覚えるだけではなく、
患者さんの呼吸、表情、緊張、気の変化まで感じ取りながら治療する。

それこそが本当の鍼灸だと、2000年以上前から語られていたのです。

医療とは、技術だけではない。
そこには“人を感じ取る力”が必要だということなのでしょう。

九鍼十二原が今に伝えていること

『九鍼十二原』が伝えている本質は、とてもシンプルです。

体の内側の変化は、外側に現れる
気の流れを整えることが治療の基本である
道具や技術の先には、人を感じる心がある

薬を使わず、細い鍼一本で病を癒したい。

そんな古代の夢は、今も世界中の鍼灸師たちによって受け継がれています。

2000年前に記された思想が、
現代の臨床の中にも静かに生き続けている。

それが、黄帝内経 『霊枢・九鍼十二原』の大きな魅力なのかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.03更新

突然、肩や太ももが痛くなる──それは「多発性筋痛症」かもしれません

こんにちは。
岐阜市の井島鍼灸院です。

突然、肩や太ももの強い痛みや、体のこわばりで動きにくくなったことはありませんか。

朝起きたときに、

着替えがつらい
腕が上がらない
寝返りが打てない
立ち上がるのが大変

そんな状態になることがあります。

もしこのような症状が急に現れた場合、多発性筋痛症の可能性があります。

多発性筋痛症とはどんな病気?

この病気は、昨日まで普通に生活していた方が、ある日突然、強い痛みやこわばりを感じ始めることがあるのが特徴です。

主に50歳以上の方に多くみられ、



お尻
太もも

など、体の中心に近い部分に左右対称の痛みが出やすいとされています。

特に朝のこわばりが強く、「朝だけ別人のように動けない」と表現される方もいます。

なぜ強い痛みが起こるのでしょうか

実は、この病気は現代医学でもまだ完全には解明されていません。

現在は、

加齢による免疫機能の変化
ウイルス感染
炎症反応の異常

などが関係している可能性が考えられています。

肩やお尻の周囲の組織に強い炎症が起こることで、あの独特の痛みやこわばりが生じるとされています。

「リウマチ」とは違う病気です

この病気の正式名称は、
リウマチ性多発筋痛症です。

ただ、「リウマチ」という言葉が入ることで、関節リウマチと同じ病気だと思い、不安になる方も少なくありません。

そのため医師によっては、患者さんを安心させる配慮として、「多発性筋痛症」と説明されることもあります。

先日、当院にご相談くださった患者さんも、この名前で診断を受けていました。

関節リウマチとの違い

関節リウマチは、関節そのものに炎症が起こり、進行すると骨や関節が変形することがあります。

一方、多発性筋痛症は、関節周囲の組織に炎症が起こる病気です。

そのため、この病気そのもので骨が変形することは、基本的にはありません。

ただし初期症状は似ていることも多く、自己判断は危険です。
強い痛みが続く場合は、まず病院でしっかり診断を受けることが大切です。

鍼灸院でできること

では、このような辛い症状に対して、鍼灸院ではどのようなお手伝いができるのでしょうか。

大きく分けると、主に2つあります。

① 痛みをかばって固まった筋肉を緩める

強い痛みが続くと、人は無意識に体をかばいます。

その結果、



背中
お尻

などの筋肉がガチガチに緊張し、さらに動きにくくなることがあります。

鍼灸では、こうした過剰な緊張をやさしく和らげ、体全体の重さやだるさを軽くするサポートを行います。

② 自律神経や生活の質を整える

長引く痛みは、心にも大きな負担をかけます。

よく眠れない
疲れが抜けない
不安が強くなる
気持ちが落ち込む

こうした状態が続くと、自律神経も乱れやすくなります。

当院では、敏感になっているお体に配慮しながら、できるだけ痛みを感じにくい優しい鍼治療を行っています。

少しでも毎日を楽に過ごせるよう、体全体のバランスを整えるお手伝いをしています。

一人で我慢しないでください

多発性筋痛症は、突然強い症状が出るため、不安になってしまう方が少なくありません。

ですが、適切な治療によって改善することも多い病気です。

日々の痛みやストレスを少しでも軽くし、安心して過ごせるよう、岐阜市の井島鍼灸院では丁寧にサポートしています。

「これってもしかして…」と思った方は、どうぞ一人で抱え込まず、ご相談ください。

また、当院では「なぜ鍼治療が痛みの緩和に役立つのか」についても別の記事や動画で解説しています。
興味のある方は、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.29更新

耳鳴りや耳のつまりと関係するツボ「耳門」とは

こんにちは。
みなさんは、

「耳鳴りが気になる」
「耳がつまった感じがする」
「耳の違和感がなかなか抜けない」

そんなお悩みはありませんか?

東洋医学には、耳の不調と深く関わると考えられてきた代表的なツボがあります。
それが「耳門(じもん)」です。

耳門とはどんなツボ?

耳門は、手の少陽三焦経に属する経穴です。

場所は耳の前。
口を開けた時に少しくへこむ部分にあります。

名前の通り、「耳の門」という意味を持ち、東洋医学では耳へ気血が出入りする重要な入り口と考えられてきました。

三焦経と耳の深い関係

耳門が属する三焦経は、薬指から始まり、腕、肩、首を通って耳の周囲へと流れていきます。

さらに耳の周囲には、

聴宮
聴会
耳門

など、耳に関係する重要なツボが集中しています。

古典でも三焦経は「耳に入る」と記載されており、古代から耳との関係が重視されてきました。

現代医学から見た耳周囲の特徴

現代医学的に見ても、耳の周囲には非常に繊細な神経や血管が集まっています。

耳の前には、

三叉神経
顔面神経
耳介側頭神経

などが走行しており、顎関節とも非常に近い場所です。

実際に、食いしばりや顎の緊張によって、耳鳴りや耳の違和感が悪化する方も少なくありません。

また、耳周囲の筋肉や筋膜が緊張すると、局所の血流や神経の働きにも影響する可能性があると考えられています。

耳門への刺激で期待されること

耳門周囲へやさしく刺激を行うことで、

局所の緊張がゆるむ
耳周囲の循環が整いやすくなる
顎周囲の負担が軽減する

といった変化が期待される場合があります。

ただし、耳鳴りには、

加齢
難聴
ストレス
自律神経の乱れ
内耳の問題

など、さまざまな要因があります。

そのため、「このツボだけですべて改善する」という単純なものではありません。

東洋医学の考え方

東洋医学では、耳だけを見るのではなく、全身のバランスを整えながら耳への負担を減らしていくことを大切にします。

耳門は、その中でも「耳の近くから全身へアプローチしていく」という考え方を象徴する、とても興味深いツボの一つです。

耳の不調が気になる方は、耳だけでなく、首肩の緊張や睡眠、ストレス状態なども含めて見直してみることが大切かもしれません。

 

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.26更新

鍼治療は「がん関連倦怠感」に役立つのか?
2026年最新メタ分析が示した可能性

こんにちは。
井島鍼灸院 です。

今回は、2026年5月に
Frontiers Media の学術誌
Frontiers in Oncology に掲載された最新論文をご紹介します。

テーマは、

「がん関連倦怠感に対する鍼治療の有効性」

です。

この研究は、

28件のランダム化比較試験(RCT)
合計2168人

のデータを統合した、大規模なシステマティックレビューとメタ分析です。

がん関連倦怠感とは?

まず、「がん関連倦怠感(Cancer-Related Fatigue)」について簡単に説明します。

これは、

がんそのもの
抗がん剤治療
放射線治療
手術後の影響

などによって生じる、“休んでも回復しにくい強い疲労感”のことです。

一般的な疲労とは異なり、

十分休んでも改善しにくい
集中力が低下する
身体が重く感じる
日常生活が難しくなる

といった特徴があります。

がんサバイバーの約70%が経験するとされ、長期間続くケースも少なくありません。

そのため、生活の質(QOL)や予後にも関わる重要な問題として注目されています。

現在の主な対策

現在、がん関連倦怠感への対応としては、

運動療法
心理療法
睡眠改善
栄養サポート

などの非薬物療法が中心です。

ただし実際には、

体力低下
痛み
治療中の副作用

などによって、十分に取り組めない患者さんも少なくありません。

そこで近年、補完医療のひとつとして鍼治療が注目されています。

今回の研究結果

今回の論文では、主要評価項目として「パイパー疲労スケール(Piper Fatigue Scale)」が用いられました。

その結果、

鍼治療群は対照群と比較して、疲労スコアが有意に改善

していました。

統合解析では、平均で「−0.56ポイント」の改善が示されています。

これは統計学的にも有意差が認められた結果でした。

興味深かったサブグループ解析

さらに今回の研究では、鍼の種類ごとの比較も行われています。

その中で特に興味深かったのは、

「毫鍼(ごうしん)」による通常の手技鍼

が、最も高い改善効果を示した点です。

電気鍼や耳鍼よりも、良好な結果が報告されました。

これは、東洋医学で古くから行われてきた「手技による微細な刺激」が、重要な意味を持つ可能性を示唆しています。

偽鍼との差が出なかった理由

一方で、

偽鍼(シャム鍼)との比較では、有意差が認められない

という結果もありました。

これだけを見ると、

「鍼は効かなかったのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし現在の鍼研究では、偽鍼として使われる“浅い刺激”そのものにも、生理学的な反応が起こる可能性が指摘されています。

つまり、

「偽鍼が完全な無刺激ではない」

という問題があるのです。

そのため、鍼研究では比較対照の設計そのものが難しいという課題があります。

よく使われていたツボ

今回の研究で多く用いられていた経穴には、

足三里
関元
気海
三陰交
百会

などが含まれていました。

いずれも、東洋医学では

補気
全身調整
疲労回復

などに用いられる代表的なツボです。

特に「足三里」は、

免疫機能
炎症調整
エネルギー代謝

との関連について、基礎研究も多く行われています。

そのため、がん関連倦怠感への鍼治療において、中心的な経穴として位置づけられています。

この研究の限界

もちろん、今回の論文にも課題はあります。

著者らは、GRADE評価において、

「エビデンスの質は低い〜非常に低い」

と評価しています。

その理由として、

研究デザインのばらつき
バイアスリスク
がん種や病期の違い
治療方法の不統一

などが挙げられています。

つまり、

「確定的な結論」とまでは言えない

という点には注意が必要です。

それでも注目されている理由

それでも、鍼治療は近年、がん支持療法の分野で少しずつ位置づけが広がっています。

実際、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでも、

がん関連倦怠感に対する選択肢のひとつとして、鍼治療が記載されています。

今回の28研究を統合した結果も、

「鍼が倦怠感軽減に役立つ可能性」

を支持する内容でした。

臨床で考えたいこと

臨床の現場では特に、

がん治療終了後も疲労感が続く
睡眠の質が低下している
緊張が抜けない
自律神経の乱れが強い

といった患者さんに対して、

手技を中心とした短期的な鍼治療が、一つの選択肢になる可能性があります。

もちろん、がん治療そのものに代わるものではありません。

しかし、

「少しでも日常生活を楽にする」

という支持療法の視点では、今後さらに研究が進む価値のある分野だと感じます。

まとめ

今回の最新メタ分析では、

鍼治療が、がん関連倦怠感を軽減する可能性
特に毫鍼による手技刺激の有効性
足三里などの補気系経穴の重要性

などが示されました。

まだ課題は多いものの、鍼治療が“痛みだけではない領域”にも応用され始めていることを示す、非常に興味深い研究だと思います。

今後、より質の高い研究が積み重なることで、鍼治療の位置づけがさらに明確になっていくことを期待したいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.23更新

『黄帝内経・素問 陰陽応象大論』
2000年前の医学書が教える「体と自然のつながり」

昼と夜。
暑さと寒さ。
元気な日と、疲れている日。

私たちの体は、実は自然と同じリズムで動いている。
そう聞くと、不思議に感じるかもしれません。

しかし今から2000年以上前、古代中国の医学書には、すでにその考え方が書かれていました。

それが、
『黄帝内経・素問(こうていだいけい・そもん)』の中にある
「陰陽応象大論(いんようおうしょうたいろん)」です。

陰陽とは何か?

「陰陽」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

でも実はこれ、単なる哲学ではありません。

昼があれば夜がある。
夏があれば冬がある。
息を吸えば、吐く。
動けば、休む。

世界のあらゆるものは、こうした“対になる力”で成り立っている。

それが陰陽の考え方です。

『黄帝内経』には、

「陰陽とは、天地を貫く普遍の法則である」

と書かれています。

つまり陰陽は、人間だけの話ではなく、自然界そのものを説明する法則だったのです。

自然と人間の体はつながっている

陰陽応象大論の面白さは、自然界と人間の体を、同じルールで説明しているところです。

古代の医家たちは、

「季節が変われば、体も変わる」

と考えていました。

春は「風」の季節

春は風の影響を受けやすい季節とされます。

東洋医学では、この時期は「肝」が影響を受けやすいと考えられてきました。

そのため、

・目が疲れやすい
・イライラしやすい
・自律神経が乱れやすい

こうした不調が出やすいと言われています。

春になると、なんとなく気分が不安定になる。
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

夏は「熱」の季節

夏は熱の季節です。

体温調整や血流への負担が増えやすく、東洋医学では「心」が関わると考えられていました。

そのため、

・眠りが浅い
・動悸がする
・興奮しやすい
・疲れているのに眠れない

といった状態が起こりやすいとされています。

秋は「乾燥」の季節

秋は空気が乾きます。

東洋医学では、この乾燥が「肺」を傷つけやすいと考えられていました。

そのため、

・咳が出る
・喉が乾く
・肌が乾燥する
・気分が落ち込みやすい

こうした変化が現れやすくなります。

秋になると、少し寂しい気持ちになる。
それも自然の変化と無関係ではない、と古代の医学は考えていたのです。

冬は「寒さ」の季節

冬は寒さの季節。

東洋医学では、「腎」が影響を受けやすいとされます。

そのため、

・疲れやすい
・冷えやすい
・やる気が出ない
・朝起きづらい

こうした状態が起こりやすいと言われています。

冬になると活動量が減るのも、ある意味では自然な反応なのかもしれません。

感情と体の関係

さらに興味深いのは、陰陽応象大論が「感情」と「体」の関係まで語っていることです。

古代の医家たちは、

怒りすぎると「肝」を傷つける。
考えすぎると胃腸が弱る。
悲しみすぎると「肺」に影響する。
恐怖が続くと「腎」が消耗する。

そう考えていました。

現代医学でも、ストレスによって胃腸症状や免疫低下が起こることはよく知られています。

2000年以上前に、すでにそのつながりに注目していたのは、とても興味深いことです。

陰陽応象大論が伝えたいこと

この篇が伝えていることを、一言で表すなら、

「人は自然の一部である」

ということです。

季節の変わり目に体調を崩しやすい。
ストレスが続くとお腹が痛くなる。
冬になると気分が落ち込みやすい。

それらは、バラバラに起きているのではなく、全部つながっている。

そう古代の医学は考えていました。

2000年前から続く養生の知恵

自然のリズムに逆らいすぎないこと。

感情をため込みすぎないこと。

旬のものを食べること。

季節に合わせて休むこと。

それが、『黄帝内経・陰陽応象大論』が伝える養生の基本です。

2000年前の知恵は、今の時代にも静かに語りかけています。

「あなたの体は、自然と切り離されていない」と。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.20更新

 

鍼はなぜ効くのか?
ファシアと自律神経から考える鍼治療

こんにちは。
岐阜市の 井島鍼灸院 です。

今回は、

「鍼って、なぜ効くの?」

というテーマについて、できるだけわかりやすくお話しします。

ポイントになるのは、

ファシア
自律神経

この2つです。

ファシアとは何か

まず「ファシア」についてです。

ファシアとは、筋肉、骨、内臓、血管、神経など、体のあらゆる組織を包み込み、互いにつないでいるネットワークのことです。

イメージとしては、全身を立体的につないでいる
“体の中のボディスーツ”のような存在です。

このファシアは、単に体を包んでいるだけではありません。

圧力や伸び、張りの変化を感じ取る、とても敏感な組織でもあります。

そのため、どこか一か所で動きが悪くなったり、滑りが低下したりすると、その影響が離れた場所にまで及ぶことがあります。

たとえば、

腰がつらいのに、足の治療で楽になる
首がつらいのに、手のツボで変化が出る

こうした現象の背景の一つとして、ファシアの“つながり”が考えられています。

鍼をすると体の中で何が起きるのか

では、鍼をすると体では何が起きるのでしょうか。

鍼の刺激は、皮膚や筋肉、そしてファシアにごく細かな変化を起こします。

その刺激は、体にある感覚の受け取り装置へ伝わり、さらに脊髄や脳へと情報が送られていきます。

すると体は、

「痛みをやわらげよう」

という方向へ働き始めます。

たとえば、

脊髄で痛みの信号を通しにくくする
体内で天然の鎮痛物質が分泌される
脳から痛みを抑える調整が行われる

など、さまざまな反応が起こる可能性が考えられています。

つまり鍼は、単にその場を刺激するだけではなく、神経系や脳の働きにも関わっている可能性があるのです。

現代人と自律神経

さらに重要なのが「自律神経」です。

現代は、

ストレス
不安
情報の多さ
睡眠不足

などによって、交感神経、いわば“アクセル”が入りっぱなしになっている方が少なくありません。

その結果、

肩に力が入り続ける
呼吸が浅くなる
胃腸の調子が悪くなる
眠りが浅くなる
疲れているのに休まらない

といった状態につながりやすくなります。

鍼は、ファシアや神経への刺激を通して、この過剰な緊張状態をやわらげ、副交感神経、つまり“休息モード”へ体を戻す手助けになることがあります。

そのため施術後に、

「よく眠れた」
「呼吸がしやすい」
「気持ちが落ち着いた」

と感じる方もいらっしゃいます。

強い刺激ほど効くわけではない

ここで大切なのは、

「強い刺激ほど効くわけではない」

ということです。

深く、強く、たくさん刺激すれば良いという単純なものではありません。

むしろ重要なのは、

どの層に届いたか
どれだけ正確だったか
体が受け取りやすい刺激だったか

という点です。

鍼治療は、

皮膚、ファシア、神経、脊髄、脳、そして自律神経へ。

体のさまざまな層に働きかけながら、本来備わっている調整力を引き出そうとする方法だと考えられています。

体を「つながり」として見る

慢性的な痛みや、

自律神経の乱れ
眠りの浅さ
疲れやすさ
原因がはっきりしない不調

でお悩みの場合、

体を“部分”ではなく、“つながり”として見ることが、大きなヒントになるかもしれません。

 

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.17更新

大椎とは?

風邪・自律神経・首肩こりにも使われる「陽気の交差点」

こんにちは。
今日は、体の陽気をコントロールする重要なツボ、
**大椎(だいつい)**についてお話しします。

大椎は、督脈に属する第14穴です。
さらに、手足の三陽経すべてが交わる特別な場所として知られています。

大腸経・小腸経・三焦経。
胃経・膀胱経・胆経。

これら六つの陽の経絡が交差するため、古典では
「諸陽の会(しょようのえ)」
とも呼ばれてきました。

つまり大椎は、全身の陽気が集まり、出入りする“交差点”のような場所なのです。

大椎の場所

位置は、首と背中の境目です。

頭を前に倒したとき、首のつけ根に一番ポコッと出る骨があります。
それが第7頸椎です。

そのすぐ下のくぼみ。
ここが大椎です。

「大椎」という名前の意味

「大椎」という名前には、

・大きな椎骨の下にあるツボ
・陽気が集まる大きな要衝

という意味が含まれていると考えられています。

まさに、体の“陽の中心地”ともいえる場所です。

大椎がよく使われる症状
① 風邪・発熱の初期

大椎は、風邪のひき始めによく使われる代表的なツボです。

悪寒。
ゾクゾクする感じ。
首すじのこわばり。
発熱のはじまり。

こうした状態で大椎を刺激すると、汗が出やすくなり、熱感がやわらぐことがあります。

そのため古典では、
「風邪の門」
のように表現されることもあります。

外から入った邪気を、ここから追い出すイメージです。

② 呼吸器症状

咳、痰、喘息、気管支の不調。

特に、熱っぽさを伴う咳や、ゼーゼーする呼吸に対して、古くから用いられてきました。

督脈を介して、肺や陽経に影響すると考えられています。

③ 首・肩こり

首のこわばり。
肩こり。
背中の重さ。

大椎は、局所の筋緊張だけでなく、体全体の陽気の巡りを整える目的でも使われます。

特に、

「冷え+肩こり+風邪気味」

この組み合わせには相性が良いとされています。

④ 自律神経の調整

大椎は、首と胸の境目にあり、自律神経とも関わりが深いエリアです。

のぼせ。
ほてり。
顔は熱いのに手足は冷える。
いわゆる「上熱下寒(じょうねつげかん)」タイプ。

さらに、

不眠。
動悸。
緊張。
イライラ。

こうした状態に対しても、督脈上の重要ポイントとして使われます。

臨床での使い方

風邪のひき始めには、大椎へのやさしい鍼刺激を行うことがあります。

風門と組み合わせることも多く、

「首元から冷えた気がする」

と患者さんが話されるとき、大椎を刺激することで体が楽になるケースもあります。

注意点

大椎は頚髄に近い場所のため、深刺は避けるのが基本です。

一般的には浅めに刺激し、状態を見極めながら施術することが大切です。

まとめ

大椎は、

・免疫
・体温調整
・自律神経
・首肩の緊張

こうした働きと関わる、全身調整の重要ポイントです。

必要に応じて上手に刺激することで、体の状態が大きく変わることもあります。

首と背中の境目にある、小さな交差点。
そこには、東洋医学が古くから重視してきた「陽気の流れ」が集まっているのです。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.06.15更新

ニューヨーク州で進む「鍼治療の保険適用」という大きな変化

2026年3月31日、アメリカ・ニューヨーク州議会下院で、鍼治療を健康保険の対象として広げていく法案が可決されました。

この法案は、大規模グループ保険に対し、医療提供者の処方がある場合に鍼治療を保険適用の対象とすることを求める内容です。

これは単なる海外ニュースではありません。

鍼治療が「特別な人のためのぜいたくな治療」ではなく、医療の現実的な選択肢の一つとして見直され始めていることを示す、非常に象徴的な出来事だと感じます。

なぜ今、鍼治療なのか

これまで慢性的な痛みに悩む患者さんの多くは、治療の選択肢に大きな偏りを抱えていました。

薬、特に強い痛み止めには比較的アクセスしやすい一方で、体への負担が少ない非薬物療法である鍼治療は、保険が使えないため自己負担が大きくなりやすい。

その結果、

「本当は続けたいけれど、費用の面で続けられない」

という問題が起きていました。

今回のニューヨーク州の法案は、こうした医療制度上の偏りに一石を投じるものとも言えます。

「薬だけではない選択肢」を持つということ

痛みに対して、薬だけに頼るのではなく、鍼治療のような非薬物療法を選択肢として持つことには大きな意味があります。

ニューヨーク州議会の発表でも、鍼治療は慢性的な病気や痛みを抱える人の生活の質を改善する可能性がある治療として紹介されています。

もちろん、ここで大切なのは、鍼治療を魔法のように語らないことです。

すべての人に必ず効果があるという話ではありません。

しかし、

「薬だけではない選択肢がある」

そして、

「その選択肢にアクセスしやすくする」

これは、これからの医療において非常に重要な視点だと思います。

継続できるかどうかは大きな問題

鍼治療は、一回だけで完結するというより、体の状態を見ながら継続的に整えていく治療です。

だからこそ、保険でカバーされるかどうかは患者さんにとって大きな意味を持ちます。

「効果を感じているけれど、費用の面で続けられない」

この壁を少しでも低くすることは、治療の継続だけでなく、生活の質の向上にもつながります。

医療は「対立」から「組み合わせ」の時代へ

今回のニューヨーク州の動きは、鍼治療が単なる補完的なものではなく、現実的な医療の選択肢として再評価され始めていることを示しています。

西洋医学か、東洋医学か。

薬か、鍼か。

そうやって分ける時代から、

「患者さん一人ひとりに合った方法を組み合わせる」

そんな時代へ、医療は少しずつ変わろうとしているのかもしれません。

日本の鍼灸にとっても大きな意味

この流れは、日本の鍼灸にとっても非常に大きな意味があります。

日本の鍼治療には、やさしい刺激で体全体を整えるという特徴があります。

痛みだけを見るのではなく、

睡眠
緊張
自律神経
生活リズム

なども含めて全体を見ながら整えていく。

こうした考え方は、これからの医療の中でますます重要になっていく可能性があります。

健康とは「その人らしく生活できること」

健康とは、単に病気がないことだけではありません。

痛みが少なく、よく眠れて、日常生活を自分らしく送れること。

その人らしい生活の質を守ること。

今回のニューヨーク州の一歩は、そんな新しい健康観に向けた大きなメッセージのようにも感じられます。

鍼治療は、ぜいたく品ではなく、必要な人が選べる医療の選択肢へ。

この流れが今後どのように広がっていくのか、これからも注目していきたいと思います。

投稿者: 井島鍼灸院

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