井島鍼灸院ブログ

2026.10.07更新

難経第45難とは?八会穴をわかりやすく解説

東洋医学には、体のさまざまな働きを代表する八つの重要な経穴があります。

それが「八会穴(はちえけつ)」です。

『難経』第四十五難では、この八会穴について説明されています。

今回は、八会穴とは何か、どの経穴が何を代表しているのか、
そして第四十五難が何を伝えようとしているのかを、
できるだけわかりやすく解説します。

八会穴とは何か

第四十五難では、まず「八会とは何か」という問いが示されます。

ここでいう「会」とは、気が集まる、会するという意味です。

八会穴とは、

・臓
・腑
・気
・血
・筋
・脈
・骨
・髄

という八つの働きや組織に対して、
それぞれを代表する経穴を定めたものです。

つまり、体を八つの側面から捉え、
それぞれに重要な経穴を設定した考え方といえます。

臓会は章門

臓会は「章門(しょうもん)」です。

章門は足の厥陰肝経に属し、脾の募穴でもあります。

東洋医学では、脾は飲食物から得たものをもとに、
全身を養う働きと深く関係すると考えられています。

そのため、章門が五臓に関係する「臓会」とされています。

腑会は中脘

腑会は「中脘(ちゅうかん)」です。

第四十五難の原文では、「腑会は太倉」とあります。

太倉は胃を表す言葉とされ、
胃の募穴である中脘が六腑を代表する経穴として理解されています。

中脘は腹部中央にあり、胃や消化機能と関係の深い経穴として、
現在の鍼灸臨床でもよく使われます。

筋会は陽陵泉

筋会は「陽陵泉(ようりょうせん)」です。

陽陵泉は足の少陽胆経に属する経穴で、筋や腱など、
古典でいう「筋」の働きと深く関係すると考えられています。

そのため、筋の緊張や動きに関係する症状を考える際に重視されてきました。

髄会は絶骨

髄会は「絶骨(ぜっこつ)」です。

絶骨は、現在では一般に足の少陽胆経の「懸鐘(けんしょう)」を指します。

髄は古典医学において、骨の内部や脳などとも関係する重要な概念です。

第四十五難では、この髄を代表する会穴として絶骨が挙げられています。

血会は膈兪

血会は「膈兪(かくゆ)」です。

膈兪は足の太陽膀胱経に属し、背中にある経穴です。

古くから血に関係する病を考える際の代表的な経穴の一つとされてきました。

八会穴の中では、「血」を代表する経穴として位置づけられています。

骨会は大杼

骨会は「大杼(だいじょ)」です。

大杼も足の太陽膀胱経に属する経穴です。

第四十五難では、骨に関係する病を考えるときの代表的な会穴とされています。

脈会は太淵

脈会は「太淵(たいえん)」です。

太淵は手の太陰肺経に属し、手首の寸口付近に位置しています。

寸口は脈診を行う重要な場所です。

『難経』第一難でも、寸口の脈を診ることが重視されています。

そのため、太淵が「脈会」とされていることは、
『難経』全体の考え方を見ても非常に興味深い点です。

気会は膻中

気会は「膻中(だんちゅう)」です。

膻中は胸の中央に位置する経穴です。

東洋医学では、胸中には「宗気(そうき)」が集まると考えられています。

宗気は、呼吸や胸部の働き、声を出すことなどとも関係する重要な気です。

そのため、膻中が「気」を代表する会穴とされています。

八会穴をまとめると

八会穴は次のようになります。

・臓会 ― 章門
・腑会 ― 中脘
・筋会 ― 陽陵泉
・髄会 ― 懸鐘(絶骨)
・血会 ― 膈兪
・骨会 ― 大杼
・脈会 ― 太淵
・気会 ― 膻中

この八つが、難経第四十五難に基づく八会穴です。

第45難で大切なのは「八つを覚えること」だけではない

第四十五難を学ぶとき、八会穴の名称を暗記することに意識が向きやすくなります。

しかし、重要なのは八つの経穴を覚えることだけではありません。

第四十五難の最後には、

「熱病、内に在るものは、その会の気穴に取るなり」

という趣旨の記述があります。

これは、体の内部に熱の病がある場合、
その病がどの働きに関係しているのかを見極め、
それに対応する会穴を選ぶという考え方です。

たとえば、

筋に関係する病であれば陽陵泉。

血に関係する病であれば膈兪。

骨に関係する病であれば大杼。

というように、病の性質を考えて治療穴を選択します。

症状の場所だけではなく「何に関係する病か」を見る

第四十五難が伝えている重要な考え方の一つが、

「症状がどこに出ているかだけを見るのではない」

ということです。

同じ場所に症状があっても、その背景にある病の性質は異なる可能性があります。

そこで、

臓なのか。

腑なのか。

気なのか。

血なのか。

筋なのか。

脈なのか。

骨なのか。

髄なのか。

という視点から病の状態を考え、それに対応する会穴を選ぶわけです。

これは、東洋医学が単に痛む場所だけを見るのではなく、
体全体の働きや病の性質を捉えようとしてきたことを示しています。

八会穴から見える『難経』の体系的な考え方

八会穴は、単なる八つの重要なツボを並べたものではありません。

身体を、

臓・腑・気・血・筋・脈・骨・髄

という八つの側面から捉え、それぞれに治療の入口を設けた体系です。

古代の医家たちは、目に見える症状だけではなく、
その奥にある体の働きを分類しながら治療を組み立てようとしていました。

八会穴の考え方には、そうした東洋医学の特徴がよく表れています。

まとめ

『難経』第四十五難では、八会穴について説明されています。

八会穴とは、

臓・腑・気・血・筋・脈・骨・髄

それぞれを代表する八つの経穴です。

その目的は、単にツボの名前を覚えることではありません。

病が体のどの働きに関係しているのかを見極め、それに応じた経穴を選ぶ。

そこに第四十五難の重要な考え方があります。

八会穴を知ることで、『難経』が人の体をどのように分類し、
どのように治療へ結びつけようとしていたのかが、より分かりやすく見えてきます。

投稿者: 井島鍼灸院

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