井島鍼灸院ブログ

2026.01.02更新

鍼治療のメカニズム

 なぜ鍼治療は、自律神経や免疫に働きかけるのか?

「鍼って、どうして体にいいの?」

患者さんから、よくいただく質問です。

実は鍼治療は、感覚や反射といった 人の体にもともと備わっている仕組みを利用した、 とても理にかなった治療法です。

ここでは、鍼刺激が自律神経や免疫にどのように影響するのかを、 できるだけわかりやすくご紹介します。

鍼刺激を感じ取る「体のセンサー」

皮膚や筋肉には、 ポリモーダル受容器という感覚センサーが無数に存在します。

これは、刺激・圧・温度・痛みなどをまとめて感知する、 いわば体の見張り役です。

鍼が入ると、このセンサーが反応し、 刺激の情報は神経を通って脊髄、そして脳へと伝わります。

自律神経が整う仕組み

① 反射による自然な調整

運動をすると、自然に心拍や呼吸が変化します。 これは自律神経の「反射」によるものです。

鍼刺激も同様に、 自律神経の反射スイッチを入れる刺激として働き、

  • 内臓の働き
  • 血流
  • 体温調節

といった機能が、無理なく調整されていきます。

② 離れた場所にも影響が及ぶ

実験では、 手足のツボに鍼をすると、腹部の皮膚温度が上昇する ことが確認されています。

これは、鍼刺激が刺した場所だけでなく、 自律神経を通じて体の奥や離れた部位にも作用することを示しています。

免疫力が高まる仕組み

① 免疫を調整する物質の放出

鍼刺激により、

  • サブスタンスP(免疫を活性化)
  • CGRP(過剰反応を抑制)

といった神経由来の物質が放出されます。

これにより鍼治療は、 免疫を強くしすぎず、弱くもしない 絶妙なバランス調整を行います。

② 白血球の活性化

鍼によるごく小さな刺激をきっかけに、 ヒスタミンやセロトニンが放出され、

  • 好中球
  • マクロファージ

などの白血球が活性化し、 体を守る働きが高まります。

③ 全身の免疫へ波及

局所で起きた反応はリンパ管を通じて全身へ広がります。

研究では、

  • リンパ球の割合の増加
  • ウイルスやがん細胞を攻撃するNK細胞の活性上昇

といった変化も確認されています。

脳が司る「統合的コントロール」

鍼刺激が脳に届くと、 βエンドルフィンやドーパミンといった 心身を整える物質が分泌されます。

これらが、

  • 自律神経
  • 免疫
  • 炎症反応

を同時に調整する 統合的なコントロール機構を活性化させます。

鍼治療は、体にとって安全な
「小さな負荷(警告信号)」を与える治療です。

その刺激によって、眠っていた自然治癒力や 生体防御機構が呼び覚まされます。

無理やり治すのではなく、
本来の回復力を引き出す

それが、現代医学の視点から見た鍼治療です。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.01.01更新

その不調、今年こそ「根本から」変えてみませんか

その不調、今年こそ「根本から」変えてみませんか

肩こりや腰痛が当たり前になっていませんか。
薬を飲んでも、しばらくするとまた戻る。
「年齢のせいだから仕方ない」と、あきらめてしまっている方も多いかもしれません。

新しい年は、身体と向き合う絶好のタイミングです。

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます

岐阜市・柳ケ瀬通にございます、
井島鍼灸院 院長の井島晴彦です。

皆さまにおかれましては、健やかに新しい年をお迎えのことと、心よりお慶び申し上げます。

当院は本年も、皆さまの心と身体の健康を支え、
「根本的な改善」を目指すパートナーとして、全力で施術に取り組んでまいります。

2025年を振り返って

昨年2025年は、新たに258名の患者さんにご来院いただきました。

主なお悩みは、
肩こり・腰痛・顔面神経麻痺・突発性難聴・不妊症・うつ病・小児鍼・逆子など、多岐にわたりました。

また近年は、
全身の痛みや強い倦怠感、頭痛、顎関節症、過敏性腸症候群、パーキンソン病などのご相談も増えてきた印象があります。

多くの方が回復に向かわれたことを、私自身、本当にありがたく感じております。

YouTubeでの情報発信について

当院では、YouTube「はり治療専門チャンネル」にて、
鍼治療に関する正しい情報を積極的に発信しております。

▼ はり治療専門チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCjjbCYGGel9EJUftVjbSFcA

現在、チャンネル登録者数は1.2万人となり、ここ最近は特に大きく増えております。
これも日頃から応援してくださる皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。

2026年も「心遣い」を大切に

鍼治療が初めての方の中には、
「怖そう」「痛いのでは?」と不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、当院の鍼治療は、やさしく心地よい刺激を大切にしており、
副作用の心配もありません。

私たちは技術の研鑽はもちろんのこと、
何よりも「心遣い」を大切にしています。

患者さまが安心し、リラックスした状態で施術を受けられるよう、
スタッフ一同、丁寧で温かい対応を心がけております。

身体のサインに向き合う一年に

肩こり・頭痛・腰痛といった身近なお悩みから、
不妊症、うつ病、耳鳴り・難聴といった専門的な疾患まで、
身体はさまざまなサインを発しています。

当院では、症状を一時的に抑えるのではなく、
「なぜ起きているのか」という原因に目を向け、
心と身体のバランスを整える施術を行っています。

また施術だけでなく、日常生活の中で改善できるポイントも含め、
お一人おひとりに合ったご提案をさせていただきます。

2026年が、皆さまにとって
痛みや不調から解放され、心豊かな一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.29更新

 

のどの万能ツボ「天突」
呼吸と声を守る、体の中心ポイント

今日ご紹介するのは、
のどの万能ツボ・天突(てんとつ)です。

風邪をひいたときの、ゴロゴロした喉の違和感。
咳が止まらない、息がしづらい、胸がつかえる。

そんな不調に、
ピタリと効くのが、この「天突」なんです。

天突はどこにある?

天突があるのは、のどの根元。

左右の鎖骨をたどっていって、
その真ん中にあるくぼみ。
ちょうど喉仏から指を下にすべらせると当たるところです。

体の中心を流れる「任脈」のツボ

このツボ、じつは
「任脈(にんみゃく)」という特別なラインに属しています。

任脈は、体のど真ん中を縦に貫く大切な経絡。
陰の気をコントロールする、
いわば生命の大動脈なんです。

「天突」という名前の意味

そして、名前の由来がまた面白い。

天突という名前には、
古代の人々の感覚の鋭さが、
ぎゅっと詰まっているんです。

まず、「天」。
大空、空高くそびえるもの、
神さまのいる場所、太陽の光、自然のめぐみ。

そう、「天」は、
この世界の上の方を表す言葉です。

では、「突」はどうでしょう。

急に出る、勢いよく飛び出す、
ふくらむ、滑り出る。

思いがけず、何かが顔を出すような、
そんなイメージがあります。

つまり「天突」とは、
上の世界=天に向かって、急に何かが突き出す場所
という意味。

胸から首へ、気が現れる場所

それがどこかというと……。

そう、
胸から首へと、気管が飛び出す地点なんです。

胸の奥にある肺の気が、
スッと上にのぼって、
のどの真ん中に現れるところ。

それが、天突。

体の中心線上、
鎖骨と鎖骨を結んだ中央にあるくぼみ。

解剖学的には、
胸骨柄のすぐ上。
そのすぐ奥に、気管がのぞいています。

ここは、気の通り道
そして、息をするためのゲートでもあります。

だから、呼吸や咳に効く

だからこそ、
呼吸がしづらいとき。

咳が止まらないとき。
のどがつまるような感じがするとき。

この天突を、
やさしく刺激してあげることで、
驚くほど体がスーッと楽になるんです。

古の人たちは、
からだの構造なんて知らなくても、

自然の声と、からだの声を重ね合わせて、
このツボに「天突」という名をつけたんですね。

なんだか、ロマンを感じませんか?

天突が活躍する症状

その働きは、実に多彩。

のどや胸の不調に、
まるで駆け込み寺のように活躍するツボ。

それが、天突です。

たとえば、
ゴホゴホと止まらない咳。
ゼーゼーする喘息。
息がうまく吸えない感じ。

そんな呼吸器のトラブルに。

のどがヒリヒリ痛いとき。
声がかすれるとき。
扁桃腺が腫れて、話すのもしんどい。

そんな咽喉の炎症にも。

さらに、
バセドウ病のような甲状腺のトラブル。
ストレスで起こる嘔吐や、食道のけいれん。

さらには、
心臓の不調にまで応用されることがあるんです。

のどと胸の守り神

咳が止まらない。
痰がからんでスッキリしない。

そんな呼吸まわりの困りごとに、
この天突は、
まるで隠れた名医のように働いてくれます。

まさに、
のどと胸の守り神とも言えるツボ。

その効果、侮れません。

体の真ん中にあるからこそ、
あなたの内側から変えてくれる力が、
ここにはあるかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.27更新

 

 

なぜ正座をすると足がしびれるの?

皆さん、こんにちは。
今日は「しびれ」についてお話しします。

一言でしびれと言っても、医学的には非常に奥が深く、
末梢神経から脳へと続く「感覚伝導路」のどこかで障害が起きているサインです。

◆しびれには「危険なサイン」もあります

原因も様々で、糖尿病や神経の病気による慢性的なものから、
突然の半身麻痺などを伴う脳卒中のような、
一刻を争う「レッドフラッグ」と呼ばれる危険なものまであります。

もし、急激な手足の麻痺や、排尿障害などを伴う場合は、
動画を見ている場合ではありません。
すぐに救急の対応が必要です。

◆日常的なしびれの正体とは?

ただ、そういった緊急事態や特定の病気がないのに、
「なぜか手足がしびれる」「正座の後にジンジンする」。

今回は、こういった日常的なしびれが起きる時、
体の中で一体何が起きているのか?
その基本的なメカニズムについて、わかりやすく解説します。

◆神経を「ホース」に例えてみましょう

そもそも、なぜしびれるのでしょうか?
人間の神経を「庭の水撒きホース」だと想像してください。

脳からの命令や感覚という「水」が、
ホースを通って手足に流れています。

正座というのは、このホースを膝の裏で
ギュッと踏んづけている状態です。
さらに、血管というパイプも同時に圧迫されています。

するとどうなるか?
脳からの「動け!」という命令も届かないし、
足からの「触れているよ」という感覚も脳に戻ってきません。

つまり、一時的に「回線切断」の状態になっているんです。

◆ジンジンするのは「回復のサイン」

ここで面白いのが、あの「ジンジンする不快な感覚」が
いつ起こるか、です。

実は、圧迫されている最中は、あまりジンジンしません。
むしろ感覚がなくなります。

あの強烈なジンジンが来るのは、
足を崩して、圧迫が解けた「直後」ですよね。

あれは、止まっていた血液が一気に流れ込み、
酸欠になっていた神経が急激に息を吹き返して、
「通信再開!通信再開!」と脳に大量の信号を送り直している時の
「ノイズ」のようなものなんです。

つまり、しびれというのは、
「神経が死んでいる」のではなく、
「今、必死に生き返ろうとしている」証拠なんですね。

◆放っておいてはいけないしびれ

正座のしびれは、圧迫をやめれば治ります。
でも、もし
「何もしていないのにジンジンする」
「寝ている時も手がしびれる」

それは、体のどこかで、
ずっとホースが踏まれ続けているという
「異常事態」のサインかもしれません。

◆検査で異常なし…それでもしびれる理由

病院の検査で「脳に異常はない」と言われたけれど、
しびれが取れない。
そんなケースが多くあります。

この場合、首や肩、腰の筋肉がカチカチに固まって、
神経や血管のホースを締め付けていることが
非常に多いんです。

◆鍼灸でできること

当院の鍼治療では、
しびれている手足そのものだけでなく、
その根本原因である「ホースを踏んづけている筋肉」を探し当てます。

鍼には、深い部分の筋肉を緩め、
血流を一気に改善させる効果があります。

イメージとしては、
踏まれていたホースから足をどかして、
スムーズな流れを取り戻してあげる作業です。

◆しびれは体からのSOS

「しびれ」は、神経が助けを求めているSOSです。
「いつものことだから」と放置せず、
通信が途絶えてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。

あなたのその不快なジンジン、
鍼灸でスッキリ通してみませんか?
お待ちしています。

 

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.24更新

  

◆今から40年以上前

師匠の黒野保三先生と研究チームは、脈診に関するとても貴重な研究を全日本鍼灸学会で発表していました。

201名の脈をセンサーで記録しそのデータをフーリエ解析で細かく調べたところ、浮、沈、滑、しょく、遅、数。

この六つの脈が波形としてはっきり区別できることが分かったのです。

さらに虚証と実証の違いまでも数値として表れました。

長く「感覚的」と言われてきた脈診に、科学的な裏づけが示された瞬間でした。

 

そして時代は進み、今度はアメリカのペンシルベニア州立大学で脈診に着想を得た新しい脈診デバイスが開発されました。

この研究は2024年9月、学術誌「アドバンスト・マテリアルズ」に発表された最新成果です。

 

◆まずなぜこのデバイスが必要とされたのか

脈は人によって大きく違うだけでなく。

同じ人でも時間帯、活動、ストレスなどで大きく変化します。

そのため、今のウェアラブル機器では正確な脈のデータを取ることが難しいという問題がありました。

研究チームが参考にしたのが伝統中医学の脈診です。

中医学では、手首の、寸、関、尺。

この三つの位置に指を置き。

指の圧力を変えながら浅い脈、中くらいの脈、深い脈。

この3つを読み取ります。

位置と深さを組み合わせて多くの情報をつかむ方法です。

 

◆研究チームはこの考え方を、最新のテクノロジーで再現しました

最初のポイントはスリーディープリントで作られたセンサーアレイです。

これは、手首の複数の場所に触れ浅い層と深い層の両方から脈のデータを拾える仕組みです。

 

次のポイントは自己適応型の圧力システムです

デバイスはリストバンドのように装着すると、自動で圧力を調整し最適な脈の信号を見つけ出します。

まるで人が指で脈を診ているように圧の強弱を調整してくれます。

 

さらにこのセンサーアレイは脈の動きを、時間、位置、深さの三つの軸で記録し。

立体的な「スリーディー脈波マップ」を作ります。

 

ここに機械学習、いわゆるAIを組み合わせるとさらに面白いことができます。

集めたスリーディー脈データから。

収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈血圧。

こうした重要な数値を予測できるようになりました。

脈を測るだけで血圧まで推定できる可能性が開かれています。

 

研究チームは複数の被験者に協力してもらい、長期間の測定を行いました。

その結果、このデバイスが安定して高精度のデータを提供できることが確認されています。

 

この研究はペンシルベニア州立大学の チェン准教授。

そして、中国の厦門大学の研究者たちによる、国際共同プロジェクトです。

 

◆脈診を機械化し、標準化しようとする取り組みは、今まさに世界中で加速しています

40年以上前に日本で始まった挑戦を思うと、いま世界が大きく動き始めているこの流れの中で、私たち日本の臨床家や研究者にも、担うべき役割があると感じます。

伝統を守るだけではなく、その価値を見つめ直し、未来へつなぐために何ができるのか。

いま、その問いが静かに、しかし確かに、私たちに向けて投げかけられています。

先人が残した探究の灯を、次の世代へと渡していくために――。

その一歩を、いま踏み出す時なのかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.21更新

 

今これを読んでいて、

背中がムズッとしてきませんか?

実はかゆみは伝染するんです。

実験でも、
誰かが掻いている映像を見るだけで、
自分もムズムズすることが確認されています。

今日は、この不思議な
「かゆみ」の正体を解説します。

◆かゆみは「弱い痛み」じゃない

昔は、
優しい刺激=かゆみ
強い刺激=痛み
だと考えられていました。

でも今では、
別物だと判明しています。

皮膚の下には、
痛みの神経とは別に、
かゆみだけを感じる神経が存在します。

かゆみは、
独立したシステムなんです。

◆なぜ掻くと気持ちいいのか?

蚊に刺されて掻きむしると、
ちょっと快感がありますよね。

あれ、
実は脳がご褒美を与えているから。

掻くと脳の報酬系が働き、
セロトニンやドーパミンなど、
気持ちよさを感じる物質が分泌されます。

でも、ここに落とし穴

セロトニンは、
かゆみ神経を敏感にする作用もある。

だから、
かゆい → 掻く → 気持ちいい → もっとかゆくなる

これが止まらない
かゆみの悪循環
イッチ・スクラッチ・サイクルです。

◆鍼灸院で、かゆい場所に刺さない理由

「かゆいならそこに刺すの?」と
思われがちですが、

炎症で弱った皮膚に
鍼を刺すのは逆効果。

さらに刺激になり、
悪化のリスクがあります。

だから、
かゆい場所には刺さない

離れたところの鍼で意味あるの?
ポイントは2つ。

① 神経の門を先に閉める

かゆみ神経は、
伝わるスピードが遅く、

鍼の刺激は速い。

速い信号が先に脊髄に到達して、
「門」を閉めることで、

後から来るかゆみの信号が、
脳へ届きにくくなります。

さすって痛みが和らぐのを、
より深いレベルで行うイメージです。

② 脳と自律神経を整える

さらに鍼刺激は、
内因性オピオイド系を活性化し、

ダイノルフィンなどが分泌されて、
かゆみを抑えます。

副交感神経も優位になり、
過敏になった脳の
かゆみセンサーをクールダウン。

◆かゆみとの上手な付き合い方

「たかがかゆみ」と思われがちですが、

睡眠の質や集中力を奪い、
生活の質を大きく下げます。

悪循環にハマらないために、

冷やす・保湿するなどで、
脳の衝動を落ち着かせることが大切です。

次にどこかがかゆくなったら、

「今、脳がセロトニンで
自分を騙しにきてるな…」

そう思い出せれば、
掻く手が少し緩むかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.18更新

 

突然のドキッ、動悸の不安。なぜ起こる?

突然胸がドクッと鳴ると、「心臓が悪いのかな?」と不安になりますよね。
今日は「なぜ動悸を感じるのか?」について、ちょっと意外な5つの話をご紹介します。

1. 動悸はどこで感じているのか?

実は、動悸を感じているのは心臓ではなく です。
心臓はただ拍動しているだけで、その信号を脳がどう受け取り、どう解釈するかで、感覚の強さが変わります。

2. 脳が拍動を拡大再生することがある

脳には、体内で起きている変化を素早く察知して危険を回避するシステムがあります。
普段は意識しないような心拍の微妙な変化も、不安やストレスが高まると、脳は誇張して感じてしまうことがあります。
これを「内受容感覚の過敏性」と呼びます。

背景には脳の 島皮質 の働きがあります。島皮質は、呼吸や拍動、胃腸の動きなど、体の内側の状態を意識に上げる役割を持つ領域です。
この部分の感受性が高い人ほど、普段と同じ心拍数でも「ドキドキして苦しい」と感じやすくなります。

3. 夜に動悸が出やすい理由

多くの人が夜に動悸を感じますが、意外な理由があります。
答えは「昼間のアクセル → 夜の急ブレーキ」の反動です。

日中は緊張やプレッシャー、スマホ刺激で交感神経(アクセル役)が活発に働きます。
夜になると副交感神経(ブレーキ役)が働き始めるため、切り替えのタイミングで心臓のドキドキを特に感じやすくなります。
病気ではなく、自律神経の振り幅が大きいだけの場合が多いのです。

4. スマホの光だけで動悸が強くなる

明るい光やスマホ画面を見ると、脳の覚醒レベルが一気に上がります。
すると心臓の拍動の感じ方が強まり、ちょっとした鼓動も動悸として表面化しやすくなるのです。
夜のスマホで動悸が増えるのはそのためです。

5. 最新の対処法:心臓ではなく脳を整える

動悸を軽くするには、脳の増幅反応を落ち着かせることが効果的です。
おすすめは、最新研究でも注目されている「内受容感覚トレーニング」です。

  • ゆっくり5秒吸って5秒吐く呼吸
  • 体の内側に意識を向ける
  • 運動後に胸や呼吸の変化に気づく習慣

こうした体の中を感じる練習は、脳の回路を落ち着かせ、動悸への過敏反応を弱めてくれます。

井島鍼灸院では、一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、つらい症状の根本改善を目指しています。
お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.15更新

 

2000年の時を超えるミステリー医学書「難経」

みなさんは、東洋医学の世界に、「伝説の攻略本」とも言える不思議な書物が存在することをご存じですか?

その本が書かれたのは、今からおよそ2000年前、古代中国・後漢の時代。驚くべきことに、現代の日本で活躍する鍼灸師たちも、いまだにこの2000年前の本を片手に日々の治療を行っています。

その書物の名前は……難経です。

難経とは一体どんな本?

漢字で「難しい」に「お経」の「経」と書きます。「すごく難しいことが書いてある本」と思いがちですが、実は意味が逆です。

当時、医学界には「黄帝内経」という絶対的な教科書がありました。しかし内容が膨大で難解すぎて、医師たちも頭を抱えていたのです。

「ここはどういう意味なのか?」
「理論が複雑すぎて、実際の治療にどう使えばいいかわからない!」

そんな現場の声に応えて作られたのが、この難経です。
タイトルの「難」は「難しい」ではなく、「問答」や「疑問点」を意味します。
つまり、「医学の難問ベスト81」にズバッと回答した、最強のQ&A集だったのです。

難経がもたらした革新的なアイデア

今回は、特に注目すべき2つのアイデアをご紹介します。

1. 手首だけで全身を見抜くシステム

昔の診察では首や足の脈をチェックする必要がありましたが、難経はこう提言しました。

「手首の動脈、ここ一箇所だけで十分。ここに五臓六腑すべての情報が出ている」

今、鍼灸院で手首の脈を診てもらう場面がありますよね。あのスタイルは、実はこの本がルーツなのです。服を脱がず手首だけで内臓の状態をスキャンできる、まさに画期的な発明でした。

2. 魔法の治療ルール「虚すればその母を補う」

難経の69番目の問題「六十九難」には、こう書かれています。

例えば「肺」が弱って病気になったとします。普通なら肺を直接治療しますが、難経は違います。
「肺」を生み出す「胃腸」を元気にしなさいと言うのです。

お母さんが元気になれば、子供である肺も自然と元気になる。
木を見て森を見ずではなく、家族関係全体を見て治す──これが東洋医学の全体観です。

時代を超えて生きる知恵

どれだけ時代や技術が進歩しても、人間の根源的な「痛み」や「苦しみ」を癒やしたいという願いは変わりません。
難経は、その普遍的な願いに今も答えを与え続けています。

私たちは、難経という時を超えたバトンを受け取り、古代から現代へと続く、人の体を想う優しい心と共に生きています。
あなたもぜひ、この「伝説の攻略本」から生まれた、奥深い東洋医学の扉を開いてみてください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.15更新

 

 

顔の不調のカギは「交差点」にあった ― 下関という重要ポイント

こんにちは。井島鍼灸院です。

普段、治療の現場に立っていると、
顔面神経麻痺・三叉神経痛・顎関節症などに悩まされている方に数多く出会います。

そんな時、必ずチェックする「重要なポイント」が存在します。
そこは顔面神経や三叉神経が交差し、
咀嚼に関わる強力な筋肉が密集する、いわば「顔の交差点」です。

今回は、私たち鍼灸師が治療において重要視しているツボ、下関(げかん)について、
解剖学的な視点からその秘密をお話しします。

なぜここに「鍼」による治療が必要なのか。
その理由がきっとお分かりいただけるはずです。


◆下関の場所と、実はとても特殊な構造

まずは、場所の確認です。
「下関」は、耳の穴の前方、頬骨のアーチの下縁に位置します。

一見、簡単に見つかりそうな場所ですが、
実は体の中でも非常にダイナミックな動きをする特殊なエリアです。

口を閉じている時は深いくぼみがありますが、
口を大きく開けてみてください。
下顎頭という骨がスライドしてきて、
この穴を内側から塞いでしまいます。

つまりここは、骨と骨がすれ違う非常に狭い隙間なのです。

このさらに深部には、
顎を横に動かすための「外側翼突筋」などのインナーマッスルや、
感覚を司る三叉神経の第3枝が通っています。

表面からの指の圧力では、骨に阻まれて届かない場所。
そこに潜む「深部の緊張」や「神経の興奮」に対して、
ミリ単位の精度でアプローチできるのが、
私たちが使う「鍼」という技術なのです。


◆「下関」という名前に込められた意味

次に、「下関」という名前はどういう意味なのでしょうか?

まず「下」という字。
これは低いところや、足・腰より下の部分という意味を持つ言葉です。

そしてもうひとつの「関」。
こちらは、昔の門にかけるかんぬきを表す字です。
「木の棒を横にして門を閉じる」そんな情景が込められています。

これを体に当てはめると、
顔の横にある、あのカーブした骨――頬骨が、
まるで門のかんぬきのように横たわっている。

その頬骨のアーチの下に位置するツボ、
それが「下関」なんですね。


◆胃と顎がつながる? 東洋医学の視点

そして興味深いのは、ここが
「足の陽明胃経」という経絡に属していることです。

名前の通り、「胃」、つまり消化器系につながるラインです。

ストレスで胃がキリキリする時に、
無意識に奥歯を食いしばってしまう経験はありませんか?

胃経のトラブルは、この「下関」に、
硬さや反応として現れます。

逆に言えば、このツボを適切に治療することで、
顎局所だけでなく、
全身の自律神経や消化機能のバランスさえも整えていく。

それが、東洋医学の全体観です。


◆下関に鍼をすると、何が起こるのか

では、ここに鍼を打つと、体の中で何が起きるのでしょうか。

もっとも期待できるのは、
顎関節症や三叉神経痛、
そして顔面神経麻痺へのアプローチです。

顔面部は非常にデリケートで、
神経や血管が複雑に入り組んだ構造をしています。

だからこそ、自己判断での強いマッサージは避け、
解剖学を熟知した私たちプロフェッショナルに、
ぜひお任せください。

「下関」への一本の鍼が、
あなたの表情を、そして生活の質を、
劇的に変えるかもしれません。

顎の違和感やお顔の症状でお悩みの方は、
一度、鍼灸治療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.12更新

 

 

高齢者の慢性腰痛に鍼治療が効果的|NIHの大規模研究より

高齢者の慢性腰痛に「鍼治療」が効果的|NIHの大規模研究より
慢性腰痛は、高齢者の生活を大きく制限するつらい症状です。薬に頼ることに不安を感じる方や、長く続く痛みに悩む方へ、最新の研究結果をやさしくご紹介します。

■ 高齢者の3人に1人が悩む“慢性腰痛”
慢性腰痛は世界中で日常生活の妨げとなる代表的な問題です。特に高齢者では、3人に1人以上が慢性腰痛を抱えていると報告されています。従来の治療(痛み止め、リハビリ、注射など)は効果が限定的で、副作用や依存性の心配もあります。

■ NIHが鍼治療の効果を本格検証
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金支援による大規模研究「Back In Action」により、鍼治療が高齢者の慢性腰痛に与える効果が長期的に検討されました。研究は実際の臨床現場に近い形で行われ、信頼性の高いデータが得られています。

■ 800人参加の大規模臨床試験
研究には65歳以上の慢性腰痛患者800名が参加。参加者は以下の3グループに分けられ、3か月・6か月・12か月のタイミングで評価されました。

グループ構成
通常の医療のみ
通常医療+3か月で最大15回の鍼治療
上記に追加してさらに3か月のメンテナンス鍼治療
■ 鍼治療を受けた人は“痛みと動き”が大きく改善
結果は明確でした。鍼治療を受けたグループは、6か月・12か月の時点で次の点が改善しています。

主な改善点
痛みによる生活の制限(障害)が減少
痛みの強さが軽くなった
身体の動き(身体機能)が改善した
不安症状が減った
薬のように一時的に効くのではなく、じわりと持続的に効果が現れる傾向が見られました。

■ 副作用がほとんどない、安心して続けられる治療法
研究期間中、重大な副作用はほとんど報告されませんでした。鍼治療は侵襲性が低く、複数の持病を抱える高齢者でも比較的安全に受けられる点が大きな利点です。

■ 高齢者に特化した貴重なエビデンス
これまでの多くの鍼研究は若年層を中心に行われてきました。65歳以上に特化した大規模試験は珍しく、今回の結果は「現実の臨床現場で役立つ」信頼できる証拠として重要です。

■ 米国では保険適用の議論も
研究者らは、鍼灸師が公的保険(メディケア)に直接請求できるようになれば、治療へのアクセスが大幅に改善すると指摘しています。日本でも高齢化が進む中で、薬に頼りすぎない安全な治療法として鍼の役割が注目されるでしょう。

■ まとめ:鍼治療は現実的で続けやすい選択肢
今回の研究のポイントをまとめます。

鍼治療は高齢者の慢性腰痛に対して安全で効果的
効果は長期にわたって持続する傾向がある
痛みだけでなく、動きや不安の改善にもつながる
副作用が少なく、持病がある方でも導入しやすい
慢性腰痛でお悩みの方は、薬に頼りすぎず、体にやさしい治療法も検討してみてください。当院でも鍼治療のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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投稿者: 井島鍼灸院

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