井島鍼灸院ブログ

2025.11.19更新

現場で最も選ばれているツボ「合谷」|井島鍼灸院

現場で最も選ばれているツボ「合谷(ごうこく)」

こんにちは、井島鍼灸院です。
今日は、「現場で最も選ばれているツボ」、合谷をご紹介します。

どんなツボなの?

合谷は、「手の陽明大腸経」という経絡に属しています。
この経絡は、人さし指の先から始まり、腕・肩・首を通って、顔、そして鼻までつながっています。
つまり、頭痛・歯痛・鼻づまり・目の疲れなど、顔や頭のトラブルにとても関係が深いんです。
さらに、大腸経は「肺経」とペアになって働くため、呼吸や消化、排泄といった体の基本的な働きにも影響を与えます。

場所はどこ?

場所は、手の甲側。
親指と人さし指をグッと広げたときにできるV字のくぼみ。
そのちょうど真ん中あたり――やや人さし指寄りにあります。
軽く押すと、ズーンと響く感じがある場所。
そこが「合谷」です。

名前の意味も深い!

まず、「合」という字。
これは、「あう」「交わる」といった意味を持っています。
古い文字では、三方向から人が集まって意見を交わす、つまり「心が通じ合う」「ひとつになる」というイメージを表していました。
また、“和らぐ”とか“応える”という意味も含まれていて、まるで、バラバラだったエネルギーが一つにまとまるような――そんな「調和の象徴」でもあるんです。

次に、「谷」。
この字は、山と山のあいだにある“くぼみ”を意味します。
そこには、水が湧き出て流れ込み、やがて川へとつながっていく――まさに「気や血が流れる道」。
古典では「肉の大いに会するところを谷という」とあり、つまり“体の中で、気血が集まる場所”ということ。

この2つの字を合わせた「合谷」。
「合」は“交わり、まとまる”
「谷」は“くぼみ、流れ、集まる”
つまり――
気と血が交わり、調和するくぼみ。
そして、親指と人さし指の骨が交わるくぼみにあります。
まさに名前の通りの場所なんです。
ちょっとロマンを感じませんか?

どんな効果があるの?

合谷は、体のバランスを整え、発汗をうながすツボです。
たとえば、
「風邪のひきはじめでゾクゾクする」
そんなとき、合谷を刺激すると、体が自然に汗をかき、熱や寒気を調整してくれます。

このツボは、頭や顔まわりの血流を整えるのが得意です。
たとえば、頭痛、顔のむくみ、目の充血、目の疲れやかすみ、耳鳴りや難聴、歯の痛み、のどの痛み、こうした症状にも、合谷が活躍します。

そして内臓の不調にも。
たとえば、お腹の痛みや下痢、月経が止まったり不順になったりしたときにも、体の内側の巡りを助けてくれるんです。
さらに、肩こりや腕の痛み、背中のこわばりにも効果的。

だからこそ、このツボは「万能のツボ」と呼ばれ、痛みをやわらげ、心を落ち着け、全身を整える力を持っているんですね。
実際の治療でも、合谷はとてもよく使われるツボです。
手のひらのすぐ近くに、これほど全身に影響するツボがあるなんて――ちょっとワクワクしませんか?

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.14更新

 高齢者の慢性腰痛に鍼治療が効果的|NIHの大規模研究より

高齢者の慢性腰痛に「鍼治療」が効果的|NIHの大規模研究より

慢性腰痛は、高齢者の生活を大きく制限するつらい症状です。薬に頼ることに不安を感じる方や、長く続く痛みに悩む方へ、最新の研究結果をやさしくご紹介します。

■ 高齢者の3人に1人が悩む“慢性腰痛”

慢性腰痛は世界中で日常生活の妨げとなる代表的な問題です。特に高齢者では、3人に1人以上が慢性腰痛を抱えていると報告されています。従来の治療(痛み止め、リハビリ、注射など)は効果が限定的で、副作用や依存性の心配もあります。

■ NIHが鍼治療の効果を本格検証

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金支援による大規模研究「Back In Action」により、鍼治療が高齢者の慢性腰痛に与える効果が長期的に検討されました。研究は実際の臨床現場に近い形で行われ、信頼性の高いデータが得られています。

■ 800人参加の大規模臨床試験

研究には65歳以上の慢性腰痛患者800名が参加。参加者は以下の3グループに分けられ、3か月・6か月・12か月のタイミングで評価されました。

グループ構成

  • 通常の医療のみ
  • 通常医療+3か月で最大15回の鍼治療
  • 上記に追加してさらに3か月のメンテナンス鍼治療

■ 鍼治療を受けた人は“痛みと動き”が大きく改善

結果は明確でした。鍼治療を受けたグループは、6か月・12か月の時点で次の点が改善しています。

主な改善点

  • 痛みによる生活の制限(障害)が減少
  • 痛みの強さが軽くなった
  • 身体の動き(身体機能)が改善した
  • 不安症状が減った

薬のように一時的に効くのではなく、じわりと持続的に効果が現れる傾向が見られました。

■ 副作用がほとんどない、安心して続けられる治療法

研究期間中、重大な副作用はほとんど報告されませんでした。鍼治療は侵襲性が低く、複数の持病を抱える高齢者でも比較的安全に受けられる点が大きな利点です。

■ 高齢者に特化した貴重なエビデンス

これまでの多くの鍼研究は若年層を中心に行われてきました。65歳以上に特化した大規模試験は珍しく、今回の結果は「現実の臨床現場で役立つ」信頼できる証拠として重要です。

■ 米国では保険適用の議論も

研究者らは、鍼灸師が公的保険(メディケア)に直接請求できるようになれば、治療へのアクセスが大幅に改善すると指摘しています。日本でも高齢化が進む中で、薬に頼りすぎない安全な治療法として鍼の役割が注目されるでしょう。

■ まとめ:鍼治療は現実的で続けやすい選択肢

今回の研究のポイントをまとめます。

  • 鍼治療は高齢者の慢性腰痛に対して安全で効果的
  • 効果は長期にわたって持続する傾向がある
  • 痛みだけでなく、動きや不安の改善にもつながる
  • 副作用が少なく、持病がある方でも導入しやすい

慢性腰痛でお悩みの方は、薬に頼りすぎず、体にやさしい治療法も検討してみてください。当院でも鍼治療のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.12更新

 

逆子の治療でよく使われるツボ「至陰(しいん)」のご紹介

今日は、逆子の治療でよく使われるツボ──至陰をご紹介します。
この動画を見ていただくと、

  • どうして足の小指のツボで逆子が回転するのか?
  • 至陰を使ったときの逆子の改善率はどれくらいか?
  • 当院の逆子の改善率を上げるための工夫

この3つがわかります。ぜひ最後までご覧ください。

◆ 至陰とはどんなツボ?

人の体には、「経絡(けいらく)」というエネルギーの通り道があります。
その中でも全身をめぐる膀胱経(ぼうこうけい)という流れがあり、
その終点が、この「至陰」です。

ここで陽のエネルギーが終わり、次の腎経(じんけい)という陰のエネルギーへと切り替わります。
つまり、体の中でも陰と陽が入れ替わる境目
それが、至陰なのです。

◆ 場所

足の小指の爪の外側の角。
爪の生え際から、ほんの2ミリほど外側にあります。

◆ 「至陰」という名前の意味

「至」という字には、「届く」「極める」という意味があります。
つまり、流れが目的地に到達するその終点をあらわしています。
一方の「陰」は、地の気──つまり大地のエネルギーを象徴します。
そしてこの世界のバランスを保つ、陰陽二つの力のうちのひとつです。

では「至陰」とは?
「至」は行き着く、「陰」は少陰(腎経)のこと。
膀胱経のエネルギーが体の末端であるこのツボに到達し、
ここから陰のエネルギーである腎経へとつながっていく。

まさに──
エネルギーのバトンが渡される場所。
それが「至陰」なんです。

◆ 逆子の治療での働き

至陰は、昔から逆子の治療で有名なツボです。
妊娠30週から34週ごろにお灸をして、
赤ちゃんが自然と頭を下に向けるよう促す方法として使われてきました。

今のところ、すべてのメカニズムが完全に解明されたわけではありません。
しかし、至陰への刺激によって

  • 子宮の緊張がゆるむ
  • 血流が増える
  • 胎動が活発になる

といった変化が起こり、赤ちゃんが自然に回転しやすい状態になることが分かってきています。

また東洋医学では、至陰は「膀胱経」という全身を巡る経絡の終点にあります。
この経絡は、子宮や生殖器のバランスを整えるルートでもあります。
その流れを整えることで「気」と「血」の巡りが良くなり、
赤ちゃんが自然と動きやすい状態になると考えられています。

◆ 逆子以外の効果

このツボの働きは、逆子の改善だけではありません。
至陰は体の巡りを整える力がとても強いツボです。

頭の熱を下げ、腰から下の冷えをあたため、
体の内と外、上と下をつなぐ重要なポイント。
風邪、頭痛、腰痛、婦人科の不調まで──まさに全身を結ぶツボです。

◆ 当院の逆子改善率を上げる工夫

冒頭の質問、「当院の逆子の改善率を上げるための工夫は?」にお答えします。

まず、お灸をする前に、赤ちゃんが回りやすい状態に整える癒やしの鍼を行います。
そのうえで、お灸の種類や回数、刺激の強さを何度も試しながら、
もっとも効果的な方法を見つけ出しました。

さらに、一人ひとりの体質やお腹の状態に合わせて、
細かく調整しながら施術を行っています。

その積み重ねの結果、
当院の逆子の改善率は90%以上となっています。

◆ まとめ

至陰は、体の巡りを正し、
お母さんと赤ちゃんの力を引き出す小さなスイッチ。
本当に頼りになるツボなんです。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.10更新

新年馬

いつもご利用いただき、心より感謝しております。

年末は12月30日(火)まで営業します。

12/31から1/4までお正月休み

新年は1月5日(月)から元気いっぱいでスタートいたします。どうぞよろしくお願いいたします!

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.09更新

寝違えの正体と原因

多くの人が一度は経験したことがある「寝違え」。

一般的には「変な寝姿勢のせい」と思われがちですが、実はそれだけではありません。

朝起きたら首が動かない!後ろを振り向こうとしただけで「ズキッ」と痛い…ときには肩甲骨や背中まで痛みが広がったり、腕や指先がしびれることさえあります。じっとしていても違和感が続くことがあり、本当にツラい症状です。

寝違えのメカニズム

  • 筋肉や関節包の血流不足:不自然な姿勢が長時間続くことで筋肉が酸素不足になり硬直します。
  • 筋緊張と微小な炎症:強い収縮や血流障害によって筋線維や周囲に細かな傷がつくことがあります(肉離れのような大きな損傷ではなく微小レベルです)。
  • 筋膜の滑走障害:筋膜がこわばって動きが悪くなり、首を動かしたときに引っかかるような痛みが出ます。

鍼治療が寝違えに効果的な理由

  • 局所の血液循環を促し、酸素や栄養を届きやすくすることで炎症の回復を早めます。
  • 鍼刺激によって筋肉がゆるみ、首や肩の動きがスムーズになります。
  • 脳内で痛みを和らげる物質が分泌され、鎮痛効果が期待できます。
  • 首だけでなく肩甲骨や背中、腕に関連するツボにも施術することで、痛みの広がりを抑えます。

寝違えを防ぐには

  • 首や肩を軽くストレッチしておく
  • 自分に合った枕や寝具を選ぶ
  • 首や肩を冷やさないようにする
  • ストレスをためず、筋肉の緊張を防ぐ

寝違えの初期対応

朝起きて首が痛いときは、まず冷やして安静にすることが大切です。10分程度を目安に、つらくなったら中止しましょう。

痛みが出てから48時間を過ぎたあたりからは、逆に温めて血流を良くすることで回復が早まりやすくなります。

まとめ

寝違えは血流・筋肉・姿勢・ストレス・生活習慣が複雑に絡み合って起こる現象です。そのため、日常生活や環境の工夫でしっかり予防できます。「寝違えなんてよくあること」と軽く見ず、体からのサインとして受け取ってあげましょう。

井島鍼灸院では、一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、つらい症状の根本改善を目指します。お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.06更新

曲池(きょくち)—肘のくぼみに秘められた万能のツボ

こんにちは、井島鍼灸院です。今日は、解剖学的にもわかりやすく、東洋医学的にも重要なツボ「曲池(きょくち)」をご紹介します。

曲池の場所

曲池は「手の陽明大腸経」に属する経穴で、指先から腕、肩を通って顔や鼻までつながるラインの途中に位置しています。

肘を直角に曲げたとき、肘の外側にできるシワの端に小さなくぼみがあります。触れると「ここかな」とすぐにわかる場所です。

名前の由来

「曲池」という名前は、とてもわかりやすい意味を持っています。

  • …まがる、かがむ、曲げる
  • …水をためる場所、池や溝

肘を曲げたときにできるくぼみを指しているため、まさに名前そのままの位置です。

さらに東洋医学では、この「池」は単なるくぼみではなく、気や熱がたまる場所としても考えられてきました。肘という体の曲がり角にできた池が、エネルギーの集まるポイントとされたのです。

曲池の効能と使われ方

曲池は、古くから皮膚のトラブルに用いられてきました。

  • 皮膚の乾燥、かゆみ
  • 虫がはっているような不快感
  • できもの、湿疹

しかし、曲池の働きは皮膚に留まりません。東洋医学では全身に影響を与える重要なツボとして、次のような症状にも活用されます。

  • 呼吸器系:扁桃炎、気管支炎
  • 肩や腕の痛み、五十肩、首・後頭部のこり、頭痛
  • 血流や神経系:高血圧、脳血流異常、中風後遺症、半身のしびれ、物忘れ、神経の疲れ
  • 心の状態:不安定な気分や精神的疲労
  • その他:歯の痛み、目の不調、胃腸のけいれん、月経不順

つまり、「体の曲がり角にある池」という名前の通り、全身のさまざまな流れを整える力を持つ、とても重要なツボなのです。

まとめ

曲池は、解剖学的にわかりやすく、かつ東洋医学的にも重要なツボです。

  • 肘の外側のくぼみに位置する
  • 「気や熱がたまる場所」として全身の調整に活用される
  • 皮膚や呼吸器、血流、神経、心、さらには消化器まで幅広く対応

身近な体の部位に、これだけ豊かな意味と機能が重ねられているのは、東洋医学の面白さの一つです。

井島鍼灸院では、ツボや鍼灸の知識をわかりやすくお伝えしています。
「元気になりたい」「東洋医学に興味がある」という方は、ぜひ鍼灸を生活に取り入れてみてください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.02更新

体温のコントロールができない…
― 自律神経の乱れと鍼治療による改善症例 ―

暑い夏の日なのに、なぜか寒くて服を何枚も重ね着してしまう…。
急に汗が噴き出して、体温のコントロールが全然できない…。

病院で検査を受けても「原因がわからない」と言われてしまう…。

もし、あなたがそんなつらい症状でお困りなら、ぜひ今日のお話をお読みください。

師匠の症例から学んだ、体温調節異常の改善

私が修行時代に、師匠である黒野保三先生が治療された症例を学会で発表させていただきました。
今回はその記録をもとに、どのように症状が改善していったのかをご紹介します。

臨床体験レポート
体温調節機能の異常に対する鍼治療の検討

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/49/2/49_2_293/_pdf/-char/ja

患者さんのプロフィール

60代の男性。
製紙会社で営業をされていた、とても几帳面で真面目な方でした。

初診時のお話では、20年前に結核にかかり、治ってから体温調節に違和感を感じるようになったとのこと。
当時は仕事が忙しく、症状も軽かったためそのままにしていたそうです。

ところが、60歳で定年を迎え、生活が一変。
長年続けた仕事という「軸」を失ったことで、今まで気にならなかった症状が前面に出てきてしまいました。

定年という環境の変化が大きなストレスとなり、体温調節の乱れが悪化していったのです。

初診時の症状

真夏日でも「寒い」と感じる

腹巻き+服を4枚重ねてもまだ寒い

でも着込むと急に暑くなってドッと汗が出る

まるで体温のスイッチが壊れたようだと話されていました。

夜もさらに大変で、

布団をかけても背中がゾクゾクする

寝汗がひどく、背中にあせも

夜中に何度もトイレに起きて眠れない

さらに――
寒くなると肩甲骨の間がズキッと痛み、手足も冷たい。
食欲がなく、特に朝は食べられず、2年間で6キロ減

そして何よりもつらかったのが、精神的な苦しみでした。

2年間で7~8件も病院を回られたそうですが、結果はすべて「原因不明」。
「自分の体に一体何が起きているんだろう…」という不安と恐怖、
そして、誰にも理解されない孤独感

お話を通して、その苦しみが痛いほど伝わってきました。

自律神経と体温の関係

私たちの体温は、脳の「視床下部」という場所が自律神経を通じて全身に指令を出すことで保たれています。

自律神経は、血管・汗腺・筋肉・鳥肌・脂肪組織などを自動的にコントロールしており、
まさに“体の温度管理システム”です。

しかし、自律神経はストレスに非常に敏感。
心理的・社会的なストレスが強く影響します。

この患者さんの場合、定年という生活の変化がストレスとなり、
自律神経のバランスが崩れて体温調節ができなくなってしまったのです。

体温が乱れる → 不安が増す → さらに自律神経が乱れる
この悪循環をどこかで断ち切る必要がありました。

治療の方針

治療は急激な変化を狙わず、じっくり整える長期戦
刺激は軽めにし、少しずつ効果を積み重ねていく方針を取りました。

使用したのは黒野式全身調整基本穴

使用した主なツボ

中脘・期門・天枢・気海(お腹)

天柱・風池(首)

大杼・肩井(肩)

肺兪・厥陰兪・脾兪・腎兪・大腸兪(背中)

肩甲骨の痛みには**円皮鍼(貼るタイプの鍼)**を使用。
治療は週2回のペースで行いました。

さらに、毎日のセルフケアとして乾布摩擦をおすすめ。
皮膚刺激が自律神経を整える効果があるんです。

改善の経過

治療効果を「数字」で確認するため、体調の自己採点や基礎体温を記録しました。
「なんとなく良い気がする」ではなく、数字で変化を実感できるようにしたのです。

1週間後

体温調節の異常は変わらず。ただし「胃の調子が少し良くなった」。

1ヶ月後

寒さはまだ強いが、手足の冷えに変化が出始める。

1ヶ月半後

「手足が少し楽になってきた」と改善の兆し。

2ヶ月後

「体調が少し良くなった」と実感。
1時間の散歩もできるようになりました。

2ヶ月半後(21回目)

朝食が食べられるようになる

寝つきが良くなる

冷えと背中の痛みが軽減

体温の変動が落ち着き、汗の出方も穏やかに

3ヶ月後

「体全体の調子が良くなってきた」と笑顔で話してくださいました。

胃腸の調子が安定し、肩甲骨の痛みも軽くなり、基礎体温の変動も安定。
**「胃の不調」「急な体温変化」「手足の冷え」**など、自律神経に関係する項目が大きく改善していました。

改善の理由

鍼治療は自律神経のバランスを整え、血流やホルモンの働きを調整します。
つまり、体が本来もっている自然治癒力を引き出す治療法です。

さらに、3ヶ月という時間をかけてじっくり整えたことが、慢性的な不調に対して効果を発揮しました。

強い刺激ではなく、体に優しい刺激で、
負担をかけずに少しずつ体を立て直す。

毎日の乾布摩擦も大きな助けになり、
「数字で良くなっている」と確認できたことが、
安心感とモチベーションにつながりました。

おわりに

すべての症例が劇的に改善するわけではありません。
しかし、長年の臨床経験や国内外の研究からも、
自律神経の乱れに対して鍼治療は有効だと考えています。

今回の症例が、同じような症状でお悩みの方にとって、
少しでも希望の光になれば幸いです。

もし、あなたも
「体温のコントロールがうまくいかない」
「冷えや汗に悩まされている」
そんなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.10.28更新

今日は、足の代表的なツボのひとつ三陰交をご紹介します。

三陰交は、足の内くるぶしの上にある有名なツボで、
婦人科の不調や冷え、むくみ、さらには消化器系のトラブルまで──幅広く効果が期待できる、
とても重要なツボです。

経絡と位置
三陰交は「足の太陰脾経」に属しますが、
その名の通り「脾経」「肝経」「腎経」という三つの陰の経絡が交わる場所にあります。
位置は、内くるぶしの上3寸、スネの骨の内側のきわ。
骨のふちをたどっていくと少し凹んだよ うに感じるところです。

ツボの名前の由来
まず「三」という字。
ただ3つという数を表すだけではありません。
古代中国の考え方では、三は「木」、つまり肝に関わる数字でもあり、
組み合わせる交わるといった意味も含まれているんです。
次に「陰)」。
これは太陽が当たらない側を表します。山の北側や川の南側のように、光が届きにくいところ。
さらに、夜、月、体の内側、五臓や深い部分を象徴する言葉でもあります。
そして「交)」。
これは交わる、会う、入り混じるという意味。
まさに何本もの流れがひとつの場所に集まる交差点をイメージすると分かりやすいですね。
では「三陰交」とはどういうことか?
それは──3つの陰の経絡が交わる場所という意味です。
具体的には、足の太陰脾経、少陰腎経、そして厥陰肝経。
この3つの経絡が集まって交わる場所だからこそ、「三陰交」と名付けられたんです。

つまり、このツボは体の中でも特別なエネルギーの交差点。
だからこそ婦人科の不調、冷えやむくみ、消化器や自律神経まで
──全身の幅広いトラブルに応用されてきたわけです。

ツボの名前には、ただの言葉ではなく、
古代の人たちが自然や宇宙をどう捉えていたのかという深い意味が込められています。
名前の由来を知ると、三陰交というツボがより神秘的で、ちょっとワクワクしてきませんか?

効果・適応症
三陰交は、とくに婦人科や生殖に関する不調に強いツボです。
たとえば、月経不順や生理中の出血トラブル、妊娠中の不安定な胎動や逆子(横産)など。

また、古典には「血暈して人事不省」という表現も見られます。
これは貧血や血の巡りが悪くて意識がもうろうとするような状態を指していて、
そういうときはツボを補って血流を盛んにする。
逆に、生理が止まってしまったり子宮に血が滞っている場合には、
瀉、(余分なものを取り除く刺激)で通じをよくする、と考えられていました。

婦人科だけではありません。
食欲不振、消化不良、胃酸過多、下痢やお腹の痛みなど、消化器系の不調にも効果が期待できます。
さらに、腎臓の病気や尿道炎、足のだるさや冷え、下肢の内側の痛み、湿気でお腹を下しやすい体質など──。
本当に幅広い症状に使われてきたんです。

つまり三陰交は、「女性の体調管理の要」であると同時に、「全身の巡りを調えるツボ」。
昔の人が大切にしてきた理由が、ここからもよくわかりますね。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.10.24更新

過敏性腸症候群の鍼治療症例|井島鍼灸院

過敏性腸症候群(IBS)の鍼治療症例

こんにちは、井島鍼灸院です。
今回は、過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)に対する鍼治療の一症例をご紹介します。

過敏性腸症候群とは?

炎症や腫瘍などの明確な異常がないのに、
お腹の痛み・張り・便秘・下痢などが続く病気です。

命に関わることはありませんが、長引くことで学校や仕事に集中できなくなり、
生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。

高校生の患者さんのケース

今回の患者さんは、進学校に通う高校2年生。
大学受験を意識し始めた頃から、プレッシャーを感じるようになり、
お腹の張りやガスが気になるようになりました。

授業中にお腹が鳴ることが怖くて、食事を減らしたり、
ヨーグルトを試したりと、できることを一人で工夫していたそうです。

しかし、高校3年生の6月ごろには、
お腹の痛みや動悸、汗が止まらなくなるほどの緊張状態に。
ついに学校に行けなくなり、病院で「過敏性腸症候群」と診断されました。

鍼灸治療を受けるまでの経緯

薬を変えても症状は改善せず、
「このままでは終わりたくない」と思った患者さんは、
インターネットで鍼灸を知り、井島鍼灸院に来院されました。

初診時の状態

症状のつらさを示すNRS(Numerical Rating Scale)は9。
お腹のガスや張り、緊張が強く、日常生活も困難な状態でした。

体全体が硬く、背中や首にも強い張りがあり、
まさに心身が限界に近い状態でした。

治療の方針

井島鍼灸院では、2つの方針で治療を行いました。

  • ① 黒野式全身調整基本穴による全身のバランス調整:
    自律神経や腸の働きを整え、体の回復力を高める。
  • ② 局所治療:
    合谷(ごうこく)・百会(ひゃくえ)・膻中(だんちゅう)などのツボを使い、
    お腹の緊張をやわらげる。

治療の経過

治療を続けるうちに、8回目で症状が少し軽くなり、
22回目には「半分くらい楽になった」と話されました。

40回を過ぎるころには、お腹の張りや緊張がやわらぎ、
表情にも落ち着きが戻ってきました。

そして最終43回目には──
腹痛は消え、お腹のガスや音も以前の半分以下に。
食欲も戻り、体力も回復しました。

鍼灸で期待できること

過敏性腸症候群は、腸だけでなく、脳と自律神経のバランスが深く関わる病気です。
鍼治療によって体全体が整うことで、腸の動きが安定し、
緊張や不安も軽くなっていきます。

こうして、悪循環が断ち切られていくのです。

まとめ

現在、薬だけで十分に改善しない方も多い中で、
鍼治療は副作用が少なく、安全に体を整える方法として注目されています。

今回のように、薬では改善しなかった症状が軽くなり、
再び前を向けるようになったケースも少なくありません。

過敏性腸症候群で悩んでいる方へ。
鍼治療が、心と体をつなぎ直すきっかけになるかもしれません。

 

投稿者: 井島鍼灸院

2025.10.21更新

ヘバーデン結節とは?~指の第一関節の変形~

こんにちは。今回は、「指の第一関節が腫れて痛い」「指先がゴツゴツして曲がってきた…」といったお悩みを持つ方に、ぜひ知っていただきたいお話です。

その症状は、ヘバーデン結節と呼ばれる中高年女性に多い手の関節の変形かもしれません。ヘバーデン結節は、指の第一関節に起こる変形性関節症で、特に40〜50代以降の女性、閉経の前後に発症しやすいのが特徴です。

主な症状

  • 指先の関節が腫れて痛む
  • 曲げ伸ばしのたびに違和感がある
  • 進行すると関節がゴツゴツと盛り上がる
  • 関節の上に半透明のコブ(ミューカスシスト)ができることも

なぜ起こるの?―原因の背景

ヘバーデン結節の発症には、女性ホルモン自律神経が大きく関わっています。

  • エストロゲン(女性ホルモン)は関節の軟骨や骨、滑膜を守る働きがありますが、閉経前後に減少すると関節が傷みやすく、修復もしづらくなる。
  • 自律神経の乱れ(ストレス・疲労・睡眠不足など)は血流やホルモン分泌に影響し、関節の炎症や痛みを長引かせる。

ミューカスシストの注意点

ヘバーデン結節で見られる透明な水ぶくれ状のコブ「ミューカスシスト」は、絶対に自分で潰してはいけません
細菌感染を起こし、指全体に炎症が広がる危険があります。

鍼治療にできること

1. 痛みの軽減

鍼でこわばった筋肉をゆるめることで血流が改善。関節や周囲に酸素や栄養が届き、痛みがやわらぎます。

2. 炎症をしずめる

腫れや熱っぽさ、動かしたときの違和感を落ち着かせます。

3. 関節の動きをスムーズに

痛みが減ると筋肉もリラックスし、指が動かしやすくなります。

4. 自律神経・ホルモンバランスのサポート

鍼は体のリズムを整え、ストレスを和らげ睡眠の質もアップ。ホルモンバランスも整い、関節の回復力を支える全身の土台が強くなります。

5. 進行の抑制と予防

変形した関節を元に戻すことはできませんが、痛みや炎症の進行を抑えることは可能です。早めにケアを始めることで、多くの方が「痛みが楽になった」「指のこわばりが減った」と実感しています。

まとめ

ヘバーデン結節は進行性の疾患ですが、早めのセルフケアと専門的な治療で、痛みや変形の進行を抑えることが可能です。手指の変化に気づいたら放置せず、ぜひ早めに専門家に相談してください。
あなたの手が、また軽やかに動く日常を取り戻せるよう、できることから始めていきましょう。

投稿者: 井島鍼灸院

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