井島鍼灸院ブログ

2025.12.18更新

 

突然のドキッ、動悸の不安。なぜ起こる?

突然胸がドクッと鳴ると、「心臓が悪いのかな?」と不安になりますよね。
今日は「なぜ動悸を感じるのか?」について、ちょっと意外な5つの話をご紹介します。

1. 動悸はどこで感じているのか?

実は、動悸を感じているのは心臓ではなく です。
心臓はただ拍動しているだけで、その信号を脳がどう受け取り、どう解釈するかで、感覚の強さが変わります。

2. 脳が拍動を拡大再生することがある

脳には、体内で起きている変化を素早く察知して危険を回避するシステムがあります。
普段は意識しないような心拍の微妙な変化も、不安やストレスが高まると、脳は誇張して感じてしまうことがあります。
これを「内受容感覚の過敏性」と呼びます。

背景には脳の 島皮質 の働きがあります。島皮質は、呼吸や拍動、胃腸の動きなど、体の内側の状態を意識に上げる役割を持つ領域です。
この部分の感受性が高い人ほど、普段と同じ心拍数でも「ドキドキして苦しい」と感じやすくなります。

3. 夜に動悸が出やすい理由

多くの人が夜に動悸を感じますが、意外な理由があります。
答えは「昼間のアクセル → 夜の急ブレーキ」の反動です。

日中は緊張やプレッシャー、スマホ刺激で交感神経(アクセル役)が活発に働きます。
夜になると副交感神経(ブレーキ役)が働き始めるため、切り替えのタイミングで心臓のドキドキを特に感じやすくなります。
病気ではなく、自律神経の振り幅が大きいだけの場合が多いのです。

4. スマホの光だけで動悸が強くなる

明るい光やスマホ画面を見ると、脳の覚醒レベルが一気に上がります。
すると心臓の拍動の感じ方が強まり、ちょっとした鼓動も動悸として表面化しやすくなるのです。
夜のスマホで動悸が増えるのはそのためです。

5. 最新の対処法:心臓ではなく脳を整える

動悸を軽くするには、脳の増幅反応を落ち着かせることが効果的です。
おすすめは、最新研究でも注目されている「内受容感覚トレーニング」です。

  • ゆっくり5秒吸って5秒吐く呼吸
  • 体の内側に意識を向ける
  • 運動後に胸や呼吸の変化に気づく習慣

こうした体の中を感じる練習は、脳の回路を落ち着かせ、動悸への過敏反応を弱めてくれます。

井島鍼灸院では、一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、つらい症状の根本改善を目指しています。
お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.15更新

 

2000年の時を超えるミステリー医学書「難経」

みなさんは、東洋医学の世界に、「伝説の攻略本」とも言える不思議な書物が存在することをご存じですか?

その本が書かれたのは、今からおよそ2000年前、古代中国・後漢の時代。驚くべきことに、現代の日本で活躍する鍼灸師たちも、いまだにこの2000年前の本を片手に日々の治療を行っています。

その書物の名前は……難経です。

難経とは一体どんな本?

漢字で「難しい」に「お経」の「経」と書きます。「すごく難しいことが書いてある本」と思いがちですが、実は意味が逆です。

当時、医学界には「黄帝内経」という絶対的な教科書がありました。しかし内容が膨大で難解すぎて、医師たちも頭を抱えていたのです。

「ここはどういう意味なのか?」
「理論が複雑すぎて、実際の治療にどう使えばいいかわからない!」

そんな現場の声に応えて作られたのが、この難経です。
タイトルの「難」は「難しい」ではなく、「問答」や「疑問点」を意味します。
つまり、「医学の難問ベスト81」にズバッと回答した、最強のQ&A集だったのです。

難経がもたらした革新的なアイデア

今回は、特に注目すべき2つのアイデアをご紹介します。

1. 手首だけで全身を見抜くシステム

昔の診察では首や足の脈をチェックする必要がありましたが、難経はこう提言しました。

「手首の動脈、ここ一箇所だけで十分。ここに五臓六腑すべての情報が出ている」

今、鍼灸院で手首の脈を診てもらう場面がありますよね。あのスタイルは、実はこの本がルーツなのです。服を脱がず手首だけで内臓の状態をスキャンできる、まさに画期的な発明でした。

2. 魔法の治療ルール「虚すればその母を補う」

難経の69番目の問題「六十九難」には、こう書かれています。

例えば「肺」が弱って病気になったとします。普通なら肺を直接治療しますが、難経は違います。
「肺」を生み出す「胃腸」を元気にしなさいと言うのです。

お母さんが元気になれば、子供である肺も自然と元気になる。
木を見て森を見ずではなく、家族関係全体を見て治す──これが東洋医学の全体観です。

時代を超えて生きる知恵

どれだけ時代や技術が進歩しても、人間の根源的な「痛み」や「苦しみ」を癒やしたいという願いは変わりません。
難経は、その普遍的な願いに今も答えを与え続けています。

私たちは、難経という時を超えたバトンを受け取り、古代から現代へと続く、人の体を想う優しい心と共に生きています。
あなたもぜひ、この「伝説の攻略本」から生まれた、奥深い東洋医学の扉を開いてみてください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.15更新

 

 

顔の不調のカギは「交差点」にあった ― 下関という重要ポイント

こんにちは。井島鍼灸院です。

普段、治療の現場に立っていると、
顔面神経麻痺・三叉神経痛・顎関節症などに悩まされている方に数多く出会います。

そんな時、必ずチェックする「重要なポイント」が存在します。
そこは顔面神経や三叉神経が交差し、
咀嚼に関わる強力な筋肉が密集する、いわば「顔の交差点」です。

今回は、私たち鍼灸師が治療において重要視しているツボ、下関(げかん)について、
解剖学的な視点からその秘密をお話しします。

なぜここに「鍼」による治療が必要なのか。
その理由がきっとお分かりいただけるはずです。


◆下関の場所と、実はとても特殊な構造

まずは、場所の確認です。
「下関」は、耳の穴の前方、頬骨のアーチの下縁に位置します。

一見、簡単に見つかりそうな場所ですが、
実は体の中でも非常にダイナミックな動きをする特殊なエリアです。

口を閉じている時は深いくぼみがありますが、
口を大きく開けてみてください。
下顎頭という骨がスライドしてきて、
この穴を内側から塞いでしまいます。

つまりここは、骨と骨がすれ違う非常に狭い隙間なのです。

このさらに深部には、
顎を横に動かすための「外側翼突筋」などのインナーマッスルや、
感覚を司る三叉神経の第3枝が通っています。

表面からの指の圧力では、骨に阻まれて届かない場所。
そこに潜む「深部の緊張」や「神経の興奮」に対して、
ミリ単位の精度でアプローチできるのが、
私たちが使う「鍼」という技術なのです。


◆「下関」という名前に込められた意味

次に、「下関」という名前はどういう意味なのでしょうか?

まず「下」という字。
これは低いところや、足・腰より下の部分という意味を持つ言葉です。

そしてもうひとつの「関」。
こちらは、昔の門にかけるかんぬきを表す字です。
「木の棒を横にして門を閉じる」そんな情景が込められています。

これを体に当てはめると、
顔の横にある、あのカーブした骨――頬骨が、
まるで門のかんぬきのように横たわっている。

その頬骨のアーチの下に位置するツボ、
それが「下関」なんですね。


◆胃と顎がつながる? 東洋医学の視点

そして興味深いのは、ここが
「足の陽明胃経」という経絡に属していることです。

名前の通り、「胃」、つまり消化器系につながるラインです。

ストレスで胃がキリキリする時に、
無意識に奥歯を食いしばってしまう経験はありませんか?

胃経のトラブルは、この「下関」に、
硬さや反応として現れます。

逆に言えば、このツボを適切に治療することで、
顎局所だけでなく、
全身の自律神経や消化機能のバランスさえも整えていく。

それが、東洋医学の全体観です。


◆下関に鍼をすると、何が起こるのか

では、ここに鍼を打つと、体の中で何が起きるのでしょうか。

もっとも期待できるのは、
顎関節症や三叉神経痛、
そして顔面神経麻痺へのアプローチです。

顔面部は非常にデリケートで、
神経や血管が複雑に入り組んだ構造をしています。

だからこそ、自己判断での強いマッサージは避け、
解剖学を熟知した私たちプロフェッショナルに、
ぜひお任せください。

「下関」への一本の鍼が、
あなたの表情を、そして生活の質を、
劇的に変えるかもしれません。

顎の違和感やお顔の症状でお悩みの方は、
一度、鍼灸治療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.12更新

 

 

高齢者の慢性腰痛に鍼治療が効果的|NIHの大規模研究より

高齢者の慢性腰痛に「鍼治療」が効果的|NIHの大規模研究より
慢性腰痛は、高齢者の生活を大きく制限するつらい症状です。薬に頼ることに不安を感じる方や、長く続く痛みに悩む方へ、最新の研究結果をやさしくご紹介します。

■ 高齢者の3人に1人が悩む“慢性腰痛”
慢性腰痛は世界中で日常生活の妨げとなる代表的な問題です。特に高齢者では、3人に1人以上が慢性腰痛を抱えていると報告されています。従来の治療(痛み止め、リハビリ、注射など)は効果が限定的で、副作用や依存性の心配もあります。

■ NIHが鍼治療の効果を本格検証
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金支援による大規模研究「Back In Action」により、鍼治療が高齢者の慢性腰痛に与える効果が長期的に検討されました。研究は実際の臨床現場に近い形で行われ、信頼性の高いデータが得られています。

■ 800人参加の大規模臨床試験
研究には65歳以上の慢性腰痛患者800名が参加。参加者は以下の3グループに分けられ、3か月・6か月・12か月のタイミングで評価されました。

グループ構成
通常の医療のみ
通常医療+3か月で最大15回の鍼治療
上記に追加してさらに3か月のメンテナンス鍼治療
■ 鍼治療を受けた人は“痛みと動き”が大きく改善
結果は明確でした。鍼治療を受けたグループは、6か月・12か月の時点で次の点が改善しています。

主な改善点
痛みによる生活の制限(障害)が減少
痛みの強さが軽くなった
身体の動き(身体機能)が改善した
不安症状が減った
薬のように一時的に効くのではなく、じわりと持続的に効果が現れる傾向が見られました。

■ 副作用がほとんどない、安心して続けられる治療法
研究期間中、重大な副作用はほとんど報告されませんでした。鍼治療は侵襲性が低く、複数の持病を抱える高齢者でも比較的安全に受けられる点が大きな利点です。

■ 高齢者に特化した貴重なエビデンス
これまでの多くの鍼研究は若年層を中心に行われてきました。65歳以上に特化した大規模試験は珍しく、今回の結果は「現実の臨床現場で役立つ」信頼できる証拠として重要です。

■ 米国では保険適用の議論も
研究者らは、鍼灸師が公的保険(メディケア)に直接請求できるようになれば、治療へのアクセスが大幅に改善すると指摘しています。日本でも高齢化が進む中で、薬に頼りすぎない安全な治療法として鍼の役割が注目されるでしょう。

■ まとめ:鍼治療は現実的で続けやすい選択肢
今回の研究のポイントをまとめます。

鍼治療は高齢者の慢性腰痛に対して安全で効果的
効果は長期にわたって持続する傾向がある
痛みだけでなく、動きや不安の改善にもつながる
副作用が少なく、持病がある方でも導入しやすい
慢性腰痛でお悩みの方は、薬に頼りすぎず、体にやさしい治療法も検討してみてください。当院でも鍼治療のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.08更新

 

過敏性腸症候群に対する鍼治療の一症例

こんにちは。井島鍼灸院です。

今回は、過敏性腸症候群に対する鍼治療の1症例をご紹介します。
命に関わることはありませんが、症状が長く続くと、生活の質(QOL)を大きく下げてしまう病気です。

◆過敏性腸症候群ってどんな病気?

過敏性腸症候群は、炎症や腫瘍のような器質的な異常はないのに、

  • お腹が痛くなる
  • お腹が張る
  • 便秘や下痢

といった症状が長く続く病気です。

命に関わることはほとんどありませんが、学校や仕事に集中できなくなったり、生活に支障が出たりします。特に思春期の若者に多く、ストレスが症状を悪化させることも知られています。

◆今回の患者さん

進学校に通う高校2年生の男子。
大学受験が近づくにつれ少しずつプレッシャーを感じるようになりました。

その頃から便秘気味になり、お腹にガスがたまるようになったそうです。
ときにはガスが漏れたり、お腹が鳴ってしまうこともあり、人に話すのが恥ずかしく、朝ごはんや昼食を減らしたり、ヨーグルトを食べたりと自分で工夫していました。

しかし高校3年生の新学期を迎えるころには、授業中にお腹が痛くなり、
「また鳴るかもしれない」と思うと胸がドキドキして汗が止まらなくなるように。
6月ごろには教室で座っているだけでもつらくなり、両親に相談。病院で「過敏性腸症候群」と診断を受けました。

薬を飲んでも改善せず、複数の病院を回って薬を変えても症状は安定せず。
学校に行こうとすると胸が締めつけられるように苦しくなり、体が動かなくなる日もありました。
心療内科で安定剤を処方されましたが、服用に抵抗があり通院は続けられませんでした。

担任の先生に相談して席を一番後ろに変えてもらったものの、6月の終わりには学校に行けない状態に。それでも「このままでは終わりたくない」と家で勉強を続けながら、少しでも体を整えたいと願っていました。

◆鍼治療を受けるきっかけ

そんなとき、インターネットで鍼灸のことを知り、「これなら何か変えられるかもしれない」と希望を感じ、勇気を出して井島鍼灸院に来院されました。

◆初診時の所見

初診時、患者さんは「お腹にガスが溜まって漏れてしまう」「大きな音でお腹が鳴る」といった悩みを抱えていました。
授業中もお腹の張りや痛みが気になり、常に緊張した状態が続いていました。

体の状態を確認すると、お腹全体が硬く、背中や首のあたりにも強い張りがありました。
顔色も少し黄色みがかり、体全体のエネルギーが消耗している印象でした。

症状のつらさを示すために「NRS」という方法を使用。
0を「まったく症状がない」、10を「これまでで一番つらい状態」として自己評価してもらうものです。
今回の患者さんは「9」と回答。日常生活にも大きな支障が出るほど苦しい状態でした。

◆鍼治療の方針

井島鍼灸院では、次の2つを目標に治療しました。

① 生体制御療法

黒野式全身調整基本穴13カ所を刺激し、体のバランスを整え、自律神経や消化管の働きを安定させます。

② 局所療法

お腹の症状を和らげるツボ(合谷、百会、膻中)に鍼を行います。
筋膜への刺激は軽めにして、体に負担をかけないようにしました。

生活面では、早寝早起きで生活リズムを整える、脂っこいものや刺激物を控える、といったアドバイスも行いました。

◆治療経過

治療は夏休み期間を中心に43回行いました。

  • 8回目 → NRS 7:症状の回数が少し減少
  • 15回目 → NRS 6:お腹の不快感がさらに楽に
  • 22回目 → NRS 5:症状は半分くらいに減るが、学校復帰はまだ難しい
  • 40回目 → NRS 4:自習室で学習を続けながら卒業可能とわかり、精神的にも安定

治療を重ねるうちに、お腹の張りや緊張がやわらぎ、顔の表情にも落ち着きが戻りました。

最終43回目の治療では、腹痛はすっかり消え、お腹のガスや音も以前の半分以下に改善。食欲も戻り、体力も回復しました。
現在では、笑顔で日々を過ごせるようになっています。

◆考察

過敏性腸症候群は、腹痛やお腹の張り、便秘や下痢などの症状が続く病気です。
命に関わることはほとんどありませんが、症状が長引くと日常生活に大きな影響を与えます。

ストレスや不安などで体の調整機能が乱れると症状が悪化します。
症状は便秘型、下痢型、混合型などに分かれます。原因としては以下が考えられています。

  • 腸の動きがうまくいかないこと
  • 腸が刺激に敏感になっていること
  • 緊張や不安など心理的ストレス
  • 食べ物に対する体の反応の異常

今回の患者さんは、大学受験のストレスが大きな原因でした。
お腹にガスが溜まる、お腹から大きな音が出るという症状があると、授業中に緊張してさらに症状が出る。
その結果、動悸や発汗などの緊張による体の反応まで起こっていました。

悪循環を断つために、体全体のバランスを整える根本治療と、お腹の症状を直接改善する局所治療を組み合わせました。その結果、初診時9だった症状が最終的には4まで改善。薬もほとんど使わず、鍼治療だけで改善した可能性が高いと考えられます。

過敏性腸症候群は腸だけでなく、脳や神経系も関わる病気です。鍼治療によって体全体のバランスが整うと、腸の動きが安定し、緊張や不安も和らぎ、自律神経の働きも改善。症状を悪化させる複数の要素が改善されると考えられます。

病院では決定的な治療法がなく、薬を順番に試すしかありません。その点、鍼治療は副作用も少なく、安全に症状を和らげる方法として注目されています。

今回の症例は、学校に通えないほどの状態から症状が大幅に軽減し、卒業の見通しが立つまで回復。過敏性腸症候群の患者に鍼治療が有益となり得る可能性を示す症例の一つです。

すべての症例が劇的に改善するわけではありませんが、長年の経験や国内外の研究論文からも、過敏性腸症候群に対して鍼治療は有効だと考えられます。
今回の症例報告が、同じような症状で悩む方の参考になれば幸いです。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.04更新

  

突発性難聴からの回復──警察官試験に合格した一例

こんにちは。井島鍼灸院です。

今回は、突発性難聴に悩んだ若い男性が、鍼治療をきっかけに聴力を取り戻し、夢だった警察官試験に合格した、ひとつの症例をご紹介します。

◆ある朝、突然の異変

ある朝。目を覚ますと、左耳の聞こえが、まったく違っていました。

耳鳴りがして、耳が詰まったような感覚。さらに、特定の音が響いて、苦痛を感じます。

翌日、慌てて耳鼻科を受診。診断は「突発性難聴」。

ステロイド点滴やビタミン剤の治療が始まりましたが、症状は一向に改善せず、通院先を変えても結果は同じでした。

高音が70デシベル以上でないと聞こえない。耳鳴りは消えず、耳の詰まりや響きもそのまま。

医師から「改善の見込みはない」と告げられ、治療をあきらめざるを得ませんでした。

聴力が条件に満たず、警察官試験を受ける資格すら失われたのです。

◆一年半後、再び見えた希望

それから一年半後。夢をあきらめきれなかった彼は、当院の鍼治療を知り、希望を託して来院されました。

初診時、左耳の難聴、耳鳴り、耳の詰まりに加え、手足の冷え、首や肩の張りも強く、全身の血流が滞っている状態でした。

◆治療内容

そこで行ったのが、体全体を整える「生体制御療法」と、耳まわりの「局所治療」です。

全身十三カ所のツボを使い、バランスを整えながら、耳の周囲では、角孫、耳門、聴宮、聴会、翳風などのツボに鍼を行いました。

治療は、週二回、約二か月間。

◆回復の経過

五回目で、手足の冷えが少し軽くなり、八回目には、耳の響きが和らぎ始めました。

十二回目、左耳の詰まりが減り、十五回目には、聴力が四十デシベルに改善。

そして十七回目──聴力検査で、左耳が正常範囲(25デシベル)に回復しました。

耳鳴りも、寝る前に軽く残る程度。顔色や体の冷えも改善し、全身の血流が整いました。

◆夢の実現

その後、彼は警察官試験に挑戦。見事、合格されました。

発症から一年半という難治例での改善は、非常に貴重なケースです。

◆鍼治療の可能性

もちろん、すべての方が同じように回復するわけではありません。ですが、最新の研究でも、鍼治療を取り入れたグループは、聴力の改善率が約15%高くなることが報告されています。

鍼治療は、突発性難聴に対しても、体の内側から回復を助ける、有効な手段のひとつです。

今回の症例が、同じ症状で悩む方の希望になれば幸いです。

◆井島鍼灸院の取り組み

井島鍼灸院では、一人ひとりの体質に合わせた施術で、つらい症状の根本改善を目指しています。

お気軽にご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.12.01更新

新年馬

いつもご利用いただき、心より感謝しております。

年末は12月30日(火)まで営業します。

12/31から1/4までお正月休み

新年は1月5日(月)から元気いっぱいでスタートいたします。どうぞよろしくお願いいたします!

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.29更新

  

体温調節の乱れ ― 原因不明の不調が鍼治療で改善した症例

暑い夏の日なのになぜか寒くて、

服を何枚も重ね着してしまう…。
逆に、少し動くと急に汗が噴き出して止まらない。
体温のコントロールがうまくできない。

病院で検査をしても「原因がわからない」と言われてしまう。
もし、あなたが同じような悩みをお持ちなら、
今日のお話を、ぜひ最後まで聞いてください。

◆ 師匠・黒野保三先生の治療記録

これは、私が修行時代に、師匠・黒野保三先生の治療症例を
学会で発表させていただいた時の記録です。

今回の患者さんは60代の男性。
20年ほど前に結核を患い、治ってからなんとなく体温の調節に違和感を感じていたそうです。

当時は仕事が忙しく、症状も軽かったため、そのままにしていました。
ところが、60歳で定年を迎えたあと、生活リズムががらりと変わりました。
その環境の変化がストレスとなり、体温調節の乱れが一気に悪化していったと考えられます。

◆ まるで体温のスイッチが壊れたように

真夏の30度を超える日でも「寒い」と感じる。
服を4枚重ねてもまだ冷える。
でも着込みすぎると、今度は急に汗がドッと出てしまう。
まるで体温のスイッチが壊れたようだとおっしゃっていました。

夜もつらい。布団をかけても背中がゾクゾクして寒く、寝汗でシーツがびっしょり。
手足はいつも冷たく、食欲もなく、朝は特に食べられない。
気づけば2年間で6キロも体重が減ってしまっていました。

そして何よりつらかったのは心の苦しみです。
2年間で7~8件の病院を回っても、どこでも「原因不明」。
「自分の体に、一体何が起きているんだろう…」
不安と孤独がつのり、精神的にも限界に近い状態でした。

◆ 体温調節と自律神経の関係

ここで少し、体温調節の仕組みを説明します。

私たちの体温は、脳の「視床下部」が自律神経を通じて、
血管や汗腺、筋肉などに指令を出し、一定に保っています。

しかしこの自律神経は、環境の変化や心理的な負担がかかると、
バランスが崩れ、コントロールがうまくいかなくなります。

この患者さんの場合、定年という環境変化が引き金になり、
自律神経の乱れが体温の不調として現れたと考えました。

◆ 治療の方針と取り組み

治療は急激な変化を狙わず、じっくり整える長期戦。
黒野式全身調整基本穴を使い、刺激は軽めに。
週2回のペースで治療を進めました。

さらに、乾布摩擦で皮膚を刺激し、自律神経を整えるよう促しました。
また、体温の記録を取り、体調を数字で「見える化」するようにしました。

小さな変化でも「前より良くなっている」と感じられることが、
回復への大きな力になります。

◆ 改善の経過

1ヶ月後、まだ寒さはありましたが、手足の冷えがやわらぎました。
1ヶ月半後には「少し楽になってきた」と笑顔が見られるように。
2ヶ月を過ぎるころには、朝ごはんが食べられるようになり、
冷えや寝汗も軽減。夜もぐっすり眠れるようになりました。

3ヶ月を迎えるころには、体温の変動が小さくなり、全身の調子が整ってきました。

◆ まとめ

鍼治療は、自律神経を調整し、体の自然治癒力を引き出す治療です。

今回の症例が、同じように体温の乱れや自律神経の不調でお悩みの方にとって、
希望を持つきっかけになれば幸いです。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.26更新

 

養生訓 ― 三百年前の日本が教える「健康長寿の極意」

こんにちは、井島鍼灸院です。

古の日本に、いまなお輝きを放つ健康長寿の最強メソッドが記されていたのを知っていますか?

今日は、今からおよそ三百年前。
江戸時代に書かれた、日本最古の健康本とも言われる『養生訓』をご紹介します。

◆ 貝原益軒先生とは

著者は、儒学者であり、本草学者でもあった貝原益軒先生。
なんと八十五歳まで、元気に生きた人物です。
まさに健康長寿の達人でした。

◆ 養生訓とは

養生訓は、健康と長寿のための生活ガイドブック。
全八巻にわたって、体だけでなく、心のあり方にも深く触れています。

たとえば――

  • 儒教的な思想と、養生の意義や心身の在り方の基本を伝える「総論」
  • 控えめな食事、飲酒・喫煙・性欲の節度を教える「飲食の章」
  • 耳・目・口・鼻などの衛生管理、口腔衛生の重要性を説く「五官の章」
  • 病気を防ぐための心得と、医者の選び方をまとめた「慎病」
  • 薬の効能と害、使用法の心得にも触れる「用薬」
  • 高齢者や子どものケアや鍼灸法を説いた「養老」

どの章も、今聞いても驚くほど現代的な内容です。

◆ 益軒先生の考え方

益軒先生はこう言っています。
「自分の身体は父母から授かり、自分の子孫へと受け継ぐもの。だから慎み、感謝して使うべきだ」と。

つまり、健康とは“自分を大切に扱う生き方”そのものなんです。

欲望のままに生きるのではなく、節度を守り、感謝を忘れず。
天命を受け入れながら、穏やかに生きること。

具体的には、
バランスのとれた食事、良質な睡眠、適度な運動、
そして心の安定(ストレスを避け、喜びを持つこと)が重要とされます。

その積み重ねこそが、長寿につながる。
そう説いています。

◆ 現代に通じる養生の知恵

実はこの教え、今の私たちにもピッタリなんです。

  • 夜更かしせず、早寝早起きを心がけること
  • 暴飲暴食を避け、旬の食材を楽しむこと
  • ストレスを溜めず、日々の中に喜びを見つけること
  • 清潔を保ち、体を冷やさないこと

まるで現代の健康法や予防医学そのものですね。

冷えを避けて体を温める。
適度に動き、怠けすぎない。
まさに、鍼灸の考え方とも深く通じています。

◆ 健康長寿の秘密

当時の平均寿命は四十歳にも満たなかった時代。
そんな中で、貝原益軒先生は八十五歳まで、寝たきりにもならず、元気に生涯を終えました。

その秘密こそ、養生訓に書かれた、心と体を整える生活の知恵だったのです。

◆ 三百年前からのメッセージ

養生訓は、ただの古い健康書ではありません。
日々の食事や休息、そして心の持ち方を見直すための、
生き方の教科書なんです。

三百年前から受け継がれる、日本の知恵。
忙しい現代だからこそ、ゆっくりと、
自分の体と心に、耳を傾けてみませんか?

「穏やかに、感謝とともに生きる」――
それが、貝原益軒先生が伝えた真の養生です。

投稿者: 井島鍼灸院

2025.11.23更新

 

 

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# 朝、最初の一歩がズキッと痛い…その原因は?

「朝、最初の一歩がズキッと痛い」
「長く立っているとかかとがジンジンする」
そんな足の裏の痛みはありませんか?

その原因の多くは **足底腱膜** という場所にあります。

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## 足底腱膜とは?

足底腱膜は、かかとから足指のつけ根までピンと張っている、強くて分厚い膜。
歩くたびにバネのように伸び縮みしながら衝撃を吸収し、**土踏まずの形を保つ重要な組織** です。

ところが、長時間の立ち仕事や運動で負担がかかりすぎると、
かかとや親指のつけ根のあたりに痛みが出てしまいます。
これが **「足底腱膜炎」** です。

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# 最新研究でわかった!本当の原因とは?

これまで足底腱膜炎といえば
「炎症で腱膜が硬くなる」と考えられてきました。

しかし最新の超音波検査を使った研究では、なんと **逆のこと** が分かってきたのです。

### ▶ 実際には「硬くなる」のではなく、柔らかくなる

つまり、腱膜の **軟化** が起こっているのです。

この研究では「**超音波剪断波エラストグラフィー**」という特殊な装置を使用し、
足底腱膜の硬さを測定しました。

その結果、足底腱膜炎の方では **かかとの骨に付着する部分の弾性が健康な人より低下** していることが確認されました。

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## 朝の第一歩が痛い理由

足裏の組織が柔らかく(プヨプヨに)なって衝撃を吸収できず、
**かかとの骨に直接負荷がかかる**
これが「朝の第一歩で痛い」症状の正体です。

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# なぜ腱膜が軟化するのか?

足底腱膜は歩くたびに衝撃を吸収するため、かかとと足指のつけ根の間でピンと張り、クッションのように働きます。

しかし繰り返しの負荷によって、腱膜の中に **微小損傷** が発生します。
最初は自然に修復されますが、足底腱膜は血流が少ないため回復が追いつきません。

そのまま損傷が積み重なると、

* コラーゲン線維が乱れる
* 強さやしなやかさが失われる
* 組織が変性し、弾力がなくなる(軟化)

という状態に陥ります。

さらに、軟化した腱膜では
**痛みのもとになる物質が過剰に出てしまうこと** も確認されています。

つまり…

### 「炎症で腫れて痛い」のではなく

### 「弱った腱膜が負担に耐えられない」

という状態です。

イメージするなら、
**使いすぎて伸びきってしまったゴムのような状態**。
これが足底腱膜炎の痛みの本質です。

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# では、どうすれば改善できるのか?

大切なのは、
**弱くなった腱膜をどう元気にするか**。

鍼治療では、損傷した腱膜付近の血流を改善し、修復を促します。
組織が再生すれば弾力と強さを取り戻し、
痛みの原因そのものが解消されていきます。

根本から **しなやかで強い足裏** を取り戻すアプローチです。

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## 朝の一歩が軽くなる未来へ

朝の一歩が軽くなる。
歩くことがまた楽しくなる。

そんな未来をあなたの足にも取り戻しましょう。

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# 井島鍼灸院の施術

井島鍼灸院では、
一人ひとりの体質や状態に合わせた施術で、
つらい症状の **根本改善** を目指します。

足底腱膜炎でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 井島鍼灸院

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小さな細い鍼で、大きな幸せを。JR「岐阜」駅より車で7分 / 無料駐車場完備最寄りバス停:岐阜バス「柳ヶ瀬西口」小さな細い鍼で、大きな幸せを。JR「岐阜」駅より車で7分 / 無料駐車場完備最寄りバス停:岐阜バス「柳ヶ瀬西口」
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