井島鍼灸院ブログ

2026.07.21更新

 

『黄帝内経・霊枢』経脈篇とは何か
東洋医学の「全身をつなぐ身体観」

皆さんこんにちは。
はり治療専門チャンネルです。

今回は、『黄帝内経・霊枢』第十篇にあたる「経脈篇」についてお話しします。

経脈篇は、東洋医学における経絡理論の中心とも言える、非常に重要な篇です。

もし「九鍼十二原」が、鍼治療の基本理念を示した篇だとすれば、この「経脈篇」は、

気血はどこを流れ、
なぜ症状が起こり、
どこを治療するのか

を体系的に説明した、人体ネットワーク理論の中核と言えます。

経脈篇は「ツボの並び」だけを説明しているわけではない

経脈篇では、人体を巡る十二経脈について詳しく説明されています。

これは、現在の鍼灸でも基本となっている十二の経絡体系です。

ただし、ここで大切なのは、経脈篇が単に「ツボの並び」を説明しているわけではない、
という点です。

どこから始まり、
どこを通り、
どの臓腑とつながり、
どのような症状が現れ、
身体のどこに異常が出るのか。

経脈篇では、こうした内容が非常に詳細に論じられています。

つまり経脈とは、単なる線やルートではなく、
身体全体の働きや病の現れ方を理解するための重要な考え方なのです。

経脈を理解することは、治療の核心である

経脈篇には、非常に有名な言葉があります。

「経脈者、所以能決死生、処百病、調虚実、不可不通。」

読み下すと、

経脈は、生死を決し、百病を処し、虚実を調える所以なり。通ぜざるべからず。

という意味になります。

簡単に言えば、

経脈を理解することは、
生死に関わる状態を見極め、
さまざまな病を理解し、
虚実を判断し、
治療を行ううえで欠かせない。

ということです。

古代の医家たちは、経脈を単なる理論としてではなく、
臨床の核心として捉えていました。

どの経脈に異常があるのか。
その異常はどの臓腑や身体機能と関係しているのか。
どの部位に症状として現れているのか。

これらを読み解くことが、治療の土台になると考えられていたのです。

「是動病」と「所生病」という考え方

経脈篇では、「是動病」と「所生病」という考え方も登場します。

大まかに言うと、

是動病とは、その経脈の変動によって現れる症状。
所生病とは、その経脈が関わる臓腑や身体機能に関連して現れる症状。

そのように理解されています。

たとえば胃経では、顔、歯、胃、脚まで症状が連動すると説明されます。

これは、東洋医学では「胃の不調は胃だけに現れる」とは考えない、
ということです。

胃に関係する経脈の流れに沿って、
顔や口、歯、喉、胸腹部、脚などにも変化が現れると考えます。

つまり東洋医学では、症状を一か所だけで見るのではなく、
全身のつながりの中で理解しようとするのです。

現代的な視点との共通点

経脈篇に書かれている内容は、現代医学の言葉そのものではありません。

しかし現代でも、身体を全体として捉える考え方は少しずつ広がっています。

たとえば、

関連痛。
内臓体性反射。
筋膜のつながり。
自律神経ネットワーク。
脳と身体の相互作用。

こうした考え方には、
経脈篇の身体観と一部通じる部分があるのではないかと考えられます。

もちろん、経絡そのものの実体が現代科学で完全に解明されているわけではありません。

しかし、身体は単なる部品の集まりではなく、
神経、血流、筋膜、免疫、内臓、脳機能などが複雑に連動していることは、
現代の研究でも重要視されています。

その意味で、経脈篇が示す「全身のつながりを見る」という視点は、
今なお非常に興味深いものです。

気血が巡る「流注」という考え方

経脈篇では、気血が十二経脈を順番に巡る「流注」という概念も説明されています。

流注とは、経脈の流れの順序を示す考え方です。

肺経から始まり、
大腸経、胃経、脾経、心経、小腸経、膀胱経、腎経、心包経、三焦経、胆経、肝経へと巡り、
最後は再び肺経へ戻る。

このように、身体全体が一つの循環するシステムとして捉えられています。

東洋医学では、身体の一部だけを切り離して見るのではなく、
全体の流れの中で状態を判断します。

ある場所に出ている痛みや不調も、
別の経脈や臓腑の働きと関係している場合があると考えるのです。

経脈篇が伝えている身体観

経脈篇の本質は、

人間の身体は、バラバラの部品ではなく、全体がつながっている

という思想です。

だから東洋医学では、局所だけでなく、全身の流れを見ます。

痛みがある場所だけを見るのではなく、
どの経脈と関係しているのか。
どの臓腑の働きと関係しているのか。
身体全体のバランスはどうなっているのか。

そうした視点から、治療方針を考えていきます。

ここに、鍼灸には西洋医学とは少し違う、独自の身体の見方があります。

まとめ

『黄帝内経・霊枢』の経脈篇は、東洋医学における経絡理論の中心となる篇です。

そこでは、十二経脈の流れだけでなく、臓腑との関係、症状の現れ方、
虚実の判断、治療の考え方までが体系的に述べられています。

経脈篇が伝えているのは、身体を部分ではなく、
全体のつながりとして見るという視点です。

現代科学でも、身体は神経、筋膜、血流、免疫、自律神経、脳機能などが
複雑に関わり合うシステムとして理解されつつあります。

その意味で、経脈篇の身体観は、古典でありながら、
現代の臨床にも多くの示唆を与えてくれる内容だと感じます。

鍼灸治療では、目の前の症状だけでなく、
その背景にある全身のつながりを大切にします。

それこそが、経脈篇が今に伝えている大切なメッセージではないでしょうか。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.19更新

 

慢性痛は「脳が痛みを覚えている」こともあります

突然ですが、
人間は「痛みを感じるのが上手くなる」ことがあります。

そう聞くと、少し不思議に感じるかもしれません。

しかし、長引く慢性痛では、患部そのものの問題だけでなく、
脳の優れた適応能力が裏目に出ているケースもあります。

本来、脳はとても学習能力の高い器官です。
自転車の乗り方を覚えたり、楽器の演奏が上達したりするように、
繰り返し経験したことを記憶し、反応しやすくなっていきます。

実は、痛みもこれと似た仕組みで「学習」されることがあります。

脳は痛みを学習することがある

痛みの信号が何度も脳に送られ続けると、痛みを伝える神経の通り道が強化され、
信号が伝わりやすくなってしまうことがあります。

最初は細いけもの道のようだった神経の通り道が、何度も使われることで整備され、
やがて高速道路のようになっていくイメージです。

この痛みの高速道路ができてしまうと、服が擦れた、気圧が変わった、
少し動かしたといった些細な刺激でも、痛みとして脳に伝わりやすくなることがあります。

つまり、体に大きな異常がなくても、脳や神経が過敏になっていることで、
痛みが続いてしまう場合があるのです。

脳は痛みを「先読み」することもある

さらに痛みの学習が進むと、脳は痛みを先読みするようになります。

たとえば、階段を上るたびに膝が痛かった経験を繰り返すと、
実際に膝へ大きな負担がかかる前から、
階段を見ただけで脳が痛みを予測してしまうことがあります。

これは、梅干しを見るだけで唾液が出るのと似ています。

過去の経験によって、脳が反射的に反応してしまうのです。

そのため慢性痛では、単に「痛い場所だけ」を見るのではなく、
脳や神経がどのように痛みを記憶しているのかを考えることも大切になります。

痛みの学習は、少しずつ解除できる

では、一度痛みを覚えてしまった脳は、ずっとそのままなのでしょうか。

決してそうではありません。

脳が変化する力は、一方向ではありません。
痛みを学習することがある一方で、安全な経験を積み重ねることで、
痛みの反応を少しずつ弱めていくことも可能です。

このように、脳が覚えてしまった過剰な反応を少しずつ解除していくことを、
「アンラーニング」と呼びます。

痛みの高速道路を、少しずつ元のけもの道に戻していくようなイメージです。

当院で大切にしている4つのアプローチ

当院では、慢性痛に対して、脳や神経に「もう安全だよ」と教え直していくことを大切にしています。

主に次の4つの視点からサポートしていきます。

1. 痛みの仕組みを知ること

まず大切なのは、患者さんご自身が痛みの仕組みを理解することです。

長引く痛みには、患部の問題だけでなく、脳や神経の過敏さが関わっている場合があります。

このことを知るだけでも、原因不明の痛みに対する不安が少し和らぎ、
脳の過剰な警報反応が落ち着きやすくなります。

私が施術中に痛みの仕組みをお話ししているのは、このためです。

「なぜ痛いのか」が少しでも理解できると、
痛みに対する恐怖がやわらぎ、回復への第一歩になります。

2. 安全な実績を少しずつ作ること

慢性痛では、「動かすとまた痛くなるのではないか」という不安が強くなることがあります。

そのため、いきなり無理に動かすのではなく、
痛みが強くならない範囲で少しずつ体を動かしていくことが大切です。

小さな範囲でも、

「動かしても大丈夫だった」
「少し歩いても悪化しなかった」
「前より怖くなかった」

という安全な経験を積み重ねることで、脳は少しずつ安心を学習していきます。

3. 鍼灸による生理学的な反応を引き出すこと

鍼や灸の心地よい刺激は、痛みの信号とは別の感覚として脳や神経に伝わります。

この刺激が先に伝わることで、脊髄にある「痛みの門」が閉じ、
痛みの信号が伝わりにくくなると考えられています。

また、鍼灸刺激によって心身がリラックスしやすくなり、
脳が過敏な状態から少しずつ落ち着いていくことも期待できます。

慢性痛では、ただ痛みを抑えるだけでなく、
脳や神経が安心しやすい状態を作ることが大切です。

鍼灸は、そのきっかけづくりとして役立つ可能性があります。

4. 心身の緊張をゆるめること

「この痛みは治らないのではないか」
「また悪くなるのではないか」

こうした不安やストレスは、痛みをさらに強く感じさせることがあります。

心と体はつながっています。

精神的な緊張が続くと、筋肉もこわばりやすくなり、
血流も悪くなり、痛みに敏感な状態が続きやすくなります。

鍼灸で体のこわばりをゆるめることは、
心の緊張をやわらげる助けにもなります。

体が少し楽になることで、気持ちも落ち着き、
脳が「安全」を感じやすくなっていきます。

慢性痛は、正しく向き合うことが大切です

慢性痛は、単純な原因だけで起こるものではありません。

患部の状態、神経の過敏さ、脳の記憶、不安、ストレス、生活習慣など、
さまざまな要因が複雑に関わっています。

もちろん、痛みの中には医療機関での検査や治療が必要なものもあります。

その一方で、検査では大きな異常が見つからないのに痛みが続く場合、
脳や神経が痛みを学習してしまっている可能性も考えられます。

そのような痛みに対しては、痛みを無理に消そうとするだけでなく、
脳に少しずつ安全を再学習させていくことが大切です。

慢性痛は、決して「気のせい」ではありません。

脳や神経が一生懸命に体を守ろうとして、
少し過敏になりすぎている状態ともいえます。

その過敏な反応を、正しい理解と適切な刺激、
そして安全な経験の積み重ねによって、少しずつやわらげていく。

それが、慢性痛と向き合ううえで大切な考え方だと思います。

 

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.17更新

みなさんは、
「鼻がつまるだけで、こんなにつらいのか」
と感じたことはありませんか。
呼吸がしにくい。
頭がぼーっとする。
匂いが分からない。
実は東洋医学には、
こうした鼻の不調に深く関わる代表的なツボがあります。
それが
迎香です。
迎香は、
手の陽明大腸経に属する経穴で、
この大腸経の流れの終点にあたる重要な場所です。
大腸経は、腕から顔へと上がり、
最後に鼻の横にたどり着きます。
そしてここから、
足の陽明胃経へと経気が受け渡される。
つまり迎香は、
腕から来た気が、顔面へと集まる交差点
のような場所なのです。

では、なぜ大腸経が鼻と関係するのでしょうか。
東洋医学では、
肺と大腸は表裏関係にあるとされます。
そして肺は、
呼吸と皮膚、そして嗅覚を司る臓。
鼻は「肺の竅」と呼ばれ、
外界とつながる重要な門です。
迎香はまさに、
その門のそばに位置するツボ。
名前の由来も興味深く、
「迎」は迎え入れる、
「香」は香りを意味します。
つまり迎香とは、
「香りを迎え入れる穴」。
嗅覚と呼吸の入り口を整えるツボ、
という意味が込められているのです。

位置は、
小鼻の外側、ほうれい線のくぼみ。
解剖学的に見ると、
顔面の重要な神経や血管が集まる場所でもあります。
三叉神経第2枝、
顔面神経の枝、
顔面動脈。
これらが走るため、
刺激によって鼻周囲の血流や神経反応に影響を与えやすい部位と考えられています。

古典では、
迎香は「鼻疾患一切に用いる」とまで言われます。
鼻炎、鼻づまり、副鼻腔炎、嗅覚低下。
さらに
上歯痛、顔面神経麻痺、三叉神経痛など、
顔面トラブル全般にも応用されてきました。
ここで面白いのが、
迎香は禁灸穴とされることが多い点です。
顔面のデリケートな部位であり、
熱刺激には注意が必要と古くから考えられてきました。
古典の臨床家たちが、
安全性まで観察していたことが分かります。

さらに興味深いのが、
「鼻輪経」という考え方。
大腸経の気は、
鼻の周囲をぐるりと巡り、
人中や目頭付近で他経絡と交わるとされます。
まるで鼻を囲むように
気が循環するイメージです。
このため迎香は、
単なる鼻づまりのツボではなく、
顔面全体の気の巡りを左右するポイントとして扱われてきました。

現代でも、
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎への鍼治療研究で、
迎香は頻繁に使われる代表穴です。
古典の知恵と現代研究が、
同じ場所に注目している。
ここに、東洋医学の面白さがあります。

もし、
「鼻は単なる通り道ではない」
と考えたらどうでしょう。
呼吸、嗅覚、免疫、
そして脳への酸素供給。
鼻の状態は、
全身状態のバロメーターでもあります。
迎香は、
その入り口に立つ門番のようなツボ。
顔にありながら、
全身に影響を及ぼす可能性を秘めています。

小さな一点に、
古代からの観察と理論が詰まっている。
それが、迎香というツボです。
次に患者さんの鼻症状を見るとき、
このツボの背景を思い出すと、
また違った視点が見えてくるかもしれません。

 

 

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.15更新

黄帝内経・霊枢「官鍼篇」とは?
2000年前に体系化されていた“鍼の使い分け”

こんにちは。
井島鍼灸院 です。

今回は、黄帝内経 『霊枢』第七篇「官鍼篇(かんしんへん)」についてお話しします。

もし『九鍼十二原』が、

「何を治療するのか」

を示した基本原則だとすれば、

『官鍼篇』は、

「どう刺すのか」

を教える、実践的な技術書とも言える篇です。

「官鍼」とは何か

「官鍼」の「官」には、

役割
担当
司るもの

という意味があります。

つまり官鍼とは、

「病や状態に応じて、役割の異なる刺法を使い分ける」

という考え方です。

現代風に言えば、

“症状や状態に応じて刺激方法を最適化する技術論”

とも言えるでしょう。

同じ症状でも、状態は人によって違う

この考え方は、現代の鍼灸でも非常に重要です。

たとえば同じ「肩こり」という症状でも、

筋肉の緊張が強い人
冷えが関係している人
ストレスによる緊張が背景にある人
疲労による虚弱状態の人

など、原因や体質はさまざまです。

古代の鍼灸師たちは、

「状態が違えば、刺し方も変えるべき」

と考えていました。

そのため、

浅く刺すのか
深く刺すのか
一本で行うのか
複数使うのか
局所を使うのか
遠隔を使うのか

といった違いを重視していたのです。

官鍼篇を代表する「九刺」

官鍼篇を代表する理論の一つが、「九刺(きゅうし)」です。

これは、

“病の性質に応じた九つの基本戦略”

を意味しています。

遠道刺 ― 上の病を下から治す

代表的なのが「遠道刺(えんどうし)」です。

これは、

上半身の病を、下肢の経穴で治療する

という考え方です。

たとえば、

頭痛
顔面症状
首肩の緊張

に対して、足の経穴を使う。

いわゆる

「上病下取(じょうびょうかしゅ)」

の原型となる考え方です。

実際、現代の臨床でも、肩や腰だけでなく、手足の経穴を使う場面は少なくありません。

巨刺 ― 反対側を使う治療

次に「巨刺(こし)」です。

これは、

右が痛ければ左
左が痛ければ右

を使う方法です。

現代でいう「対側治療」に近い考え方として知られています。

毛刺 ― ごく浅い刺激

「毛刺(もうし)」は、皮膚表面を非常に浅く刺激する方法です。

現代で言えば、

接触鍼
小児鍼

などを連想する方もいるかもしれません。

強く深く刺すだけが鍼ではない、という発想がすでに存在していたのです。

絡刺 ― 血絡を対象にした方法

さらに「絡刺(らくし)」は、細かな血絡を対象とした刺法です。

現在の刺絡療法との関連でもよく議論されています。

官鍼篇は“刺法の百科事典”

ただ、官鍼篇の価値は九刺だけではありません。

この篇には、

九鍼
十二刺
五刺

など、多層的な体系が記載されています。

九鍼 ― 9種類の道具

「九鍼」は、9種類の鍼道具です。

現代のような細い毫鍼(ごうしん)だけではなく、

押圧するもの
浅く刺激するもの
瀉血を目的とするもの
膿を排出するもの

まで存在していました。

つまり古代の鍼は、今の“細い鍼一本”だけではなかったのです。

十二刺と五刺

「十二刺」は、病態に応じた具体的な手技体系。

そして「五刺」は、





という、身体の層に応じた刺法です。

つまり古代の鍼灸師たちは、

「どこに刺すか」

だけでなく、

何を使うか
どの深さで行うか
どの方法を選ぶか
どの組織を狙うか

そこまで細かく体系化していたのです。

官鍼篇が今に伝えること

官鍼篇が伝えている最も重要な思想。

それは、

「病に合わせて鍼を変える」

ということです。

現代風に言えば、

“個別化された刺激選択”

に通じる考え方とも言えるでしょう。

2000年以上前に、ここまで緻密な治療戦略が考えられていた。

そう考えると、『官鍼篇』は単なる古典ではなく、

「鍼治療の思考法そのもの」

を教えてくれる篇なのかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.13更新

なぜ古代の人たちは耳の周囲を巡る経絡を知ることができたのか?
東洋医学が見ていた「反応のネットワーク」

こんにちは。
井島鍼灸院 です。

今回は、

「なぜ古代の人たちは、耳の周囲を細かく巡る経絡の流れを知ることができたのか?」

というテーマについて、少し深くお話しします。

東洋医学の古典には、耳の周囲を複雑に巡る経絡の流れが非常に細かく記載されています。

代表的なのが、

三焦経
胆経

です。

三焦経は耳の周囲を細かく巡る

東洋医学では、三焦経は薬指から始まり、



首の後ろ

を通り、さらに耳の周囲へ向かうとされています。

そこから、

耳の前
耳の後ろ
こめかみ
目の外側

へと細かく枝分かれしていきます。

古典を読むと、

「まるで実際に体の中を見ていたのではないか」

と思うほど、詳細に記載されています。

MRIもCTもない時代に、なぜ分かったのか?

ここで多くの方が疑問に感じます。

「2000年以上前に、MRIもCTもないのに、なぜそんなことが分かったのか?」

実は古代の医家たちは、現代医学のように神経や血管を直接“見て”いたわけではありません。

彼らが見ていたのは、

「刺激した時に起こる反応」

でした。

古代の医家たちが見ていたもの

たとえば、

ある場所を押すと耳鳴りが変化する
鍼をすると耳の奥へ響く感覚が出る
首肩を緩めると耳の詰まり感が軽くなる
顎周囲を調整すると聞こえ方が変わる

そうした現象を、長い年月をかけて観察し続けていたのです。

つまり経絡とは、

「どことどこが連動して反応するのか」

という臨床経験の積み重ねだった可能性があります。

耳は非常に特殊な器官

特に耳という場所は、現代医学的に見ても非常に複雑です。

耳の周囲には、

三叉神経
顔面神経
迷走神経
後頭部の神経
自律神経
筋膜
血流ネットワーク

など、多くの構造が密集しています。

さらに耳は、単に「音を聞く器官」ではありません。

平衡感覚
ストレス反応
自律神経

とも深く関わっています。

なぜストレスで耳鳴りが悪化するのか

実際の臨床でも、

疲れると耳鳴りが強くなる
ストレスで耳が詰まる
首肩こりで耳鳴りが悪化する
眠れない日に耳の症状が強くなる

というケースは少なくありません。

古代の医家たちは、こうした「全身との連動」を非常に重視していました。

そのため、耳鳴りの患者さんに対しても、

耳だけ
症状だけ

を見るのではなく、



背中

お腹
睡眠
感情状態

まで確認していたのです。

経絡は“機能の地図”だったのかもしれない

現代的な視点から見ると、経絡は、

神経だけ
血管だけ
筋膜だけ

で説明できる単純なものではありません。

むしろ、

神経ネットワーク
筋膜の連続性
血流
感覚入力
脳の反応
自律神経

など、複数のシステムを“機能的につないだ地図”として考えると理解しやすくなります。

古代の人たちは「反応」を見ていた

つまり古代の人たちは、

「体の中に線が見えていた」

というより、

「刺激すると、どこがどう連動するか」

を驚くほど細かく観察していたのです。

耳の周囲を巡る三焦経や胆経の記述も、そうした長い臨床経験の積み重ねだったのかもしれません。

東洋医学が今なお面白い理由

2000年以上前に、

耳と首肩の関係
ストレスと耳症状の関係
全身のつながり

をここまで丁寧に観察していた。

そう考えると、東洋医学には、現代でも学ぶべき視点が数多く残されているように感じます。

身体を「部分」ではなく、「つながり」として見る。

その視点こそが、東洋医学の大きな特徴なのかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.11更新

お盆休み

 

何卒、よろしくお願い致します。

井島

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.10更新

 

湿布も痛み止めも効かない。それでも痛みが戻ってくる理由

湿布も痛み止めも効かない。
それでも痛みが戻ってくる理由

〜画像検査で異常がないのに続く痛みの本質をひも解く〜
湿布を貼っても、痛み止めを飲んでも、なぜ痛みが戻ってくるのでしょうか。
画像検査をしても大きな異常は見つからない。それなのに、なぜ痛みだけが続くのでしょうか。
もしかすると、その痛みは単なる「故障のサイン」ではないのかもしれません。

今回は「痛みとは一体何なのか」「なぜ痛みは長引くのか」「痛みを取るための治療とは、本質的に何をしているのか」という3つのテーマについて、わかりやすくお話しします。

痛みは誰にとっても身近なものです。朝起きたときの腰の重だるさ、長時間のデスクワーク後の肩こり、不意にぶつけた膝の鋭い痛み、何年も続く慢性的な痛み。できることなら避けたいものですが、少し考えてみてください。

もし痛みがまったくなかったら、私たちの体はどうなるでしょうか。熱いものに触れても手を引っ込めず大やけどをしてしまうかもしれませんし、骨が折れていても気づかずに歩き続け、体の中で起きている重大な異変を見過ごしてしまうかもしれません。つまり痛みは、私たちを苦しめるだけのものではなく、本来は体を守るために必要な警告信号なのです。

第1章 痛みとは何か

痛みと聞くと、多くの方は「体のどこかが傷ついて、その信号が脳に届くことで感じるもの」とイメージされるのではないでしょうか。もちろんそれは間違いではありませんが、現代の痛みの科学では、痛みはそれほど単純なものではないと考えられています。

国際疼痛学会は痛みを、「実際の、または潜在的な組織損傷に関連する、あるいはそのような損傷に似た、不快な感覚的・情動的体験」と定義しています。ここで大切なのが「情動的体験」という言葉です。痛みには体で感じる感覚の側面と、心で感じる感情の側面があります。

たとえば同じ注射でも、リラックスしているときと強く緊張しているときでは痛みの感じ方が違います。楽しいことに夢中になっているときは痛みをあまり感じないことがある一方、不安や心配が強いときには痛みが何倍にも強く感じられることがあります。つまり痛みは、体の傷の大きさだけで決まるものではありません。脳が、体の状態、心の状態、過去の経験、そのときの不安や安心感を総合して、痛みとして感じているのです。

痛みが伝わる仕組みと2つの神経

皮膚や筋肉、内臓には侵害受容器と呼ばれるセンサーがあり、強い圧力、熱、冷たさ、炎症物質などを感じ取ります。その情報は神経を通って脊髄に入り、さらに脳へと伝わります。痛みを伝える神経には主に2つのルートがあります。

① Aδ(デルタ)線維

速く伝わる神経。ピンポイントで「チクッ」とした鋭い痛みを伝えます。

② C線維

ゆっくり伝わる神経。「ジンジン」「じわじわ」と広がる重だるい痛みを伝えます。

そして脊髄には、痛みの信号を調整する仕組み(ゲートコントロール理論)があります。痛いところをさすると少し楽になることがありますが、これはさする刺激が脊髄で痛みの信号を弱める方向に働くためだと考えられています。

最終的に脳へ届いた信号は、「どこがどう痛むか」という感覚だけでなく、「どれだけつらいか」という感情としても処理されます。だからこそ痛みは単なる電気信号ではなく、体と心と脳が関わる、とても複雑な体験なのです。

第2章 なぜ痛みは長引くのか

痛みには「急性痛」と「慢性痛」の2種類があり、それぞれ役割が大きく異なります。

急性痛は、ケガや炎症などの原因があり、体を守るために起こる痛みです。「ここを休ませてください」という体からのメッセージであり、原因が取り除かれて組織が修復されれば、痛みは自然に落ち着いていきます。

一方で、一般に3か月以上続く痛みを指す慢性痛は少し事情が違います。最初のケガや炎症がすでに治っているにもかかわらず、痛みだけが残り続けることがあるのです。その背景には、2つの悪循環が存在します。

1. 神経系の過敏化(末梢性感作・中枢性感作)

痛みの信号が繰り返し送られることで、神経系そのものが過敏になってしまう現象です。本来なら痛くないような軽い刺激でも痛む、少しの刺激が強い痛みに感じられる、痛みが頭から離れないといった状態に陥ります。こうなると、痛みはもはや警告信号ではなく、「痛みの回路そのものが故障して暴走している状態」と言えます。

2. 身体的・心理的な悪循環

  • 身体的な悪循環: 痛みによって筋肉が緊張する ➔ 血流が悪くなる ➔ 酸素や栄養が届かず老廃物がたまる ➔ さらに痛みが強くなる
  • 心理的な悪循環: 痛みが続く ➔ 不安になる ➔ 動くのが怖くなって活動量が減る ➔ 筋力や体力が落ちる ➔ さらに痛みを感じやすくなる

だからこそ慢性痛の治療では、「痛い場所だけを見る」だけでは不十分なことがあります。最初に痛みを起こした原因と、今も痛みを続けさせている要因が違っている場合があるからです。

第3章 治療の本質とは何か

「痛みを取る」と聞くと、多くの方は痛みの信号を消すことをイメージされるかもしれません。もちろん消炎鎮痛薬や局所麻酔、神経の興奮を抑える薬などで強い痛みを和らげることは非常に大切です。

しかし、ここで考えていただきたいのは、「痛みを感じにくくすること」と「体が本当に回復すること」は必ずしも同じではないということです。痛みを生み出している環境(血流不足、過度な筋緊張、自律神経の乱れ、睡眠・栄養不足、ストレス)が変わらなければ、薬の効果が切れたときに痛みはまた戻ってきてしまいます。

治療の本質は、痛みの信号を力づくで消すことではなく、「体が本来持っている自然治癒力を発揮できるように、その条件を整えること」にあります。

東洋医学がもたらすアプローチと鍼灸の役割

東洋医学には「通ぜざれば則ち痛む」という言葉があります。これは「気血の流れが滞ると痛みが生じる」という意味です。現代的に言えば、血流が悪くなり、酸素や栄養の供給が不足し、筋肉が硬くなって痛みが続きやすくなっている状態を指します。

鍼灸治療は、この滞った流れを整えることを得意としています。

  • 局所の改善: 鍼の刺激によって血流を促し、筋肉の過緊張をゆるめて「痛みと筋緊張の悪循環」を断ち切ります。
  • 脳と神経への働きかけ: 体内で作られる鎮痛物質(エンドルフィンなど)の分泌に関わったり、脳から脊髄へ向かう痛みの抑制システム(下行性疼痛抑制系)を活性化させたりする可能性が知られています。

つまり、痛みを外から無理に抑え込むのではなく、体全体のバランス(自律神経、血流、心身の緊張)を見つめ直し、「体自身が持っている調整力を引き出す」のが全身調整の視点です。

痛みの治療を支える三つの層

私たちがアプローチする痛みの治療は、以下の三つの層に整理することができます。

第一の層:原因の除去

骨折の固定や感染症の治療など、原因が明確な急性痛に対して最も重要となる対応です。

第二の層:治癒環境の整備

血流の促進、筋肉の緊張緩和、睡眠や自律神経のバランス調整など、体が自ら治ろうとする環境を整えます。

第三の層:生体調節能力の回復(究極の目的)

体本来の炎症調整力や痛みを抑える仕組みを引き出し、痛みが生じにくい「調和が取れた状態」へと導きます。

 

おわりに

痛みは単なる敵ではなく、体からの大切なメッセージです。痛みが消えるのは「目的」ではなく、体が整った結果として訪れる「現象」です。

痛みを敵として戦うのではなく、体全体の調和を回復させていく過程の中で、痛みは自然と和らいでいきます。そのお手伝いをすることが、私たち治療者の本質的な役割です。

痛みに悩んでいる方へ。あなたの体には、痛みを乗り越える力が必ず備わっています。その力を信じて、一緒に一歩ずつ歩んでいきましょう。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.07更新

三陽絡とは?
腕にありながら耳・頭・自律神経にも関わるツボ

こんにちは。
岐阜市の 井島鍼灸院 です。

今回は、腕にありながら、




自律神経

にまで関わるとされる重要なツボ、**三陽絡(さんようらく)**についてお話しします。

「腕のツボなのに、なぜ耳や頭に関係するの?」

そう感じた方こそ、ぜひ最後まで読んでみてください。

三陽絡とはどんなツボ?

三陽絡は、東洋医学でいう「手の少陽三焦経(てのしょうようさんしょうけい)」に属する経穴です。

三焦経は、

上焦
中焦
下焦

という、体の上・中・下の働きをつなぎ、気や水分の流れを調整すると考えられている経絡です。

その中でも三陽絡は、腕を走る“3つの陽経”が交わる特別なポイントとして古くから重視されてきました。

名前に込められた意味

まず、「三陽絡」という名前を分解してみましょう。

「三陽」とは

次の3つの経絡を指します。

手の陽明大腸経
手の少陽三焦経
手の太陽小腸経

いずれも、腕から頭部へ向かう“陽の経絡”です。

「絡」とは

「つなぐ」「めぐる」「連絡する」という意味があります。

つまり三陽絡とは、

3つの陽経の気が交わり、連結する場所

という意味になります。

イメージとしては、3本の大きな道路が合流する“ジャンクション”のような場所です。

もしここで流れが滞ると、腕だけでなく、その先につながる頭・耳・口・顔面にも影響が出ると考えられてきました。

三陽絡の場所

三陽絡は、前腕の外側からやや後ろ寄りにあります。

目安としては、

手首の「陽池(ようち)」から肘方向へ約4寸
橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の間
少しやわらかく感じる部分

に位置します。

肘を軽く曲げ、前腕を少し内側へひねると、指が入りやすいポイントが見つけやすくなります。

三陽絡はどんな症状に使われる?

三陽絡は、特に“上半身の不調”との関わりが深いツボです。

① 耳・頭・口の症状
耳鳴り
耳の閉塞感
難聴感
歯の痛み
頭痛
頭の重だるさ
目の疲れ

などに用いられることがあります。

② 腕・肩・神経系の症状
肩から腕にかけての痛み
腕のしびれ
五十肩
頸肩腕症候群
上肢の動かしにくさ

などにも使われます。

③ 自律神経や睡眠の乱れ

さらに、

不眠
のぼせ感
緊張が抜けない
フワフワする感覚
自律神経の乱れ

などに対して用いられることもあります。

腕のツボでありながら、ここまで幅広い症状に関わる点が、三陽絡の大きな特徴です。

なぜ三陽絡が重要なのか

理由は比較的シンプルです。

三陽絡は、腕だけではなく、

頭部

顔面
脳へ向かう陽の流れ

の“中継地点”と考えられてきました。

そのため、この流れを整えることで、

上半身の巡りがスムーズになる
のぼせが落ち着く
神経の興奮が鎮まりやすくなる

といった変化が期待されてきたのです。

結果として、

痛み
しびれ
不眠
耳の不調

などが同時にやわらぐケースもあります。

臨床での組み合わせ

三陽絡は、他のツボと組み合わせて使われることも多い経穴です。

たとえば、

耳鳴り → 外関・翳風
腕のしびれ → 合谷・曲池
不眠 → 内関・神門

などが代表的です。

症状だけでなく、体全体の状態を見ながら組み合わせを考えていくのが東洋医学の特徴でもあります。

三陽絡が教えてくれること

三陽絡は、

“陽のエネルギーが交差するジャンクション”

のようなツボです。

腕の症状だけではなく、

耳鳴り
頭の重さ
不眠
のぼせ感
自律神経の乱れ

など、上半身の不調と深く関わることがあります。

もし、

「原因ははっきりしないけれど、なんとなく調子が悪い」

そんな感覚が続いている方は、“つながり”という視点から体を見てみると、新しいヒントが見えてくるかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.05更新

黄帝内経・霊枢「九鍼十二原」
2000年前の鍼灸師たちが辿り着いた“気の治療”とは

古代中国に、こんな夢を持った王がいたと伝えられています。

「薬を使わず、鍼だけで病を治したい。」

この言葉は、2000年以上前に編まれた東洋医学の古典、
黄帝内経 の『霊枢』第一篇「九鍼十二原」の冒頭に登場する有名な一節です。

この篇は、現在の鍼灸医学の原点とも言える重要な内容を含んでいます。

九鍼とは何か

「九鍼」とは、古代中国で使い分けられていた9種類の鍼のことです。

現代では、鍼といえば細い一本の鍼を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし古代の鍼灸師たちは、目的に応じてまったく異なる形の鍼を使い分けていました。

たとえば、

皮膚の表面を刺激する矢じりのような鍼
筋肉をやさしくほぐす丸い鍼
膿を出すための剣のような鍼
そして、髪の毛ほどの細さを持つ極細の鍼

などがあります。

この極細の鍼は「毫鍼(ごうしん)」と呼ばれ、九鍼の中でも特に重要視されていました。
実は、現代の鍼治療で一般的に使われている鍼は、この毫鍼が原型になっています。

症状や部位によって道具を細かく使い分ける。
その発想からも、古代の鍼灸が非常に繊細で体系化された医療だったことが伝わってきます。

十二原穴とは何か

次に「十二原穴」についてです。

「原穴(げんけつ)」とは、東洋医学において、
臓腑の働きや生命力が体表に現れる重要なツボと考えられてきた場所です。

古代の医家たちは、

「内臓の状態は、体表に現れる」

という考えを持っていました。

たとえば、

肺経の原穴 → 太淵(たいえん)
腎経の原穴 → 太渓(たいけい)
大腸経の原穴 → 合谷(ごうこく)

などが有名です。

これらのツボを観察し、触れ、反応を確かめながら治療を行う。
それが「十二原」の重要な考え方でした。

鍼は“気の流れ”を整える道具

『九鍼十二原』では、人体を流れる「気」の存在が重視されています。

東洋医学では、気の流れが滞ることで痛みや不調が起こると考えます。
そして鍼は、その乱れた流れを整えるための道具として発展してきました。

この篇には、流れをイメージさせる印象的な表現があります。

経脈は流れる水のようであり、鍼はその流れを導くもの

気の流れが弱っているときには「補う」。
逆に、滞っているときには「瀉す」。

この「補法(ほほう)」と「瀉法(しゃほう)」という考え方は、現代の鍼灸でも基本となる重要な技術です。

本当に優れた鍼灸師とは

『九鍼十二原』には、もうひとつ有名な言葉があります。

「粗守形、上守神」

これは、

「未熟な者は形だけを見る。優れた者は“神”を守る」

という意味で解釈されることが多い言葉です。

単にツボの位置を覚えるだけではなく、
患者さんの呼吸、表情、緊張、気の変化まで感じ取りながら治療する。

それこそが本当の鍼灸だと、2000年以上前から語られていたのです。

医療とは、技術だけではない。
そこには“人を感じ取る力”が必要だということなのでしょう。

九鍼十二原が今に伝えていること

『九鍼十二原』が伝えている本質は、とてもシンプルです。

体の内側の変化は、外側に現れる
気の流れを整えることが治療の基本である
道具や技術の先には、人を感じる心がある

薬を使わず、細い鍼一本で病を癒したい。

そんな古代の夢は、今も世界中の鍼灸師たちによって受け継がれています。

2000年前に記された思想が、
現代の臨床の中にも静かに生き続けている。

それが、黄帝内経 『霊枢・九鍼十二原』の大きな魅力なのかもしれません。

投稿者: 井島鍼灸院

2026.07.03更新

突然、肩や太ももが痛くなる──それは「多発性筋痛症」かもしれません

こんにちは。
岐阜市の井島鍼灸院です。

突然、肩や太ももの強い痛みや、体のこわばりで動きにくくなったことはありませんか。

朝起きたときに、

着替えがつらい
腕が上がらない
寝返りが打てない
立ち上がるのが大変

そんな状態になることがあります。

もしこのような症状が急に現れた場合、多発性筋痛症の可能性があります。

多発性筋痛症とはどんな病気?

この病気は、昨日まで普通に生活していた方が、ある日突然、強い痛みやこわばりを感じ始めることがあるのが特徴です。

主に50歳以上の方に多くみられ、



お尻
太もも

など、体の中心に近い部分に左右対称の痛みが出やすいとされています。

特に朝のこわばりが強く、「朝だけ別人のように動けない」と表現される方もいます。

なぜ強い痛みが起こるのでしょうか

実は、この病気は現代医学でもまだ完全には解明されていません。

現在は、

加齢による免疫機能の変化
ウイルス感染
炎症反応の異常

などが関係している可能性が考えられています。

肩やお尻の周囲の組織に強い炎症が起こることで、あの独特の痛みやこわばりが生じるとされています。

「リウマチ」とは違う病気です

この病気の正式名称は、
リウマチ性多発筋痛症です。

ただ、「リウマチ」という言葉が入ることで、関節リウマチと同じ病気だと思い、不安になる方も少なくありません。

そのため医師によっては、患者さんを安心させる配慮として、「多発性筋痛症」と説明されることもあります。

先日、当院にご相談くださった患者さんも、この名前で診断を受けていました。

関節リウマチとの違い

関節リウマチは、関節そのものに炎症が起こり、進行すると骨や関節が変形することがあります。

一方、多発性筋痛症は、関節周囲の組織に炎症が起こる病気です。

そのため、この病気そのもので骨が変形することは、基本的にはありません。

ただし初期症状は似ていることも多く、自己判断は危険です。
強い痛みが続く場合は、まず病院でしっかり診断を受けることが大切です。

鍼灸院でできること

では、このような辛い症状に対して、鍼灸院ではどのようなお手伝いができるのでしょうか。

大きく分けると、主に2つあります。

① 痛みをかばって固まった筋肉を緩める

強い痛みが続くと、人は無意識に体をかばいます。

その結果、



背中
お尻

などの筋肉がガチガチに緊張し、さらに動きにくくなることがあります。

鍼灸では、こうした過剰な緊張をやさしく和らげ、体全体の重さやだるさを軽くするサポートを行います。

② 自律神経や生活の質を整える

長引く痛みは、心にも大きな負担をかけます。

よく眠れない
疲れが抜けない
不安が強くなる
気持ちが落ち込む

こうした状態が続くと、自律神経も乱れやすくなります。

当院では、敏感になっているお体に配慮しながら、できるだけ痛みを感じにくい優しい鍼治療を行っています。

少しでも毎日を楽に過ごせるよう、体全体のバランスを整えるお手伝いをしています。

一人で我慢しないでください

多発性筋痛症は、突然強い症状が出るため、不安になってしまう方が少なくありません。

ですが、適切な治療によって改善することも多い病気です。

日々の痛みやストレスを少しでも軽くし、安心して過ごせるよう、岐阜市の井島鍼灸院では丁寧にサポートしています。

「これってもしかして…」と思った方は、どうぞ一人で抱え込まず、ご相談ください。

また、当院では「なぜ鍼治療が痛みの緩和に役立つのか」についても別の記事や動画で解説しています。
興味のある方は、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

投稿者: 井島鍼灸院

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